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季節の博物誌 14 鳥の記憶
まだ寒い日の夕暮れ。庭のフェンスに見慣れない鳥が止まっているのを見つけた。この時期になると時折庭にやって来るヤマガラに似ているが、少し違う。地味な灰色の体で尾はほんのりと紅く、背中の羽に白い斑点がある。調べてみると、ジョウビタキの雌だとわかった。つぶらな目で辺りをきょろきょろ見回しながら、尾を上下に振っていたが、やがてどこかへ飛去って行った。
小鳥たちを見ていると、子供の頃、実家でジュウシマツ
季節の博物誌 13 冬の樹
木枯らしが街に吹き始めた初冬のある日、広い公園の雑木林を歩いた。
鬱蒼としていた林は、一日毎に空が広くなり、明るい冬の光があふれていた。所々に残っているハゼやイロハモミジの黄色や赤に色づいた葉が、澄んだ空気に映えている。古い大きなケヤキの樹の下に来て、美しい枝ぶりや、その向こうに広がる空の様子をしばらくぼんやり見上げていた。
緑が一斉に芽吹く春の林や、新緑が風にそよぐ初夏の林も魅力的だが、一