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詩というにはあまりに凸凹
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記事一覧

【詩】梅雨は前座にしては長すぎる

鏡に映るその人間は本当に自分?鏡でしか自分の姿を見ることができないだなんてまったく意地悪な世界だね。それが本当に自分かなんて分からないのに。水たまりに映る人間が本当の自分なら、私は喜んで傘を捨てて、その穴だらけの自分にぬるま湯を掛けてあげるよ。貴方の瞳に映るのが本当の自分なら、許可も取らずに貴方の右目と私の左目を取っ替えるよ。そうすれば、鏡を見たら自分を見れるし、鏡がなければ、2人が会う口実も作れ

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【詩】完全犯罪

本なんて借りなきゃよかった。ページを捲るたびに、何だか君の香りがするみたいで内容が入ってこない。まるで香水を振りかけた君が私の前を何度も往復しているようで腹が立つ。動かずに隣に居てくれたらどれだけ良かったか。お代理様とお雛様みたいに2人ずっと隣にいようよ。箱の中でおやすみをしてもずっと隣にいようよ。そしたらいつの間にかさ、血まで繋がって知らない間に1人になってたりして。なんて馬鹿げたことを考えるく

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【詩】イヤホン外し、愛逢月へいざ参らん

耳をすませば聞こえる流行の音楽、ビジネスマンによる電話越しの会話、建物の間を走る風の音、賑やかな雑音がまるでオーケストラみたいに奏でる小さな世界のBGM。交差点にて交差する人と人。まるで絡まったイヤホンみたい。絡まったイヤホンを解けば今度はDNAの二重螺旋が整列している。それを解けば染色体が顔を出す。25コ目の染色体にはどんな願いを詰め込もうか。来月に織姫様と彦星様に向けて発車する独善的欲望列車に

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【詩】眼には眼を貴方の世界に花束を

【詩】眼には眼を貴方の世界に花束を

この眼が2つだけで良かった。心の裏側まで見えてしまったらきっとこんな眼無い方が良いなんて思っちゃう。進化しているのは人間よりも技術で、カメラなんてそれこそ進化の代名詞みたい。全然ブレたりしなくて、僕の心臓もこれくらい強かったらなんて思ったりもして。画素数も信じられないくらい増えてて、僕のできる気遣いもこれくらい増やせたらなんて思ったりして。だけどどんなカメラとも比べられないくらい世界をそのまんま映

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【詩】端っこ暮らし

端っこで泣いている君に気付いてあげられる人間になりたい。

交差点 青信号なのに進まない 後ろから聞こえる赤いサイレンの音 立ち止まり目と耳をサイレンの方に向ける群衆と四角い鉄の塊達 
本当に向けるべきは、そうなる前の君だとどこかではわかっているはず。

駅に行けば簡単に酔えるくらい人は沢山いるのに、独りの君には気付けない。この丸い地球は君が端っこで泣かないためにできているものだと思ってたのに。ど

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【詩】暑すぎて溶けた頭でとち狂い自由詩

【詩】暑すぎて溶けた頭でとち狂い自由詩

蜃気楼塗れのフライパンの上で踊るポップコーン。「暑い暑い」と言いながら飛び跳ねる様はまるでポップコーン。

肌を灰にし骨を溶かす、この熱をジップロックに一杯に詰めて、冬に開けたなら、その熱で線香花火に火を付けよう。
1つの線香花火を2人で持って支えよう。
そのまま歳を重ねて、手を重ねて、地下鉄の中。
転がってしまわないようにキャリーケースの取手を握る奥様。1人の力で足りるだろうに一緒に握っている旦

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【詩】片重い青春譚

指一本で簡単ポチッと。
欲しいキャラクターは当たった?そう、良かった。
欲しいアイテムは手に入った?そう、良かった。

なんでも指一本で簡単に手に入る。
欲しい服があればポチッと。
ひとりごとや思い出もポチッと。
月の所有権までポチッと。
いつの日か生きるか死ぬかもポチッと。

芸能人や有名ブランドを退けて、毎回先頭に出てくる貴方のストーリー。
そんなの観ずには居られない。居ても立っても居られない

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【詩】泥水で口を濯ぐ

そんなにフワフワして何処へ行くの?
君が乗る電車はそっちじゃないのに。

あの日の言葉が霞んでいく。脳裏の君がボヤけてる。
万華鏡のように増えては消えて、消えては増えて、それでも綺麗だと感じる自分を消してしまいたい。

残高不足のSuicaが何度も叫ぶ。
苦し紛れに向けた刃先はどうしてだろうか私に向いている。

駅のアナウンスが語りかける。
「どうして貴方が謝っているの?」

ハッとして、夏。

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