サトウコオリ

小説やら日記やらを書きます。創作文芸/二次創作/ポップン曲のレビュー/ただの日記 など…

サトウコオリ

小説やら日記やらを書きます。創作文芸/二次創作/ポップン曲のレビュー/ただの日記 など。音ゲーとジャズが好き。文章のお仕事ありましたら、ご一報ください。⇒ orangephilosophia2005@yahoo.co.jp

最近の記事

fog.

fog1 首から血が流れている。血だと仮定する。首から流れている何かを。視界が白く霞んでいる中で、赤い色だけが美しく光る。鮮血。赤い絵の具のようにも見える。手で触って確かめたい、と思う。(おそらくは)私の首から流れる(おそらくは)血なのだから、諸々の所有権を持つ私が触ってもなんら問題は無いはずだ。しかし手は上がらない。もうそんな体力は残っていない。痛みはそこになく、何かが溢れ、流れている感覚だけがある。不思議だ。例えば泉はおそらく、こんな気持ちなのだろう。白く濁った視界の向

    • Trap

      金曜日  合板でできた丸いテーブルの上に、小さなものが色とりどりに散らばっている。例えば、青リンゴ味のフーセンガム、舐めると味と色が変わるキャンディ、不思議な形のアルミパックに包まれたマーブルチョコレート、青い色の棒状のゼリー。そのほかにも、まるでおもちゃ箱をひっくり返したかのようにこまごまとしたものが白いテーブルいっぱいに散らかっている。それらは総称して駄菓子と呼ばれるものだ。よく見ると、食べ終わった抜け殻も混じって転がっている。今この瞬間にまたひとつ抜け殻が増えた。色の

      • サ活メモ

        2回目のサ活メモ(20211030)。 ずっと混迷を極めていた仕事が一段落したので行ってきた。 前回の経験を活かし、簡単ではあるが100均などでサウナセットを作っていたのでそれを持っていく。内容は、シャンプーやリンス、石鹸などを小分けにしたものや、ボディタオルなど。こうして道具を揃えると、なんとなく安心感がある気がする。 * サウナハットの購入が間に合わなかったので、今回は濡れ頭巾スタイルでサウナに入った。何気なしにタオルを被っただけなんだけど、顔もヒリつかないし、視界も

        • サウナ初心者がフェイスタオル1枚持って初めてサ活をした話

          休みの日の朝、目が覚めて、初めに思ったことは「疲れた」だった。次に思ったことは、「サウナ行くしかないな」。 行くサウナは決まっていたので、あとは準備をして行くだけだ。 そこでふと気づいた。 そういえばサウナって何を持っていったらいいんだ? とりあえず、フェイスタオル1枚ビニール袋に入れて家を出てみた。 **** 靴箱の鍵をカウンターに預けてリストバンドを貰い、お金を払う。今回は休憩ナシでお風呂とサウナだけ。館内を見物しながら浴場に行く。平日の昼下がりだったので、そん

          ハッピーバースデー

          名は体を表す、というよりもっとプリミティブに、誕生日はその人を表す、というのは結構あると思う。春生まれっぽいなとか、冬生まれ、しかもクリスマスに近そうだとか。「誕生日、いつですか?」「6月18日です」「あー」という、この「あー」と言う感じ。 具体的なところだと、ルネ・マグリットの誕生日が11月21日なのを今日知って、かなり「あー」と思った。それっぽい。それっぽい感じがしませんか。秋も終わりの、すごく寒い初冬。空気はからからにかわいている。11月、しかも後半なのがとてもポイン

          ハッピーバースデー

          ポカリとお粥と軽食。

          音楽が好きでしょっちゅう聴いているんだけれど、いつでも同じ状態で心地よく聴けるわけではない。何の音楽を聴くか・聴けるかというのは主に体調による。もっと言えば、疲労の度合いによる。 食事に例えるとわかりやすい。元気な時は何を食べてもだいたい美味しい。際立って元気じゃなくても、まあ普通に元気という時は、とりあえず好きなものを中心に食べたいなと思う。この辺までが日常の基本である。 そして疲れている時。疲れている時は胃に優しいものが食べたい。例えばお粥のようなもの。なんたって食べる

          ポカリとお粥と軽食。

          万年筆のインクの取り換え方

          万年筆のインクを取り換える。 万年筆のインクを取り換えるのは、別に難しいことじゃない。特に資格とかも要らない。しいていうなら、万年筆とインクが手元にあること、それだけだ。 ピストンをゆっくりと下ろしていって(たまに右回しだったか左回しだったか迷う)、今使っているインクをまずはインク瓶に戻す。一度でも空気に触れさせた以上若干インクの成分が瓶の中のものとは変わってしまっているので、一度万年筆に入れたインクを瓶に戻すのはあまりよくないという人もいるが、私は貧乏性なのでいつも瓶に

          万年筆のインクの取り換え方

          読書20180109

          謹賀新年!本年もよろしくお願いいたします。 * 今年の目標の一つは「本を読もう」ということで、その点に留意して日々を送って行こうと思っています。そうこうしているうちに今月も三分の一が過ぎましたよ! 読んだ本→「Self-Reference ENGINE」  書いた人→円城 塔 実は年末から違う本を読み進めていて、このままいくと年をまたぎそうだな~と思っていたところで、新年一発目に読む本が「これ」ってちょっとどうかな……という結論に達し、即座に舵を切り替えました。その結

          すみませんが、コーヒーをふたつ

          白いカップの一部、細いふちが、淡く色づく。私はそれが嫌いだった。想像していただけるとよく分かると思うのだが、例えばある休日の昼近く(別に平日でも構わないけれど)、あなたとパートナーがコーヒーショップへ行ったとする。ショップはシャッターが上がってまもなくといったところだけれど、天気がいいからか、そこそこ混んでいる。あなたの隣にはパートナーが座る。あなたはウエイトレスに声をかける。「すみませんが、コーヒーをふたつ。」 ふたつのカップの上にはふたつぶんの湯気が揺らめいて、その向こう

          すみませんが、コーヒーをふたつ

          年の瀬を駆け抜けろ!

          今年も残すところあと少し!一年あっという間でしたね。始まった!と思ったらもう終わりかよ!みたいな。いやほんとに……特に今年はそういう気持ちが強かったです。坊主じゃないけど駆け抜けた師走でした。 という訳で、2017年のベストトラック。1年のベスト・アルバムを作るとしたら、という気持ちで、今年聴いた音楽の中から印象深かった曲を12選びました。ちなみに順不同。 1 don’t take your time(ロジャー・ニコルズ) 2 don’t take your time(

          年の瀬を駆け抜けろ!

          微妙なストレスを解消する

          雪だ―。 雪が降っています。ひとひらはだんだん小さくなってきたけれど、絶えず止むことなく降り続いています。 冬だね。 * 先日Twitterで「ちょっとしたストレスの芽を放置するとMPがどんどん吸い取られていく」というツイートを見ました。 ここで言うMPは、おそらく気力のこと。なるほどなーと思いました。 ストレスって、大きければ大きいで無理やり解決して見るなり誰かに相談するなりいっそ放り出すなりできるんだけど、ちょっとしたことだと意外と放置されやすい。 「ま、いっか

          微妙なストレスを解消する

          「殺人犯はそこにいる」(20171127-28の読書)

          今年はあんまり本読んでないなあ~と思ったので、最近またちょこちょこ読むようにしている。 根っからの読書家ではないもんで、気を抜くとついほかのことばっかしてしまいがちだ。読むのも遅いし、途中で頓挫する(飽きる)し……。 でももちろん、本を読むのは好きなことのひとつには確実に入るんだけれどね。 ということで、最近読んだ本は「殺人犯はそこにいる」(清水潔/新潮社)。 上に記したようにまず読むのが遅い人間なんだけど、この本は一気に読み切った。夜寝る前に読み始めて、気がついたら日付が

          「殺人犯はそこにいる」(20171127-28の読書)

          メリッサ

          ツタヤに本を売りに行った。買取額アップクーポンがあったから。30%アップは素敵だ。 カウンターで査定をお願いして、店内をぶらぶらして待っていた。前から気になっていた本を探したりしていた。 珍しいことに買取部門は大して混んでいなかったらしく(いつもかなり混んでる)、思ったよりも早く査定終了の呼び出しが鳴った。ちょうど棚の前で、漫画と本を一冊ずつ、買おうかどうか迷っていた時だった。 迷ってるくらいならやめとけよーという気持ちと、どうせ本売ったばっかりなんだしまた買ってもいいじゃ

          イスラエル

          夕食の時間は過ぎて、夜の入り口。 レストランは、これからはじまる夜を存分に楽しもうという人々で賑わっている。 穏やかな笑い声。グラスとグラスが、転がる鈴のように心地よい音を立てて触れ合う。 ウェイターは口元に楽しげな笑みを浮かべて、テーブルの間をゆっくりとすり抜けていく。片手に銀のトレイを淡く光らせながら。 端のほう、目立たないテーブルで、ひとりの男性が軽い食事をとっている。 グラス一つぶんのシャンパン、一皿の料理。 にぎやかな周りに比べ、男性の周りはひそやか

          ツララカモシカ

          朝、かもしかを見た。 牧草畑のひだまりの中に佇んで、じっとしていた。 白に近い灰色で、毛は長くふさふさとしていた。牧草を食んでいるように見えて、その実微動だにしない。 「そういうコンセプトのモニュメントなんです」と言われたら、そこそこ信じたかもしれない。 その位には、かもしかはじっとしていた。 * 調べてみると(Wikipedia)、かもしかはウシ科の偶蹄目で、簡単に言えば「生え変わらないツノがあって蹄が二つに割れている獣」ということになる。ウシとかヒツジとかの仲

          ツララカモシカ

          風鈴

          ガラスの鳴る音で目が覚めた。 薄青の夜の闇に響く澄んだ音の尾が、夢のあわいを撫でて通り過ぎていく。 枕につけた頭の下が、うっすらと汗をかいている。息を吸い込むと、生ぬるい空気が身体の空洞を満たしていった。 今は何時だろうか。 開いているのかどうかよくわからない瞼の下で時計の針を見つけるより先に、窓際でもう一度音が鳴った。 水に投げ込まれた小石のように、高く細い音が凝固した空気に静かに波紋を描く。 風鈴が鳴っている。 江戸硝子の、古風なデザインのものだ。酷暑だった去年の夏に