自動車研究者

中国と日本の自動車・電動化、車載電池を中心に研究。(論考は個人的見解、所属とは無関係)

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中国と日本の自動車・電動化、車載電池を中心に研究。(論考は個人的見解、所属とは無関係)

最近の記事

中国自動車最前線

 中国の新車販売が急減速している。2021年1~6月の販売台数は前年同期比3割近い伸びを確保したものの、5月は3%減、6月は12%減と2カ月連続で前年実績を割り込んだ。2ケタのマイナスは、新型コロナウイルス問題が深刻だった20年3月以来15カ月ぶり。半導体不足が主因で、長期化すれば中国の経済全体に影響が広がる恐れがある。 世界最大である中国の新車市場はこれまで他地域に比べて半導体不足の影響が限定的だった。中国では新型コロナの感染拡大が落ち着いた20年春以降、多くの自動車工場

    • 中国の「三人っ子政策」、日本の自動車メーカーの追い風に

       中国のファミリーにも浸透している6月の第3日曜日の「父の日」。2021年の父の日だった6月20日、トヨタ自動車はミニバン「シエナ」を2022年から広東省広州市で生産すると発表した。背景には、中国における所得の増加や「一人っ子政策」の緩和で、子どもを持つ家族に適したSUV(多目的スポーツ車)やMPV(多目的車)の需要が増加していることがある。  16年から開始した第2子政策が中国におけるSUVの販売拡大を後押ししたことを勘案すれば、第3子政策は中・大型SUVやMPVの販売拡

      • トヨタの中国EVシフト

         トヨタの中国電動化戦略  世界最大の電気自動車(BEV)市場、中国で電動化シフトを加速するトヨタ自動車は、2025年までに新型車9車種を含む15車種を投入し、第1弾としてSUBARUと共同開発した多目的スポーツ車(SUV)のコンセプトカー、bZ4Xを2022年中に発売する予定。EV専用のプラットフォーム、e-TNGAを採用し、両社で開発した共用の部品も量産車で初めて採用する。  また、パナソニックとの合弁企業であるプライムプラネットエナジー&ソリューションズは、中国

        • チャイナ・デファクト戦略を支える「中国CASE革命」主要9大分野での強国戦略に日本はどう対応するか

           「中国製造2025」「中国標準2035」を軸とする強国戦略を打ち出した中国は、2035年に総合国力で先進国に劣後しない水準に達し、近代化国家の形成を目指している。  その戦略の背後にあるシナリオは、巨大な自国需要を生かし、多くのテック企業が参入することにより、日米欧企業が寡占する産業・バリューチェーンを根底から再構築して、チャイナ・デファクトスタンダードを握ることだ。なかでも、Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared&Service(

        中国自動車最前線

          上海モーターショー10大ニュース・後編

          NO.7 不動産大手のEV事業の勝算  不動産開発中国1位の恒大集団(エバーグランデ・グループ)傘下の恒大汽車は高級EVブランド「恒馳(ヘンチ)」シリーズの9車種を一斉に公開した。  恒大は、資金力と社会影響力で次々と経営不振の自動車関連企業の買収を行っており、2025年にはEV生産能力100万台に達する、世界最大のEVメーカーとなる目標を掲げた。資金力だけではなく、国内外の有力企業と築き上げたネットワークや都市開発ノウハウは同社の強みだ。一方、中国のEV需要を勘案すれば、新

          上海モーターショー10大ニュース・後編

          上海モーターショー10大ニュース・中編

          NO.4 ドイツ系が狙う高級EV市場  中国ではテスラ「モデルY」やNIO「ES8」などが起爆剤となったSUVタイプの高級EV市場では、ドイツ高級車御三家が相次いで新車を投入した。BMWはMスポーツのプロトタイプ新型EV、BMW「i4」を発表した。フロントバンパー左右のエアダクト、リアバンパー左右のグレーのインサート部分が大型化されている。    すでに、「e-tron」シリーズのEVを4モデルラインアップするアウディは、「コンセプトShanghai」を初公開し、2021年

          上海モーターショー10大ニュース・中編

          上海モーターショー10大ニュース・前編

          NO.1 ファーウェイはメガサプライヤーへ  2021年4月19日に開幕した第19回上海国際モーターショーは、新型コロナウイルスの感染拡大後に世界で開かれた最大の自動車ショーで、自動車関連1000社超が出展し、電気自動車(EV)を中心に1310台が展示された。10日間で延べ81万人が来場した。  新型コロナの感染防止対策として、入場時の体温検査や健康情報管理アプリ「健康コード」の提示が求められるとともに、会場内でのマスク着用が義務づけられ、スタッフや出展者などには事前のPCR

          上海モーターショー10大ニュース・前編

          アフターコロナの中国 自動車市場再編

          新型コロナウイルス感染拡大の影響で20年1〜6月の中国新車販売は前年同期比16・9%減少した。4月からは販売台数が増加傾向にあるものの、本格的な需要回復には至っていない。 中国の新車販売は17年に2887万台を記録した後、調整期に入り、今年には3年連続でのマイナス成長となる見通しだ。クルマを作れば売れる時代において、地場メーカーは生産能力の拡張や低価格車を素早く市場に投入することを優先してきた。そうした既存の路線が大きな変更を迫られている。 中国政府は18年に大胆な市場開

          アフターコロナの中国 自動車市場再編

          テスラモデル3 中国で圧勝

          テスラの1~6月の中国販売台数は約5万9千台と前年同期の2倍になった。一方、比亜迪(BYD)など地元メーカーの販売は軒並み落ち込み、NEV市場全体46万台のうち、EV乗用車の販売台数は23万5千台と半分に縮小。テスラのシェアは6%から25%に高まった。 中国に現時点でテスラに対抗しうるブランドは無く、みずほ銀行の湯進主任研究員は「今後数年は中国で首位を保つだろう。マスク氏は中国でもファンが多く不買運動などは考えにくい。ただ、米中対立のなんらかの影響を受ける可能性はある」」と

          テスラモデル3 中国で圧勝

          中国EV市場を席捲するテスラの行方

          2020年の中国EV販売台数は2年連続でのマイナス成長になる見通しだ、市場の停滞は政府の販売補助金の減額も大きい。19年半ばに従来の半分程度となり、需要が急減した。 新型コロナ後の経済下支えのため、農村などでEVを普及させる計画を立ち上げ、各メーカーも独自に補助金を支給するなどの取り組みを進める。この結果、7月の新エネ車の販売台数は13カ月ぶりに前年実績を上回った。 中国に現時点でテスラに対抗しうるブランドは無く、今後数年はテスラが中国で首位を保つだろう。テスラの強みは以

          中国EV市場を席捲するテスラの行方

          米国追加制裁を受けたファーウェイ 影響は必至

          米商務省は2020年5月、外国製の半導体でも、米国の製造装置や設計ソフトを使っていればファーウェイに輸出するのを禁じた。これにより、ファーウェイはスマホ半導体製造の多くを頼っていた台湾積体電路製造(TSMC)との取引が難しくなった。TSMCは米国の製造装置を使っているからだ。 ただ、この場合、第三者企業が設計し、TSMCが製造する半導体の使用は禁止できない。 米商務省は8月17日、禁輸対象の定義を拡大し、第三者を使って半導体を調達し続けることを不可能にする。追加制裁には、こ

          米国追加制裁を受けたファーウェイ 影響は必至

          日本 研究論文数世界4位に転落

          文部科学省科学技術・学術政策研究所は、世界各国の科学技術活動の実態を調べた「科学技術指標2020」を公表、2016~18年に発表した自然科学分野の論文数の年平均で中国が米国を抜き、初めて首位に立った。  1年当たりの論文数は中国が30万5,927本で首位、米国の28万1,487本が続いた。3位はドイツの6万7,041本、4位は日本の6万4,874本。一方、引用数が多いなど注目度の高い論文の数では今回もトップは米国。中国は2位、日本は9位だった。  日本は20年前には世界2位だ

          日本 研究論文数世界4位に転落

          日本の街中、自動運転実用化に期待

          米Navigant Research「世界自動運転企業ランキング」では、GM、フォード傘下の子会社Argo AI、ウェイモ、中国の百度、インテルがトップ5を占め、トヨタとホンダはトップ10入りしなかった。米中と比べて、日本には自動運転開発を手掛けるベンチャー企業が少ない。自動運転を含むAI人材も不足している。 1位:Waymo(アメリカ) 2位:Ford(アメリカ) 3位:Cruise(アメリカ) 4位:百度(中国) 5位:Intel・Mobileye(アメリカ) 6位:Ap

          日本の街中、自動運転実用化に期待

          コロナ禍でのトヨタの力強さ

           コロナ禍からの回復局面でトヨタ自動車の力強さが目立っている。4~6月期決算はグループの世界販売台数が約3割減少したものの、1588億円の最終黒字を確保した。日産自動車は2858億円の赤字に沈んだほか、ホンダは808億円の最終赤字と4~6月期では初の最終赤字となった。欧米勢も厳しく、VWは16億700万ユーロ、GMは7億5800万ドルの最終赤字に沈んだ。  今回の決算で、トヨタは2020年の中国の販売目標を176万台(前年比8.6%増)とするとした。世界全体では前年比2

          コロナ禍でのトヨタの力強さ

          EV電池開発、ベンチャー企業にもチャンスあり?

           EVの普及が進むなか、リチウムイオン電池市場は成長を続けている。その傍らでは、一段の容量拡大や安全性の追求、長寿命化などを目指す次世代型の開発が盛り上がってきた。その最右翼は小型化や急速充放電に強い「全固体電池」とみられる。トヨタ自動車やパナソニックなどが開発中だが、京都のスタートアップも次世代型の開発に名乗りをあげている。  京都市のスタートアップ、AC バイオードの電池は直流ではなく交流で充放電する「交流電池」。原理上1回の充電で同じ大きさのリチウムイオン電池より3割

          EV電池開発、ベンチャー企業にもチャンスあり?

          アフターコロナの中国、日系車は好調

           トヨタは中国における1~7月の新車販売台数が前年同期比1.1%増の91万8,700台、今年に入り初めてプラスに転換した。新型コロナウイルス感染拡大からの堅調な市場の回復に支えられ、セダンのカローラやレビン、SUVのRAV4、ワイルドランダーなどが好調。  ホンダの販売台数は、前年同期比13.1%減の74万8,653台。シビックが2万台を超え、アコード、クライダー、SUVのヴェゼル、ブリーズ、CR―V、XR―V」も1万台超の販売実績。日産の販売台数は、前年同期比13.2%減の

          アフターコロナの中国、日系車は好調