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中国自動車最前線

 中国の新車販売が急減速している。2021年1~6月の販売台数は前年同期比3割近い伸びを確保したものの、5月は3%減、6月は12%減と2カ月連続で前年実績を割り込んだ。2ケタのマイナスは、新型コロナウイルス問題が深刻だった20年3月以来15カ月ぶり。半導体不足が主因で、長期化すれば中国の経済全体に影響が広がる恐れがある。

世界最大である中国の新車市場はこれまで他地域に比べて半導体不足の影響が限定的だった。中国では新型コロナの感染拡大が落ち着いた20年春以降、多くの自動車工場が操業を再開し、結果的に海外の工場に比べいち早く半導体を確保したためだ。

販売の回復も進んだため、外資系自動車メーカーの多くも「中国の工場に優先的に供給している」。ただ、半導体不足が想定以上に長引いていることから、足元の生産に影を落とし始めたのだ。

汽車工業協会は21年通年の新エネ車の販売台数について、前年比8割増の240万台前後と過去最高になると予測する。ただ新エネ車の新車販売全体に占める比率はまだ約1割で、足元の落ち込みを補う勢いはない。

一般にEVはガソリン車に比べ半導体の搭載量は5割前後多いとされる。自動車各社はガソリン車よりEVの生産を優先して半導体を融通しているとみられるが、今後EV販売の勢いが鈍る可能性もある。

汽車工業協会は半導体不足の影響について「7~9月期にある程度和らぎ、10~12月期にはさらに緩和する」と予想している。21年通年の新車販売台数は前年比約7%増の2700万台前後という強気の見方を崩していない。中国で自動車産業は関連サービスも含めると国内総生産(GDP)の1割を占めるとされる。新車販売が低迷すれば経済全体に影響が広がるのは避けられず、政府も需要喚起策を打ち出して業界を支援してきた。

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