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棗目《海鳴りvol.1》

7月を壊す雷雨の豪
雨水は僕らの体に吸い付き纏う
嘘をついてるわけじゃない
けど嘘になる
あの子の笑顔は見たことないけど
見ることもないまま死んで
忘れる
ただ思い出して忘れる
一周回った頃に君が持ち出した
おもちゃの破片
思い出したけど何の部品か
思い出す頃に忘れる
そして気づく
大したことないまま死ぬ
それがとても悲しかった
涙が出ては一人だった
僕は一人だった
また雨が降り
音が重なる
僕の部屋は
蛇口から水滴が秒針を刻んで
滴るだけ
それはもう一種、安心の一部だ

一人ひしひし
足あとけたたましく風合い馴染む

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