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柿の実を50個とったら、首のうしろが痛くなりました。

 庭の柿の木は渋柿で、干さないと食べられない。

 義母が生きている時は、毎年のように柿の実をとって、皮をむいて、軒下に干して、そこだけ、ちょっと都内の風景ではなくなっていた

 だけど、義母が亡くなってからは、そんなに熱心にとらなくなり、時々、渋柿でいいので、という条件でも、欲しい人があらわれると、柿の実をとることになる。

 今年の秋も、希望者がいらっしゃるので、晴れた午後、そろそろ色づいてきた頃に、柿の実を取ろうと思った。

ノコギリと高枝切りバサミ

 先日は、実家の松の木を切った時に、ノコギリが折れた。

 今年は家の庭で空を見上げると、いつの間にか柿の木の枝が伸びていて、そろそろ切らないと、と思っていた。
 実家の松の枝の太さは20センチくらいあって、時間がかかったけれど、切り落とせたので、それに比べると、柿の枝は、それよりも細いようなので、なんとかなるような気持ちになっている。

 だけど、ノコギリが折れた。だから、再購入を考えたのだけど、何年か前に買った通販のサイトでは、もう売ってなかったから、他の場所でも検索したのだけど、だけど、画面で見ているだけだと、その強度とか使い勝手は、よく分からないから、なんとなく買うのをためらったままだった。

 そして、実は、柿の枝を切りたいと、ちょっとでも本気で考えると、微妙に困難が多い。

 その切るべき場所と、その枝を切った時に、その枝ぶりが、かなり広がっているので、落とす場所がないというか、屋根が壊れるのではないか、という恐れがあるので、もう少し細い枝を何本も切り落とした後に、切り落とさないと危険だと思うと、もっと新しくて、切れる高枝切りバサミと、そこにまともなノコギリが付いていたら、その作業も楽なのに、などと思っていた。

 家には、高枝切りバサミが2本あるけれど、どちらも古く、枝も切るというよりは、つかんで折る、という方法になってしまうので、思ったよりも体力を使うから、枝を切ろうと思うと、なんだかおっくうになるし、そこに付いているノコギリはさびている。

 道具は大事だと思うけれど、素人が庭だけで使うのに、わざわざ買うのももったない気持ちがあった。

新しいノコギリ

 それでも、ホームセンターに行った時には、妻が前もって売り場を見てくれていたので、スムーズにノコギリを見ることができた。

 折れたノコギリは、もう10年以上使っていて、実家でも家でも松や柿や梅など、いろいろな樹木を切ってきて、できたら同じものが欲しいくらいだったので、似たものを探してしまう。

 まずは、その刃の部分は、「荒目」というものらしく、それをさらに近くで見ても同じだと分かったので、まずは「荒目」に絞る。値段の差もあるけれど、その中で高いものは、刃が厚くなっていて、やはり、これまで使っていたものも、ある程度以上の厚さがあったので、同程度のものを選ぼうと思う。

 あとは刃先の長さ

 27センチだと思っていて、それにしようと思って、実際に手に取ってみると、なんとなく長いような気もして、折れたとしても、使っていたノコギリを持ってくればよかった、と微妙な後悔もしながら、隣の24センチも見て、そのサヤから出してみる。

 見比べても、だんだん分からなくなる。

 妻に、リュックに入る方にしたら、と言われたが、どちらも入りそうだったから、また迷って、だけど、やはり枝を切るとしたら、より長い刃の方が、より太い枝を切れるはずと思って、やっぱり27センチにした。

 約4000円。

 自分たちにとっては、そこそこの高額の買い物という印象で、買うときに、何か気持ちがちょっと縮むような気がした。現金が目に見えて減ることが、ちょっと怖い。

 それは情けないのだけど、貧乏ということだと思う。

柿の実

 家に戻ったら、午後3時半頃になっていた。

 秋が進んでくると、この時刻でもすでに夕方の気配がするから、ちょっと焦って、何しろ、高枝切りバサミを使い始める。うまくハサミが伸びない。あちこちがぎこちない。二つあるうちの一つを使う。その方が、少しだけ切れ味がいいように思えたけれど、外見では、どちらもサビていて古く見えて、できたら買い替えたいと思うような気配だった。

 だけど、それを使うしかない。

 柿の実は気がついたら大きくなっていて、だいだい色になってきてて、それでいて、葉っぱはそれほど色付いていなくて、まだ茂っているから、地面から上を見て、高枝切りバサミを伸ばして柿の実を取ろうとすると、葉っぱが邪魔で、そうすると、かなり柿の実が固まって見えるのに、どの枝を切れば、柿が取れるのか、が分からない。

 思ったよりも、枝は、複雑にあちこちに伸びて、そして、太陽の光をとらえようとしている、ということなのだと思う。

 それでも、柿の実を取り続ける。

 切り取って、そのまま刃先にとどまり続けてくれて、そのまま、下ろす。
 
切ってから、すぐに落ちてくるから、それを下で受け止める。
 もしくは、受け止めようとして、地面にそのまま落ちる。
 枝を切ったら、3つも4つも実がなっていることもある。

 そんなことを続けて、柿の実は、妻が整えてくれて、そして、干し柿に使えるように、少しだけ枝を残して、その数は増えていった。

 切っても、切っても、まだとれそうな柿の実が見える。だけど、高枝切りバサミが届かなかったり、枝をつかんで、左右にひねって、やっととれる時もある。

 そうやって、五十個以上の柿が取れたから、妻は、もうたくさん取ってくれたから、大丈夫、と言ってくれた。

 大きめの袋3つ分になった。

 ずっと上を見ていた。
 せき込むようになって、そして、首の後ろが痛くなっていた。

 同じ姿勢を取り続けているから、痛くなったのだと思うけれど、首の付近が痛くなるのは、ちょっと怖い。

引き渡しと追加注文

 妻がきれいに枝をさらに切り整えて、袋に詰めてくれて、後日、欲しいと言ってくれた人は、引き取りに来てくれた。

 たくさん取ってくれて、と感謝もされるが、自宅まで運ぶために、リュックに詰めていたようだけど、そのリュックの大きさを考えたら、ちょっと魔法のように、かなりの数の柿の実を収納していた。ただ、その重さを考えると、勝手に心配はあった。

 それでも、そのままだとただ鳥のエサになってしまうか、庭の地面に落ちて崩れていくかになってしまうので、渋柿だから、干すしかないとしても、それを欲しがってくれるのは、こちらもありがたい気持ちになる。

 無事に引き渡しが終わって、ちょっとホッとする。

 そして、妻が、別のご近所の方が、渋柿と分かりつつも、やはり欲しい、という「注文」をもらってきた。

 2階の窓から、高枝切りバサミを使えば、とれそうな柿の実が、下から見ていたら、かなりあったので気になり、取りたいと思っていたから、ちょっと好都合だった。

 次に天気がいい日に、また柿の実を取ろう、という相談を、妻としている。


 渋くても、干すと甘くなるのは、いろいろな理屈を聞いた記憶はあるのだけど、今でも不思議さは変わらない。



(こうした本↓もあることに、気づきました)



(他にもいろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。

 


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おちまこと
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