冷凍のたこ焼きで、説明する難しさを、改めて知った。
家にいるときは、妻と相談して、だいたい午後3時半か、午後4時半に「おやつ」にして、コーヒーを飲む。その時は、録画していたテレビ番組を見ながら、家にある食べ物を、妻が用意してくれる。
その日は、冷凍の今川焼きか、たこ焼きのどっちにしたい?と聞かれ、私は、優柔不断な答えで、とても評判の悪い、妻が好きな方にしてほしい、と伝え、じゃあ、たこ焼きにしちゃうよ、と言われ、もちろんOKだった。
不安げに、聞かれる
冷凍食品だから、レンジを使うのだけど、コンビニで買った、この「たこ焼き」を食べるのは初めてで、裏の説明を読んで、袋を開けてから、妻が、ちょっと不安そうに聞いてきた。
「これさ、どうするのか、聞いてもいい?」
行程が三つに分かれて、説明がされていた。
① 添付のソースを取り出し、小袋のまま流水またはお湯で解凍しておきます。
このように書いてあったので、私は、その説明のまま、商品の袋に入っているたこ焼き(本体)ではなく、小さめの袋に入っているソースと、かつお節のセットを水につけようとした。
袋の中に、さらに二つの小さな袋が入っている。そうなると、この外側の袋を開けてしまう場合があるから、わざわざ小袋のままと、赤い文字にしてあるのだと思った。
おそらくは最初に、誰かで試して、それでミスが出やすいところを調査し、そこを修正しているのだと思い、秘かに感心もした。
だけど、妻の不安な部分は違っていた。
妻の疑問点
「え、そっちを水につけるんだ?」
私にとっては、やや、分かりにくい話だったので、聞いてみたら、妻が思っていたのは、こういうことだった。
添付のソースを取り出し、
説明文の、冒頭の、この時点で、この添付のソースの入った袋は、意識の外へ行く。
だから、ソースの袋を取り出した、紙トレーに入って、最初の外袋の中にあるたこ焼き(本体)だけが、意識の中に残る。
すると、この後の説明文にある
「小袋のまま流水またはお湯で解凍しておきます。」
という部分の小袋は、妻にとっては、たこ焼きが入っている袋のことで、ちょっと大きいのかも、と思いながらも、最初の添付のソースのことは、すでに意識の外へ出ているから、思考の中には、たこ焼きの入っている袋しか残っていない。
だから、この小袋は、たこ焼きが入った「この袋」のことになり、流水やお湯で解凍するのは、この「たこ焼き」ではないか。(こうなると小袋という表現の幅広さが、アダになっているような気もしてくる)。
ここまで思考が進んで、「たこ焼き」本体を水につけようとしてから、でも、これでいいのか、という違和感をおぼえたらしく、この時点で、私に聞いてきたようだった。
イメージする力
妻は、理解力が低いわけではない。
視覚的な情報に強く、イメージ力はあり、直感力に優れていると思う。おそらく、本質的には不得意のはずのソロバンも、塾に通って、かなりのレベルになったと私は思っている(本人は否定するけれど)。
だけど、文章題のようなものが苦手だったらしい。
テストの文章は独特の傾向があり、自分の微妙な抵抗感に目をつむり、そういうものだと丸ごと思えないと、引っかかるところが多いのは、分かる。
だから、説明文のようなものに対して、苦手意識があるのだとは思うが、妻がそのまま作業を進めて、水をかけられた冷凍のたこ焼きをレンジにかけても、かなり微妙なものにはなったと思うので、自分の違和感に正直になり、私に声をかけてくれたのはよかった。
説明文を考え直す
視覚的な情報や、イメージが先行する人にとっては、この説明文の最初のところが、どうもうまく伝わっていないようだ。
①添付のソースを取り出し、小袋のまま流水またはお湯で解凍しておきます。
最初の「添付のソースを取り出し」を読んだ瞬間、添付のソースは、気持ちの外側に行ってしまう。だから、この添付のソースを、できれば、もう少し丁寧に追っかけてくれるような文章にしてもらえると、妻のようなもやもやした気持ちを持つ人が減るのではないか、と思った。
冷凍食品をレンジでチンする。
この作業に慣れた人ほど、そのルーティーンと外れた作業が、引っかかってしまうのは、事実だとも思う。
私は読んで理解できたから、この説明文自体にミスはないはずだけど、より、精度を上げるとすれば、どのようにすればいいのだろうか、と妻と相談しながら、こんな風にしてみた。
① 添付のソースを取り出し、そのソースとかつお節の入った小袋を、開けずにそのまま、流水またはお湯で解凍しておきます。
少し文章が長くなり、分かりにくい人も出てくる可能性はあるが、これだと、添付のソースを、そのまま無理なく、意識で追えて、おそらくはスムーズに、解凍ができるはずだ。
② 紙トレーに凍ったままのたこ焼だけを入れ、ラップをかけずに電子レンジで温めます。
③ やけどに注意して取り出し、解凍しておいたソース、かつお節をかけて、暖かいうちに召し上がりください。
その後の②と③の説明文は分かりやすく、修正する必要もなく、そのおかげで、たこ焼きは、おいしく食べることができると思う。
この時も、結果として、たこ焼きはおいしく、そして、テレビを見ながら、楽しい時間になった。
よかった。
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