失礼な話なのだけど、最初はテレビで、その著者の作品が紹介されていて、面白そうだと思いながらも、そこで、その本の厚さで、読むのをちゅうちょしてしまった。
そのあとは、やはりテレビで話をしている姿を見て、その言葉の選び方と、話すスピードや声の感触で、これも勝手な話なのだけど、誠実な印象を持ち、そのあとにラジオでもっと長く話す言葉から、小説家であっても、社会という外側に対しても発言する大切さを改めて感じた。
人権の臭い
そのラジオでの話の中で、耳に飛び込んできて、印象に残ったのが、「人権の臭い」という単語だった。
そのエピソードは、ブログの中に描かれていた。
この話は、かなり印象も強く、ただ、少しでも考えれば、大学卒業時が就職氷河期と言われる頃で、しかもフリーターをしながら小説家を目指すという、失礼な憶測かもしれないが、先の見えない不安の中で過ごしていたと想像もできるので、そういう時間の中だからこそ、そうした言葉に出会ったと言えるのかもしれない。
そうした言葉を、伝えてくれたから、このエピソードも引用させてもらえて、こうした記事↑も書くことができた。だから、感謝する思いがある。
小説を書くときに、心がけていること
そのブログの文章は、著者にとって初のエッセイ集の中にも収められていた。
この書籍は、17年間にわたる文章で、日常的な欲望から、社会的な視点まで、とても幅広いことについて書かれていて、それは、人間が生きている時の自然な思考に近いと思われるけれど、この時間の中でデビューから芥川賞受賞、また書いたエッセイによって弾圧のような経験もあったようなのだけど、読者としては、基本的な姿勢が変わらないように感じた。
ここには、偉そうな言い方になったら申し訳ないのだけど、「初心を忘れない」ということが形になっているように思えた。
さらには、本当は、こうして部分的に引用するのも失礼だとは思うし、少なくともエッセイであれば、全文を読んでもらうのが筋なのはわかっているのだけど、この書籍に収録されている書き下ろしである「作家志望の方々に」が、あまりにも親切だったので、紹介したいと思った。
そこには、最初に新人賞に落選してから、心がけたことなど、著者自身の経験も率直に書かれている。
この二つ目に関して、さらに具体的な方法まで書かれている。
私自身の個人的な経験だけど、昔ライターをしている頃に決定的に欠けていたことを思い出す。小説家ではなかったけれど、「読むこと」が圧倒的に不足していた。(だから、売れないライターだったのかも、とも思う)。そして、恥ずかしながら、手遅れかもしれないけれど、今からでも、もっときちんと読もうという気持ちになれた。
最後の三つ目は、これまで受けてきた影響を出す、ということだったが、ここは、特に部分的に引用すると正確に伝わりそうになかったので、できたら、本書を読んで欲しいのだけど、自分の核に気づいて表現する、という、小説だけではなく、美術の世界でも共通するようなことだと思え、同時に、その難しさも改めて感じたものの、こうしたことを現役の小説家から伝えてもらえるかどうかで、その浸透する程度は、変わってくるとは思う。
とても親切な言葉
さらに、書くための「過程」についても言及されている。
こうした目指す途中の方法だけではなく、もし、小説家になって、書けなくなった時のことまで記してくれている。
さらに、文学というものに関しても、おそらくは勇気を持って、著者自身の言葉で断言している。
そして、このエッセイを紹介しようと思ったのは、さらに、こうした「とても親切な言葉」があったからだ。
これは結果として、小説家になるという夢が叶わないとき、もしかしたら、残酷に響く可能性もあるけれど、それでも現役の小説家が、まだ小説家になっていないけれど、なろうとしている人間に対して「作家志望の方々」と名指した上で伝える言葉として、ここまで誠実で親切な表現は、個人的には初めてだった。
だから、まだこの著者の作品をロクに読んでもいない人間が、こうして紹介すること自体に、後ろめたさはあるものの、noteで3年以上、記事を書き続けてきたのだけど、このnoteでは真剣に作家を目指している方々が多いという体感があるので、伝えようと思いました。
できたら、勝手なお願いだと思っていますが、本書そのものを手に取って、全部を読んでいただきたいとも思っています。
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