銀河フェニックス物語【出会い編】 第四十一話 パスワードはお忘れなく まとめ読み版①
ティリーは人事異動で役員室秘書から営業部へと戻った。
・銀河フェニックス物語 総目次
・<出会い編>第四十話「さよならは別れの言葉」
・<少年編>「自由自在に宙を飛ぶ」
シートベルトをはずしていいというサインが出た。窓の外のリル星が小さくなっていく。
ティリーは肩の力を抜き、ほっと安堵のため息をついた。
営業部へ復帰して最初の出張が、無事終ろうとしている。
公共船の最終便に乗っているのは、わたしと隣に座っている厄病神のレイターの二人だけだった。
出張先のリル星系はゲリラ対策で入星が厳しい。
そのためフェニックス号を隣の星系に停めて、公共船で入った。
久しぶりの納船確認の仕事は問題なく終了した。復帰早々、失敗するわけにはいかない。
「営業の復帰戦がレイターと一緒じゃどうなるかと思ったけど、とりあえず、今回は厄病神の出番も無かったから、よかったわ」
「寝てるだけかも知れねぇがな」
レイターはつまらなそうな顔をしていた。
「他人が操縦する船は落ち着かねぇんだ」
この人は相変わらずだ。
「お飲物はいかがですか?」
女性の客室乗務員が声をかけると、レイターは突然笑顔になって握手をした。
「あなたのお勧めのものがいいな」
この人はほんと変わっていない。女好きなところは死ぬまで治らないに違いない。
「失礼ですが、S1レーサーのレイター・フェニックスさんですよね?」
客室乗務員がドリンクをを手渡しながらレイターにたずねた。
「あん? 元レーサーだけど」
「最終戦すごかったですね。わたし無敗の貴公子のファンだったんですけど、あなたのことも応援してました。こんなところでお会いできるなんて、夢みたいです」
前シーズンのS1最終戦で、レイターと『無敗の貴公子』のエースは歴史に残るデッドヒートを展開した。
エースが勝利を飾って引退し、準優勝したレイターのことは新たなスター誕生と騒がれたのだけれど。
レイターはS1の契約金に納得できない、と言ってすべてのチームのオファーを断った。
そして、またこうして操縦士兼ボディーガードの生活を送っている。
「サインもらってもいいですか?」
「マネージャーに聞いてください」
そう言ってレイターはわたしの方を見た。
は? マネージャーってわたしのこと? バカにしてる。
「すみません、そういうことは一切お断りしてますので」
「残念ですわ」
客室乗務員は乗務員室へと戻っていった。
「一体どういうつもりよ?」
「美人だったな」
「もういいです」
レイターと顔をあわせるのは久しぶりだ。
S1最終戦の前まで遡る。
デューガ星系への出張で、わたしは急遽エースのパートナーとして王室晩餐会に出席することになった。レイターはその会場で警備にあたっていた。
あの晩餐会がきっかけで、わたしとエースは友人となった。
苦い記憶がよみがえる。
その出張帰りに「ティリーさんとつき合う気はねぇよ」とレイターに振られた。
レイターを好きだという気持ちを消してしまいたい。
レイターのことなんて忘れてしまいたい。
なのに、営業に戻った最初の仕事で一緒になってしまった。
本当は話したいことがいろいろある。
S1最終戦で彼は何を考えて飛ばしていたのだろう。
エースと競いながら死へ向かっていこうとしたようにわたしには見えた。
『銀河一の操縦士』のことを忘れたいのに、もっと知りたい。
いつもおしゃべりなレイターがきょうは静かだ。話しかけづらい。
「俺のティリーさん」とわたしを呼ぶこともない。
* *
レイターは落ち着かなかった。
「気をつけて行けよ」
出がけにアーサーが声をかけた。
あいつは深い意味もなく言ったのかも知れねぇが、俺は、すごぉく嫌な気分になった。
あいつが親切な時にはろくなことがねぇ。
もっとも、このひと月でリル星系じゃ、特命諜報部員が二人消息を絶っている。多分、殺されてる。
そこで、俺に白羽の矢が立った。狙われて来いと。囮だ。はっきり言って危険極まりない。
そこへ行くのが、復帰したてのティリーさんと一緒ときた。どうして、いきなりこういうことになるのか。
にらみつけると、アーサーは言い訳のような説明をした。
「こちらは関知していない。ティリーさんの異動で、たまたまそういう人選になったんだ」
冗談を言う余裕もないようだ。
仕方ねぇ。仕事だ。
俺はガキの頃に憧れてたS1に出場して、ティリーさんへの欲望と決別した。未練はねぇ。
操縦士とボディーガードの仕事を淡々と請け負う。
ティリーさんの納船の業務は、何事もなく順調に終わった。
ティリーさんが俺に笑顔を向ける。
「営業の復帰戦がレイターと一緒じゃどうなるかと思ったけど、とりあえず、今回は厄病神の出番も無かったから、よかったわ」
決別したはずなのに、やっぱりかわいい。
「寝てるだけかも知れねぇがな」
と一応言っておく。
もう一つの俺のお仕事は始まってもいねぇ。危険なヒリヒリする感覚がどんどんと強まってる。
* *
ビビビビビビッツ!!
突然、公共船内に警報音が鳴り響いた。
ティリーは思わずレイターの顔を見た。
嫌な予感がする。
ビビビビビ…。
警報音にかぶせるように男の声がスピーカーから聞こえた。
『乗務員は乗務員室から出るな。砲撃するぞ』
こ、これは、厄病神の発動だ。
窓の外を見ると黒い船が公共船に横づけしていた。小型戦艦の改造船だ。
リル星系のエンブレムの上に赤いバツ印を描いたマークが描かれている。現地ニュースで見たゲリラの船だ。
砲塔がわたしたちに向いている。
「悪りぃなティリーさん。厄病神が起きちまったみたいだ」
レイターは落ち着いていた。まるで、こうなることを予想していたかのようだ。
「ティリーさんは、とにかくここから動かないでくれ」
「わかったわ」
レイターの言うとおりにしていれば大丈夫。
厄病神だけれどボディーガード協会のランク3Aで仕事は優秀。これまでだってずっと平気だった。
公共船の警備はあってないようなものだ。
大型銃を手にした男たちが、ドカドカと客室に乗り込んできた。十人ぐらいいる。
円柱のヘルメットに丈の長いマント。リル星系の民族宇宙服を着ている。あんな、威力のある銃を船内で撃ったら船に穴が開いてしまう。
どういうわけか男たちはまっすぐにレイターに銃を向けた。
黒いマントで全身黒ずくめの人物が口を開いた。
「レイター・フェニックスだな?」
顔は見えないけれど男性だ。
「どうせなら、おっかけは美女がよかったんだけど」
「一緒に来てもらおうか」
「サインはやらねぇぞ」
そう言いながらレイターは、素直に席を立った。
ど、どうすればいいの?
よくわからないけれど犯人はレイターを狙っている。でも、レイターと離れるのは嫌だ。
「わ、わたしも」
と立ち上がった。
レイターは驚いた顔をしてわたしの方を振り向くと、声には出さなかったけど「バカッ」と言った。
しまった。ここから動くな、とレイターに言われたばかりだった。
男の一人がわたしに銃を向けながら、黒ずくめの男にたずねた。
「こちらの女はどうしますか?」
「人質として一緒に連れていけ」
レイターが大きな声を出した。
「一般人は巻き込まねぇ約束だろが!」
約束?
「安心したまえ、私は手荒なことは好きではない。君がおとなしく言うことを聞いていれば客人に危害は加えない」
「ちっ」
舌打ちするレイターの手に、男たちが手錠をかけた。
わたしのせいで状況が悪化している。どうしよう。どうしようもない。
突き付けられた銃は脅しじゃない。何かあれば撃つ気だ。だからレイターもおとなしく従っている。
わたしたちは、接続した黒いゲリラ船へと身柄を移された。
旧式の戦艦だった。
司令官室へと連れていかれた。
「ようこそ、レイター・フェニックス」
黒ずくめの男がヘルメットを取って声をかけた。
四角い民族帽と黒いマスクで顔はわからない。目だけが鋭い。四十代ぐらいだろうか、口調は丁寧。それが、余計に怖い。
レイターは、折り畳みの簡易椅子に座らさせられた。重そうな足枷ベルトで両足とも椅子の脚と固定される。
「有名人の君の方からやってきてくれるとは」
S1に乗ってレイターは有名になった。けれど、やってきたのはあなたたちでしょ、と言ってやりたいけれど声にならない。
「俺の契約金は高いぜ」
いや、契約とかそういう話じゃないわよ。この状況は…。
「お嬢さんは、こちらへ」
わたしは船に備え付けられているシートに腰かけさせられた。強制シートベルトがしまる。これは自力でははずせない。
隣にいたゲリラがわたしに小型の銃を突きつけた。さすがに自分の船内で大型銃は使わないようだ。小型銃と言っても、撃たれれば死ぬことに変わりはない。
どうせ強制シートベルトで逃げられやしないのだから銃を向けないでほしい、と思ったところで気が付いた。
これは、わたしが逃げないようにではなく、レイターの動きを封じるための銃だ。
レイターの足を引っ張ってばかりだ。
「さて、レイター・フェニックス。君は危険だ。だから悪く思わないで欲しい」
「悪く思うな、ってことは悪いことするぞって宣言してるわけだ」
男たちが二人がかりで、手錠がかかったレイターの手を簡易机の上で押さえつけた。
黒ずくめのリーダーは変わった形の銃を取り出すと、レイターの両手のひらに照準を合わせた。
バシューン
青い光のような波動がレイターの手にあたった。
「っつう」
レイターが顔をゆがめる。
レイターの両手の指が力なくだらりと垂れ下がった。
あれは振動波銃だ。
レイターの指の骨が折れたんだ。
「あんたら十分手荒だぞ」
レイターの身体検査が行われた。二丁の銃とレーザー鞭が取り上げられた。
レイターは普段わたしに銃を見せないようにしている。だから二丁も持っていたことに驚いた。
リーダーが名乗った。
「我々は、リル星系解放連盟だ」
思った通り政府軍によって制圧されたゲリラだ。
「ゲリラの残党かよ」
レイターの言葉に、男が反論した。
「残党ではない」
リル星系は銀河連邦からの離脱をめぐり、長くゲリラと政府軍が内紛を繰り返していた。
五年前、政府軍が抑え込み、状況が落ち着いたことから経済活動が再開した。
宇宙船を求めるニーズが高く、危険はなくなったという判断でうちの会社も現地に販売店を置いた。
「我々はリル星系から独立し、新たに生まれ変わるのだ」
「へぇ、独立にゃ金がかかるだろ」
「そのために君に来てもらった」
「残念だな。俺は借金の方が多いぜ。将軍家も俺のための身代金なんて払わねぇし」
「連邦軍特命諜報部のキーパスワードが知りたい」
特命諜報部といえば、アーサーさんが管轄している将軍家直轄の部署だ。
「それを手みやげにすると、アリオロンから軍資金がもらえるってわけか」
「さすが、ものわかりが早いな。特命諜報部のキーパスは所属部員しか知らない。そして、記憶にしかとどめない。私たちは一人ずつたずね歩いている。君は有名人だから探すのが楽だった」
「そりゃどうも」
所属部員しか知らない。ということはアーサーさんは知っているということだ。
わたしたちを人質にしてアーサーさんから聞き出そうという魂胆に違いない。
「さっそくだが諜報部のキーパスを教えて欲しい」
「知らねぇよ」
「諜報部員はみんなそう言う」
この人たち、何か勘違いしている。レイターは諜報部員じゃない。
その時だった。
若い男が部屋に飛び込んできた。二十歳ぐらいだろうか。茶色い帽子に茶色いマントを羽織っている。
「俺にやらせてくれ」
「ロベルトか。いいだろう」
ロベルトと呼ばれた男はレイターの顎を無造作に持ち上げた。
「お前が、レイター・フェニックスだな」
「俺、大人気だな」
バキッ。
レイターが返事をし終わるよりも早く、ロベルトはレイターの左頬をおもいっきり殴った。
「つうぅ」
レイターの唇が切れて、血が飛んだ。
「ったく、いきなり殴るなよ。手荒なことは嫌いじゃなかったのかよ」
「俺の名は、ロベルト・カールダイン」
その名前にレイターがピクリと反応した。眉間にしわを寄せて若い男の顔を見つめる。
「カールダイン? アリオロンの『ハゲタカ大尉』か?」
「覚えていたか、俺の父のことを」
ロベルトはレイターの襟ぐりをつかみ締めあげた。
「十年前、お前が父を殺したんだろ」
殺すと言う言葉にドキッとする。
「……」
レイターが答えるのを躊躇している。
「答えろ!」
ロベルトが追及する。
「そうだ、俺が殺した」
レイターは今、「俺が殺した」と口にした。
その言葉が、わたしの心の回路にグサリと刺さった。頭が働かない。
「父を返せ!」
ロベルトは再度レイターの顔を殴りつけた。
椅子ごとレイターの身体が床に転がる。
「父は俺の誇りだった。父はなぁ、あれが最後の出征だったんだ。後は本部へ帰ってきて俺たち家族と一緒に暮らすはずだったんだ。それをお前が、お前が、すべてぶち壊した」
今度はレイターの腹を思いっきり蹴る。固そうなブーツ。
ガシッ、ガシッツ。
鈍い音が響く。手加減というものがない。
「英雄だった戦闘機乗りの父さんを撃ち落して、お前はさぞやうれしかったことだろうよ。将軍家に引き取られて、銀河一の操縦士だと。笑わせるな!」
ロベルトの殺気に気圧される。
レイターは十代の前半、アーサーさんと一緒に連邦軍の軍艦に乗っていた。
そして、戦闘機の実戦で五十二戦五十二勝の成績と聞いた。
ドカッツドカッツ。
ロベルトは、さらにレイターの身体を立て続けに踏みつけた。
止めなきゃ。
「や、やめて」
声をかけるわたしに銃が押し付けられた。
「母も気がおかしくなって、父の後を追った。妹も弟も施設に引き取られ、俺たち家族はバラバラだ。お前が父を殺さなければ、お前さえいなければ…」
ロベルトは涙を流しながら、感情にまかせてさらにレイターを蹴り続けた。
レイターは、何も言わずただ蹴られていた。
まるで、このまま殺されてもいい、と死刑を受け入れた死刑囚のように。
* *
わかっていたことだが、父の仇は若い男だった。
S1レーサーとして一躍有名人となった男、レイター・フェニックス。
この名前を、俺はこの十年、一日たりとも忘れたことはない。
俺には父と一緒に遊んだ思い出は、ほとんどない。父はいつも戦地へ赴いていた。
優秀な戦闘機パイロットで、次々と敵を仕留める国民的英雄の『ハゲタカ大尉』。
我が家はいつも周囲の人から感謝されていた。
学校でも父は羨望のまなざしで見られていて、俺には自慢の父だった。
その父が帰ってくることが決まった。俺が十二歳の時だった。
前線から引き上げて、学校で若い兵士の教育にあたると聞いた。
母は喜んでいた。
妹も弟も父が帰ってくるのが楽しみで、家族みんなで父の部屋を掃除して帰りを待った。
俺は少し複雑だった。
学校の先生だなんてヒーローじゃなくなってしまう気がしたからだ。
とは言え、俺も父の帰還を待ち焦がれていた。
だが、その日は来なかった。
父は遺体で帰ってきた。
まるで眠っているようだった。
連邦軍のエースパイロットと戦い、戦闘機から宇宙空間へ投げ出されたと聞いた。
母と弟たちは父の遺体に取りすがって泣いた。
英雄である父は国葬となり、弔砲が鳴り響いた。
葬儀を終えてしばらくして、父を撃ち落としたのが、連邦のエースパイロットではなく俺とほとんど年齢の変わらない少年兵だ、という噂が流れた。
英雄だった父を表向き非難する人はいなかったが、何となく周囲の空気が変わるのを俺は感じた。
英雄は虚像だったんじゃないかと。
その後、軍は正式に発表した。
英雄カールダイン大尉は連邦のエースパイロット、ハミルトン少尉と相撃ちになり戦死したと。
父の名誉が回復しても父が帰ってくるわけじゃない。
母の酒の量が増えた。
俺は知っていた。元々母は、父がいない寂しさを紛らせるためにキッチンでこっそり、酒を飲んでいた。
父が帰ってくると聞いてからは、酒を飲むのを止めていたことも。
それが、朝昼晩、構わず酒に手を出すようになった。
そして、おかしくなった。
俺たち兄弟は施設に引き取られ、一年後、母が死んだ。
俺たちは英雄の家族ということで施設でも優遇されていた。経済的には困らなかった。だが、それを妬む奴はいる。
妹や弟はいじめられてしょっちゅう泣いていた。
どうしてこんな目に遭わなくちゃいけないのか。父さえ生きていてくれたら…。
軍で父と同期だったライロットおじさんは、俺たちのことを気遣ってくれた。
おじさんは、いつも忙しくしていた。軍の経理部に籍を置いていたけれど、本当の任務は別にあったのだろう。仕事の合間を縫って俺たちに会いに来てくれた。
ある日、おじさんに聞かれた。
「ロベルト、君は父親の死について真実を知りたいかい?」
「もちろんさ」
「それを受け止める勇気はあるか?」
おじさんの口調から、俺にとっていい情報じゃないのだろうと想像ついた。それでも、俺は知りたい。
聞いた後に少しだけ後悔した。
父を殺したのは、連邦軍のエースパイロットではなかった。
昔、流れた噂が正しかったのだ。父を撃墜したのは俺と年が二つしか違わない、レイター・フェニックスという少年だった。
父を殺した仇は連邦軍の将軍家に引き取られていた。
父という英雄を倒した奴の人生は開かれていた。俺たち家族を踏み台にして、あいつはのうのうと幸せに暮らしている。
父の仇、母の仇、家族の仇。
俺は復讐することを心に誓った。
ライロットおじさんには何も告げず、俺は施設を抜け出した。
連邦を敵として戦うゲリラの少年兵に志願した。
あいつを倒すためなら自爆テロでも何でもやってやる。レイター・フェニックスの情報を求めて戦地を転々とした。
標的は現われた。
銀河連邦のS1レーサーとして。
俺は奴の姿を初めてテレビで見た。
S1最終戦。あいつの操るS1機は確かに凄かった。『無敗の貴公子』なんて目じゃない。戦闘機乗りの飛ばしだ。あの腕で英雄だった親父を殺したのだ。
そして、復讐のチャンスは訪れた。
今、レイター・フェニックスは俺の前に転がっている。
* *
ティリーは、どうしていいのかわからなかった。
こんなに激しい人間の憎悪を目の当たりにしたのは、初めてだ。
大丈夫だろうか。あんなに殴られたり蹴られたりしたら、死んでしまう。
思わず目を閉じる。レイターを踏みつける鈍い音が耳の奥に張り付く。
止めなくちゃ。暴力は許されない。
わかっているのに、ロベルトの顔を見ると声が出ない。
暴力を振るう。
その理由が理解できる。同情できてしまう。
家族を殺された。なのに、殺した相手は何の罰も科されないどころか、評価が上がる。それが戦争。
残された家族の怒りと悲しみはどうやって解消されるのだろう。
復讐は銀河法で禁止されている。復讐はやってはいけない。頭でわかっているのに感情がどこかで許容している。
レイターが彼の大切な家族を殺したのだ。蹴られても仕方のないことをしたのだ。苦しくて息ができない。
黒ずくめのリーダーが口を開いた。
「ロベルト。そのくらいにしておけ。殺すにはまだ早い。我々の狙いはキーパスワードを聞き出すことだ。自白剤の出番だ」
ロベルトは我に返ったようにレイターから離れた。肩で息をしている。
リーダーはしゃがむと、床でぐったりしているレイターの顔をはたいた。
「起きたまえ。レイター・フェニックス」
リーダーは注射器を手にしていた。
手下たちがレイターの身体を起こして、椅子に座らせた。
「言っただろ、私はロベルトと違って手荒な真似は嫌いなんだ」
リーダーが注射器から液体が出るか確認した。
「はんっ、よく言うぜ、自白剤も条約じゃ禁止されてるだろが」
レイターに言い返すだけの元気があることにほっとした。
「われわれはゲリラだ。条約には調印していない」
「俺がやる」
ロベルトは注射器をリーダーから受け取るとレイターの腕に自白剤を打った。
「連邦軍特命諜報部のキーパスワードを教えろ」
「知らねぇっつったろ」
レイターにそんなことしても無駄なのに。
いくらアーサーさんと義理の兄弟だと言っても、それは筋違いだ。
「君たちは薬物耐性を敷いているんだったな」
リーダーがロベルトにもう一本注射を渡した。ロベルトが再度レイターに自白剤を注射する。
「もう一度聞く。特命諜報部のキーパスワードを言え」
「吐き気がしてきた」
「早く言えば楽になれるぞ」
「知らねえものは言えねぇよ」
レイターの顔色が悪い。気分悪そうにしている。
「少しは効いてきたか。いいことを教えてやろう。お前の前に聞いた諜報部員は、三本目を打ったところで死んだ」
リーダーがロベルトに三本目の注射器を手渡しながら言った。
「この薬は精神を蝕むのだ。素直に話したほうが身のためだぞ。君が死んだら我々は次の標的を探すだけだ」
わたしはいてもたってもいられなくなった。あれは毒なのだ。これ以上打たれたらレイターが死んでしまう。
「止めてください! この人は民間人で連邦軍とは関係ないんだから!」
「関係ないわけないだろう!」
ロベルトが叫んだ。
「俺の父親はこいつに殺されたんだ。俺が仇を打って何が悪い」
そう言いながら三本目の注射をレイターに打った。
「お願い、レイターを殺さないで…」
ロベルトはレイターの襟ぐりをつかんで顔を引っ張りあげる、とレイターの目をにらみ付けて言った。
「十年前、父の最期を覚えているか?」
次の瞬間、レイターの様子がおかしくなった。
「俺は、俺たちは…磁場宙域で、戦闘機の、訓練を、していた」
目の焦点が合っていない。
いつものレイターじゃない。感情も抑揚もない、一語一語が絞り出されるようなしゃべり方。
「コンドル軍団と、接触した。…味方が、ハゲタカ大尉に、次々、撃ち落された」
そこで、レイターが苦しそうに言葉を切った。
黒づくめのリーダーがニヤリと笑いながら近づいた。
「いいぞ、自白剤が効いてきたな。君の名前は?」
「レイター・フェニックス」
操られるようにレイターが答えた。
「君の職業は?」
「銀河一の、操縦士」
「君は、連邦軍特命諜報部のキーパスワードを知っているな?」
「…」
レイターが黙った。
「連邦軍特命諜報部のキーパスワードは?」
「…知らねぇ」
「そんなはずはない。お前は特命諜報部の隠密班に所属している」
「違う」
「嘘つくなっ!」
ロベルトがレイターの頬を殴った。
苦しそうなレイターを見ていられない。
「もうやめて!」
夢中で叫んだ。
「あなたたちが何を勘違いしているのか知らないけれど、この人はわたしのボディーガードよ。昔は連邦軍の艦に乗っていたかもしれないけれど、今は違うのよ。知らなくて当然じゃない」
「言っただろ、俺はこいつを、許すわけにはいかないんだよ」
ロベルトが怖い顔をして、わたしに近づいてきた。
手にナイフを持っていた。
怖い。わたしは息をのんだ。刃がきらりと光る。
「静かにしないと、お前もここで殺してやる」
ロベルトはわたしの首にナイフを突きつけた。
と、その時、レイターが叫んだ。
「止めろ! ティリーさんから離れろ」
いつものレイターに戻っていた。
「ほお、自白剤の呪縛から逃れたか」
リーダーがそう言いながらレイターの目をのぞきこんだ。
「一般人を巻き込むな、ってアリオロンから言われてるだろうが」
まるでレイターはこの拉致の黒幕まで知っているかのようだ。
「証拠無く消せば問題はない」
リーダーは冷静に答えた。
「ちっ、わかった、わかったから彼女にさわるな」
レイターが観念したように言った。
「何がどうわかった?」
リーダーが詰める。
「キーパスワードを教える。その代わり、とにかくまずナイフを彼女から離せ」
「だまそうとしても無駄だぞ」
そう言いながらロベルトはナイフを少しだけ遠ざけた。
一瞬、ほっとする。けれど、これは単なる時間稼ぎだ。
レイターの嘘がばれたら、その場で間違いなく殺される。
どうするつもりなのだろう。
レイターはキーパスワードなんて知らないのだ。
今、自白剤で「知らない」って言ったばかりだ。
なのに、レイターはまるで自信があるかのように答えだした。
「特命諜報部のキーパスワードは三重だ。一つ目を教えるから入力してみろ。嘘かどうかすぐわかるさ。彼女を解放したら二つ目を教えてやる」
「一つ目のパスワードは?」
「INO3RI@:LO6840b3k89C40113N5dd743368a25…」
レイターは数字とアルファベットの羅列をすらすらと喋りだした。口から出まかせに決まっている。
リーダーが聞き取った数値を次々と打ち込んでいく。
「最後は4だっけな? 3だっけな?」
レイターがおどけながら答える。
「ふざけるな」
ロベルトがナイフをわたしに近づけた。
逃げたいけれど身体はピクリとも動かない。
レイターはこんな時間稼ぎでどうにかなると思っているのだろうか。
「3だ」
レイターが答えた。
パスワードの打ち込みが終了した。
リーダーがモニターをのぞき込む。
わたしの心臓が早鐘のように打ち始めた。何も起こるはずがない。
レイターはわたしを助けようにも両手両足を塞がれている。
わたしはここでロベルトに刺されて死ぬのだ。
久しぶりに復帰した営業の仕事で、どうしてこんなことになっているのか情報処理が追い付いていない。
わかっているのは『厄病神』のせいだということ。いや違う、『厄病神』の言いつけを守らなった自分のせいだ。
次の瞬間、リーダーが驚嘆の声をあげた。
「すごいぞ、パスワードが解除できた。連邦軍の第一ガードを突破した。侵入成功だ」
え? どういうこと?
レイターが口にした数字の羅列は本物のキーパスワードだったということ?
どうして、レイターが連邦軍のパスワードを知っているの?
考えられるのは不正入手?
今、連邦軍のシステムはどんなことになっているんだろう。パスワードが漏れて、ウイルスに侵入されて、…考えるのも怖い。
いっそ、わたしがここで死んだ方がよかったんじゃないだろうか。
「では、二つ目のキーパスワードを聞こうか」
「彼女を解放しろって言っただろ」
リーダーとレイターがにらみ合った。
「わかった。ロベルト、ナイフをしまえ」
リーダーはわたしを殺したらレイターから聞き出すことができない、と判断したようだ。
「まあ、いい。第一ガードの突破で連邦軍が揺れている。このパスワードの解析で二重、三重のパスワードが解けるかもしれん。この二人を監禁しておけ」
レイターの足枷はつけたまま、椅子の脚からはずされた。
「立て」
銃を突きつけられたレイターは立ち上がろうとしたけれど、よろめいて床に倒れた。
そのまわりを警戒するように、男たちが取り囲む。
レイターが動く様子はない。
リーダーはレイターを踏みつけると笑いながら言った。
「どうせ、キーパスワードを明かすのであれば、抵抗しただけ損をしたな。自白剤によるダメージを随分と受けたであろう」
「うるせぇ…」
絞り出すようなレイターの声が、かすかに聞こえた。
わたしのせいだ。
レイターは必死に自白剤に抵抗したのに、わたしのせいで、秘密を漏らす結果になってしまった。
全部、わたしのせいだ。
レイターはピクリとも動かなくなった。意識を失ったようだ。力無く横たわっている。
「連れていけ」
手下たちがレイターの両脇を抱え引きずっていく。
わたしのシートベルトが解除された。両手が結束バンドで結ばれる。
「すみませんが、お嬢さんには、もう少しお付き合いいただきますよ。私情を交えない特命諜報部員を動かせるとは、いい拾い物をした」
また、違和感に襲われる。
レイターは特命諜報部員じゃなくわたしのボディーガードだ。けれど反論する気力もない。
銃を突きつけられ、レイターの後に続くよう命じられた。
男たちは物置倉庫のドアを開けると、レイターの身体を投げ入れた。
ドサッという音とともにレイターが倒れこむ。
手下の一人が荷物の固定用フックにレイターの足枷を取り付ける。
「お前も入れ。おとなしくしてろよ」
ドアが閉まり電子キーのかかる音がした。
二メートル四方ぐらいの狭い物置に閉じ込められてしまった。物品は何も置いていない。
照明が明るい。防犯カメラでわたしたちを監視しているのだろう。
しゃがみ込んでレイターの顔をのぞき込む。
赤く腫れていて、汗がすごい。心配だ。
さっきリーダーは自白剤を三本打たれて死んだ人がいると言っていた。
「レイター、大丈夫?」
「平気さ…」
と言った瞬間、レイターは顔を苦しそうにゆがめた。
体が小刻みに震えて呼吸が乱れた。発作だ。自白剤の影響に違いない。
「平気って嘘なんでしょ。お願いだから嘘はつかないで」
どうしていいのか、わからない。
レイターが身体を丸める。その背中を縛られた両手でさすった。身体が熱い。
「ふぅー、気持ちいい」
レイターが小声でつぶやいた。
「すまねぇが、もう少し大げさに背中さすっててくれ」
「大げさ?」
「ちょうどそこは死角になる」
入口近くにある防犯カメラに対し、わたしの位置が、レイターの姿を隠しているようだ。
レイターはわたしの動きに合わせて身体を揺らし、器用に手錠から両手をするりと抜いた。
この人は、わたしさえいなければ、こんな目に遭う前に逃げることができたに違いない。
「ごめんなさい」
「あん?」
「わたしのせいで、あなたを危険な目に遭わせて」
「逆だろ、俺のせいであんたが危険な目に遭ってんだ」
こんな状況なのに、レイターは笑顔を見せた。
「レイター、あなた、一体何者なの?」
「…銀河一の操縦士さ」
一瞬、躊躇したのがわかった。
レイターは横になったまま、靴に手を伸ばした。
靴底から樹脂でできたカードが出てきた。
「このまま、ずっとティリーさんに、背中をさすっててもらいたいんだけどな」
レイターがわたしを見てニヤリと笑った。
こんな時に、何を冗談言っているのか。
「仕方ねぇ、逃げるとすっか。あいつら俺が動けねぇと油断してるはずだ。ティリーさんは俺のあとについてきてくれ」
レイターは両手のひらでカードをはさみ素早く立ち上がった。いつの間にか足枷が外れていた。カード型のレーザーナイフだ。
気が付いた時にはわたしの両手を縛っていた結束バンドも切れていた。
レーザーナイフでドアの電磁キーを破壊する。
*
「逃げたぞ!」
気付かれた。
レイターがレーザーナイフを口に挟んだ。
前から手下たちが来た。
ピュンという軽い音とともに白い光線が飛び、手下たちが倒れた。
息を呑む。
レイターがくわえているこのカードは、レーザー銃にもなるんだ。
三つ目の銃。
次から次へと来る相手を、レイターが器用にカード型銃で撃つ。威力は強くない。相手は死んでない、と信じたい。
考えている余裕はない。
とにかくレイターの後について走る。
でも、体が思うように動かない。
足がもつれる。
つまずいて転びそうになるわたしをレイターが左手で支えた。
くわえていたカード型銃を右肘に挟む。
「大丈夫か?」
「大丈夫」
これ以上レイターに迷惑をかけるわけにはいかない。
レイターがわたしをかばいながら走ってくれるのがわかる。
格納庫に着いた。
「こいつを借りるぜ」
一人乗りの戦闘機だった。
キャノピーが開いていた。狭い操縦席に二人で乗り込む。
「ティリーさんは、俺のひざの上に」
小さい子供を操縦席に座らせる要領だ。
「左のモニターを見るから首を右に傾けてくれ」
わたしは言われた通りにした。
「旧型でよかったぜ」
と言いながら折れた指でロックを解除する。中央制御されていないようだ。
時折、追っ手に機関銃で威嚇射撃をする。
レイターが操縦棹に手をおいた。
「ティリーさん、頼む俺の手の上から握ってくれ」
レイターの手の上に手を重ねる。
「力入れて引っ張れ」
操縦棹を引っ張った瞬間、レイターの体がビクッと緊張するのがわかった。かなり痛いに違いない。
「いいから引っ張れ!」
レイターが叫ぶ。機体が動き始めた。
「よっしゃ。行くぜ」
ガガガガガ…
わたしたちを逃がさないようにゲートのシャッターが閉じてしまった。
バリバリバリバッリ
レイターは機関銃をシャッターに向けながら突っ込む。
小さな穴が開いた。
けれどこの機体が通り抜けられる気がしない。
レイターは機関銃を撃ちながら迷いなく進める。
このままじゃ、激突する。
レイターはわたしの頭が邪魔で前が見えていないんじゃないだろうか。
眼前にシャッターが迫り、思わず目を閉じた。
ふわっと、重力から外れる感覚。
機体はシャッターに接触もせず宇宙空間へと通り抜けていた。
あの小さな穴を抜けたの?
レイターの船幅感覚の鋭さに今更ながら驚く。
追っ手が来た。
レーザー弾を撃ってくる。
わたしはレイターの手が操縦棹からはずれないよう押さえた。
レイターは操縦棹を器用に手のひらで操縦し、敵の攻撃をかわしていく。
わたしが邪魔だと思うのに、どうしてこんなに的確な操縦ができるのか。
飛ばし屋とも、レーサーの操縦とも違う。
やはり、この人は戦闘機乗りなのだ。
レーザー弾が飛び交う。
怖い。けれど、大丈夫、レイターは銀河一の操縦士だ。
「ティリーさん、もう一度、操縦棹を引っ張ってくれ」
言われたとおりに力を入れる。
「っつう」
レイターが小さな声でつぶやいたのが聞こえた。手の力が弱まる。
「心中したくなかったら引っぱるんだ」
レイターの声に押され、ぐっと力を入れる。
船が急上昇する。
身体がレイターと密着する。こんな時なのに、安心感に包まれる。レイターと一緒なら、もうどうなってもいい。
レイターが足元のペダルを足で操作すると、船のスピードがぐんぐんと加速し相手を引き離していく。
逃げ切れたのか、と思ったのだけれど、敵もそう甘くは無かった。
ピピピピピ…
レーダーが追ってくる一機を捕らえた。
「レイター・フェニックス! 逃がしはしない」
通信機からロベルトの声がした。
「ちッ、めんどくせぇな。ティリーさん右手はずしてくれるかい?」
右手を離すとレイターは手のひらを使って操作を始めた。
見たことのないパネルが出てきた。手伝おうかと思ってパネルをあらためて見た瞬間、思わず息を呑んだ。
銃撃用のトリガーだ。
「ど、どうするつもりなの。ロベルトを撃つの?」
レイターは何も言わない。
彼は左手で操縦桿を握り、右の折れた指で苦労しながら自分でセットしている。わたしに手伝えとは言わない。
やめて、と言おうとした時、
ロベルトが撃ってきた。
ガガガガガツッツ
「急旋回するぜ」
レイターの手の動きに合わせて左手で操縦棹を引く。横Gがかかる。
レイターが右手でパネルのスイッチを押した。白い光が飛び出す。レーザー砲だ。
ピルルルルル…
『目標物に命中』
目視ではわからないけれど。当たったようだ。
ロベルトはどうなったのだろう。撃ち落としてしまったのだろうか。胸がバクバクする。
レイターはロベルトの船へ針路をあわせた。
白煙が見えた。ロベルトの機体だ。噴射口が打ち抜かれていた。あれでは自力で動けない。
「俺を殺せ!」
ロベルトの声が通信機を通して聞こえた。
「父を殺したように殺せ!」
その言葉を無視してレイターは、ロベルトの船を救うための救難信号を流した。
「情けはいらない。俺は生き延びたらまたお前を殺しに行く」
レイターが通話スイッチを入れた。
「あんたの親父『ハゲタカ大尉』は凄腕だった。あの日、戦闘になるなんて誰も思ってなかった。たまたま俺たちの部隊と鉢合わせしたんだ。磁場宙域で識別信号がきかない中、訓練の流れ弾が当たって、そのまま戦闘に突入しちまった」
さっき自白剤で話した続きを、レイターは伝えようとしていた。
「俺はあんたの親父を殺した、その理由は簡単だ」
人を殺すのに簡単な理由。嫌な言葉だ。
「俺は連邦側最後の一機になって、『ハゲタカ大尉』と向かい合った。あんたの親父は英雄と呼ばれるのにふさわしい、俺がこれまで会ったどの戦闘機乗りよりも一番の腕前だった。速さ、威力、技術、すべてがそろってた。殺らなきゃ俺が殺られてた。生きて帰るには倒すしか無かった。それが、俺とあんたの親父の仕事だった」
人を殺してもいい簡単な理由。戦争。
「あんたが俺を憎むのは自然なことだ。俺を殺したければ、何度でも来ればいいさ」
「俺は、お前が死ぬまでいくぞ」
レイターは静かに続けた。
「俺は殺されたって構わねぇ。悲しむ人も恨む人もいねぇからな」
耳元で聞こえたその声にゾクっとした。
さっきレイターはロベルトに蹴られながら、死を受け入れようとしているように見えた。本気でレイターはそう思っているのだ。
「レイターは死を恐れていないから死の直前まで向かって行ってしまう」
チャムールの言葉が頭に浮かんだ。 まとめ読み版②へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」