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エッセイ

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これまでに書いたエッセイをまとめています。🍀
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#先生の日常

繋がれた小さな手。

繋がれた小さな手。

きゅ、と小さな温もりがわたしの手の平に触れる。

少し驚いて、そうっと手の持ち主を盗み見る。特段、照れ臭そうでもなくうれしそうでもなく、いつもと変わらぬ低学年のそうたくん(仮名)の横顔。

意外に思ったのは、彼は普段わたしの近くによってきたり、スキンシップを求めたりするようなタイプではないから。

…なんでこのタイミングで?

彼は、玄関で上靴から外靴に靴を履き替えるときに手を握ってきた。

あ、

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先生短歌、詠んでみた。

先生短歌、詠んでみた。

わたしがエッセイを投稿しているからか、noteで親しくさせてもらってる方々は、圧倒的にエッセイを書かれる方が多い。

そしてその中には、俳句や短歌を嗜む方もちらほら。
文学フリマでも、素敵な俳句集があったので思わず手に取ってしまった。

そんな方々にちょっぴり感化され、わたしもノートのすみっこに半年くらい前から短歌を書き連ねている。

5.7.5.7.7と制限があるからこそ、広がる世界。そこに情景

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先生の夏休み。

先生の夏休み。

夏が、来た!
待ちわびた、夏が来た。

わたしにとっての夏とは、梅雨が明けてからでもなく、日差しが凶暴になってからでもなく、アイスが身体に沁みるようになってからでもない。

学期末の成績処理、懇談、その他諸々の怒涛の仕事をやり遂げ、迎える1学期が終わりの日、終業式。
その日を無事迎えてから、わたしの夏は始まる。

「子どもたちが夏休み入ったら、先生たちはは暇なの?」

先生をしていると、こんなこと

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空っぽの教室とエモ。

空っぽの教室とエモ。

子どもたちの絵も、掃除当番表も、学年目標も係活動ポスターも何も貼られていない、がらんとした教室。

子どもたちと過ごした形跡が何一つない、いわばまっさらな、裸の教室に戻った。

その中で一人黙々とほうきで掃いて、水拭きをし、教室の端から縦にワックスをかけていく3月末日。

床が優しく日に照らされる穏やかな午後。
木の匂いとワックスが混じるこのなんとも言えない香り。終わってしまったんだなあ、という達

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ほっぺの切り傷のナゾ。

ほっぺの切り傷のナゾ。

最初に、あれ、と違和感を感じたのは、午後からの体育の授業をする前に、日焼け止めを塗ったときだった。

右頬の一部が、小さくピリピリ痛い。

え、いつも使っていて違和感なぞ感じたことのない日焼け止めなのにな、、、。

朝、化粧したときにも特に今日肌が荒れている、ということもなかったはず。

小さく首を傾げたものの、さほど気にも止めず一日を過ごす。再び思い出したのは、クレンジング(化粧落とし)で顔を洗

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叱られたらいいと思うよ。

叱られたらいいと思うよ。

「おたくの学校の子たちが、マンションの階段で座ってお菓子食べててうるさいんですけど。」
「小学校中学年くらいの子たち5人くらいが、駐車場で遊んでいて危ないんですけど。」

放課後、たまに地域の方から、こんな電話が学校にかかってくることがある。

「人の家の敷地には勝手に入りません」
「道路や駐車場で危ない遊びはしません」

そりゃ、学校でも子どもたちにこんな指導はする。

けれど、放課後のことまで

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とある小学校の先生の苦悩。

とある小学校の先生の苦悩。

8月の終わりからとある仕事のことで、うわごとのように呟き続け、ずっと頭の片隅から離れないことがある。

2学期が始まること?
コロナ対策を踏まえた行事の提案?
複雑になってきた、児童生徒への対応?
はたまた多くの先生が見にくる研究授業?

まあ、それもよぎりはするけれど、
これに比べれば些細なものだ。

ーそう、ダンスである。

体育科における表現運動、
ずばりは運動会で踊るあのダンスである。

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