マガジンのカバー画像

ポエム

51
運営しているクリエイター

#ポエム

『お元気ですか』

『お元気ですか』

電話帳の中にはいるのに
どうしたって届かない呼びかけが
低気圧の中浮遊する
どこにも辿り着けない虚しさと共に

みんないなくなっちゃう
いつのまにかいなくなっちゃう
挨拶もせずにいなくなっちゃう
いなくなっちゃう
いなくなっちゃう

あの日の中にはいたのに
どうしたって思い出せない表情が
記憶の中を悪戯にまわる
どうせ聞こえてないふりするんでしょ

みんないなくなっちゃう
いつのまにかいなくなっち

もっとみる
『それとも』

『それとも』

人と人の間にあるのは空白か
それとも空気か空間か
それとも

熱があがって
といっても37度3分だけど
好き、だなんて言ってしまって
熱に浮かされたわけでもないのに

すぐに伝えなければ
鮮度が低くなってしまうから
と思って言ったけど
「僕は好きじゃない」

人と人の間にあるのは空白か
それとも空気か空間か
それとも空っぽ

君以上に
好きになれる人ができるまでは
横にいて、だなんて言えないな

もっとみる
『共に、』

『共に、』

途端に薄れる
記憶と感情
命に関わるくらいの
深い付き合いしてんだね

どうしようもなく愛をくれる君に
一度も教えたことがない
愛してるとか
好きという言葉さえ

もう大丈夫、手放して
もうそれ以上、言わないで
言葉にするのはやめてくれ
追われ続けてしまうから

途端に消え去る
気持ちと愛情
命に関わりたくはないから
逃げ続けているんだね

こんな僕でごめん
と言うと
そんな君だから好き
だってさ

もっとみる
『白い日』

『白い日』

満月が特別になったのは
あの日に告げた言葉があるから
満月に背中を押されて
あの夜告げてしまったから

満月の日はいつにも増して会いたい
こんなにも大切で
こんなにも好きなのに
サヨナラに夢見てしまったんだ

嘘のサヨナラ
期待したサヨナラ
サヨナラからうまれる何かを
またあの月に求めてしまった

見たくない夢をみたよ
ふたりして泣いていたね
なんだって現実にできると思った
なんだって奇跡だと思い

もっとみる
『ゆめは現実』

『ゆめは現実』

ゆめをみる きみのゆめ
ぼくの恋人 きみが主人公
いつもきみは ゆめの中で
だれか知らないひとの恋人だ
ぼくには振り向きもしない
咎めたくたって届かない
だれか知らないひとの恋人として
とてもたのしそうに笑ってる

ぼくはそのゆめを
日替わりのそのゆめを
毎晩みさせられている
いつも違うシーンだから
新鮮さがあって落ち込むよ
物語はもう始まっている
はねのけることなんてできない
ぼくの恋人 だれか

もっとみる
『みずとあぶら』

『みずとあぶら』

君のことでなら
いくらでも涙を流したい
「危ういからやめて」と
きっと言われてしまうけど

茄子と胡麻油くらい
相性が良いと思っていたよ
ほんとのところは
零度の水と千度の油
だったのかもしれないね

使い終わったフライパンを
洗おうとしたってキレイにならない
しっかり拭き取ったはずなのに
弾かれて
ぬめっとして
受け入れてはもらえない

珈琲とゆで卵くらい
相性が悪いのかもしれないね
ほんとのと

もっとみる
『回送列車』

『回送列車』

思い出したよ
まだハッキリとはいかないけれど
過去に持ってた思考回路が
戻ってきた気がするの

戻ってきたところで
帰る場所はどこにもないけど
今に透かして見せて
アップデートするつもり

だからね、だから
僕がいなくてももう大丈夫
ひとりで生きていけるでしょ
なんて決めつけると怒られるけど

だからね、だから
君がいなくてももう大丈夫
ひとりで生きていけるんだ
なんて弱っちく叫ぶことにするよ

もっとみる
『魔法使いにはなれない』

『魔法使いにはなれない』

魔法が解けたのかもしれないね
あの日は月の魔力に負けて
君に触れてしまったから
まんまと騙されてしまったよ

ダブルベッドがやけに広くて
君に届かなかった心臓の鼓動
一晩中持て余してたら
朝一番に抱き寄せられた

器用に利用して了解された
理にかなうなんて到底無理で
あの夜手を繋いで歩いた時から
すでに始まってしまっていたんだ

魔法は解けてしまったけれど
自力で繋がれる日々を紡ぐ
共有の毎日が今

もっとみる
『供養』

『供養』

何度も同じメニューを食べたね
何度も同じ時間まで寝て寝坊したね
何度も何度も、
もう会うのはやめようと宣言したね

何度もしたことたちは停止させられ
過去の出来事として埋められてゆく
例え同じ空間にいる誰かが
君と同じ香水をつけていたとしても
かおりだけが漂うだけで
君はここにいない
ここにはいない

何度も同じ道をドライブしたね
何度も同じタイミングで笑ったね
何度も何度も
これが最後と言ってサ

もっとみる
『スパイス』

『スパイス』

足りているのに足りていないの
たらりらたらりら足りていないの
そしたらたらりらスパイス一振り
シナモンじゃなくてカルダモン

今日の星占いを見ているよ
山羊座のあなた、嬉しいことがたくさんありそう
魚座のあなた、おとなしく家でじっとしていよう
山羊座のあなたと魚座のわたし

眠るまでそばにいてよ
いびきで返事しないでよ
別にいいんだけどさ
それは別にいいんだけどさ

足りているのに足りていないの

もっとみる
『夜と雨と涙と』

『夜と雨と涙と』

急な雨音に邪魔されて
せっかく我慢してたのに
涙が止まらなくなりました
昨日から何も食べていないこととか
数日前に失敗してしまったあのこととか
いろんなことがぐるぐるぐるぐる
夜の雨は独りにさせるのが上手だね

独りになりたくない夜だったのに
独りになってしまいました
涙を止めることもできずに
きっと明日は目が腫れてしまう

誰にも会わないからいいけれど
ずっと重たい瞼がいるんだ
独りのあいだずっ

もっとみる
『すう』

『すう』

過去は未来と繋がらないことを知って
救われた気がした

色のついた葉っぱが
うまれかわる頃
ようやく息を
吸い込むことができる

すーっと吸って
はーっと吐いて
すーっと言って
きーっと叫ぶよ

過去と今はべつものなんだと知って
報われた気がした

電気を消した部屋が
雨音にぬれた頃
ようやく息を
とどめることができる

すーっと吸って
はーっと吐いて
すーっと言って
きーっと叫ぶよ

叫んだあと

もっとみる
『ホットミルク』

『ホットミルク』

もしも今日が人生で一番幸せな日
だったらどうしようだなんて
考えなくても大丈夫だよ
また最悪なことの繰り返しで
幸せの純度は低くなるから

花粉症に苦しむ春には
色トリドリの花々に尊さを感じて
日差しと汗に負けそうな夏には
よく乾いた洗濯物からいい香りが漂い
秋は好きだから
嫌なことが思い浮かばないのだけれど
着込んで重くてそれでも凍える冬には
ホットミルクが身体を温めてくれる

もしも今日が人生

もっとみる
『また明日』

『また明日』

今日の君はなんだか違った
昨日の君より少し苦い
知っているようで知らない
触れられるけど知りたくない

今日の君は静かに吸った
明日の君より少し苦い
知らないほうがきっといいのに
知りたがりの僕が声を出す

アリガトウにも
ゴメンナサイにも
意味を持たせてしまったんだ
そんな必要なかったのに

言わなくてもいいことが
この世には存在するということを
僕はまだ知らなかった
君が言われることを嫌ったか

もっとみる