第17回 『古都』 川端康成著
こんばんは、JUNBUN太郎です!
今夜も「読書はコスパ最高のコスプレです」のお時間がやってきました。本は自分以外の人間になりきる最も安あがりな道具。この番組では、リスナーのみなさんから寄せられる、読書体験ならぬコスプレ体験を、毎週ひとつご紹介していきます。
ではさっそくリスナーからのお便りをご紹介しましょう。
ラジオネーム、京トラベラーさん。
JUNBUN太郎さん、こんばんは。
いつも楽しくラジオ聴いております。
今日は『古都』を取り上げてもらいたくて、お便りしました。
少しまえに太郎さん、リスナーの方におすすめ本を訊かれて、この作品をあげてましたよね。京都が舞台で、四季折々の美しさが堪能できるって。それでわたし、ビビビってきたんです。アマゾンですぐに購入しました。
実はわたし、京都に旅行する計画でいたんです。それが急にキャンセルしなくてはならなくなって……。でも諦めきれず、旅行したくってウズウズ、ウズウズしていたところに、太郎さんの話をきいて、はっとさせられたんです。
そうか、本で旅行すればいいんだ!
わたしは届いた本をさっそく読み始めました。
すると──
季節の移ろう京都を舞台に生き別れの双子姉妹を描いたヒューマンドラマ『古都』をまだ読んでないというリスナーの方は、ぜひ読んでから、続きをお楽しみください!
この本を読んで、わたしは京都をたっぷり楽しめました。
春は平安神宮の桜、夏は祇園祭に盆の大文字、秋は時代祭に北町踊り、冬の北山時雨──京都らしい風物詩を旅人として堪能できただけではありません。観光客でごった返す祇園祭の四条通を、勝手知ったる地元民の足ですいすい歩くことができました。嵯峨の奥にある尼寺を訪ねて湯豆腐をこしらえたり、北山の杉林でおしゃべりに耽ることもできました。つまりは、千重子の体を借りて、京都人として、京を楽しむことができたのです。
太郎さん、この本を教えてくれて、どうもありがとうございます。けれども、太郎さんのおかげで、困ったことにもなりました……。
読書でこれだけ京都を楽しんでしまうと、やはり、京都に実際に行ってみたい気持ちは以前にも増してつのるばかりなのです。ああ、京都に、行きたい……。
祇園祭を、初恋の男の子のしどけない顔を思い出しながら見物してみたい。花の下に寝ていたかわいい赤ん坊をさらってきたと言い張る夫婦の美しい嘘にしみじみ感じ入りながら、夜桜の祇園を散歩してみたい。庭のもみじの古木の幹のくぼみに春になるとまるで双子のようにふたつのスミレの花を咲かせる千重子の家はどのあたりにあったのかと想像を巡らせながら、四条通の辺りを散策してみたい……。
そして、京都に行けば、千重子が苗子と偶然出会ったように、わたしも苗子のような、もうひとりのわたしと出会えるような気がするんです。
いまはその日を夢見て……
もう一度、『古都』を読み返してみます。
京トラベラーさん、どうもありがとう!
ぼくのラジオがきっかけで『古都』を読んでくれただなんてとってもうれしいです。ありがとう!
本って、読むだけで、時空を旅できちゃいますよね。でもそれをするとなおさらに、本当の旅がしたくなる。痛いほどよくわかります! いまはウズウズした思いをめいっぱいつのらせましょう! お腹が減るほどご飯がおいしく感じるように、行きたい気持ちをウズウズさせるほど、行った時の感動は大きいはずです!!
早く京都に旅行できる日が来ますように。そして、もうひとりのあなたと出会えますように。心から祈ってます!
それではまた来週。
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