コロナ禍でのトヨタの力強さ

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 コロナ禍からの回復局面でトヨタ自動車の力強さが目立っている。4~6月期決算はグループの世界販売台数が約3割減少したものの、1588億円の最終黒字を確保した。日産自動車は2858億円の赤字に沈んだほか、ホンダは808億円の最終赤字と4~6月期では初の最終赤字となった。欧米勢も厳しく、VWは16億700万ユーロ、GMは7億5800万ドルの最終赤字に沈んだ。

 今回の決算で、トヨタは2020年の中国の販売目標を176万台(前年比8.6%増)とするとした。世界全体では前年比20%前後の落ち込みが予想される中、中国の傷が浅いのは、新型コロナの第一波の収束時期が早かっただけではない。電気自動車など新エネルギー車に対する補助金政策の延長、ナンバープレートの発給規制緩和など消費喚起策が取られているからだ。

トヨタの躍進については三つの要因を挙げる。

1つは前述した新型車の積極投入だ。2019年5月に新型「カローラ」と「レビン」、10月には新型「RAV4」、2020年2月にはRAV4の姉妹車の「ワイルドランダー」を発売している。新型コロナの感染拡大で2月は工場が休止し、大部分の販売店が休業を余儀なくされたが、3月末には販売店がほぼ再開し、4月から販売は4カ月連続で前年を上回る。地方でのモーターショーやオンラインイベントが顧客の来店につながっている。

2つ目が中国でのハイブリッド車(HV)人気の高まりだ。トヨタは中国のHV市場で75%のシェアを持つ。伸び盛りのHV市場で品ぞろえが一番豊富なだけに、他社に比べて競争力が高い。 中国のHV市場は2019年で約35万台とまだ小さいが、中国政府は2021年からHVを「低燃費車」と位置付けて優遇する政策を導入する予定で、HVに強みのあるトヨタには追い風となる。

3つ目が競合他社からの顧客獲得。米中摩擦の影響でアメリカのGMやフォードは台数を減らしているほか、フランスのグループPSAは販売不振から中国の長安汽車との合弁解消を決めるなど、他ブランドを購入しようとしていた人たちの受け皿になっている。

トヨタグループの2019年の世界シェアは11.7%でVWに次ぐ2位。コロナ禍でも自動運転や電動化などの開発競争は止まることはない。コロナ禍を跳ね返し、中国市場で一段とシェアを高められるは、トヨタにとって重要な意味を持つ。

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