【詩】梅雨は前座にしては長すぎる
鏡に映るその人間は本当に自分?鏡でしか自分の姿を見ることができないだなんてまったく意地悪な世界だね。それが本当に自分かなんて分からないのに。水たまりに映る人間が本当の自分なら、私は喜んで傘を捨てて、その穴だらけの自分にぬるま湯を掛けてあげるよ。貴方の瞳に映るのが本当の自分なら、許可も取らずに貴方の右目と私の左目を取っ替えるよ。そうすれば、鏡を見たら自分を見れるし、鏡がなければ、2人が会う口実も作れちゃうもんね。
一体いつから自分がしょうもないだなんて思っちゃったんだろうね。間違いなく私の、貴方の心臓はこの世に1つしかないのに。産声よりも先に、母の胎の中で自分の存在を証明していたのに。そんな自分の何がしょうもないんだろう。どうすれば認めてあげられるんだろう。総理大臣になったら?国が私を巡って戦争を始めたら?この星の自転が私中心になったら?季節が私に合わせて機嫌を変えたら?どうせ更に要求するのだから自分を認めることなんて到底できないんだろうね。
でも私はこんなものを書いている私が結構好きだよ。
ああ、『夏夜のマジック』が世界にありふれた、キラキラした恋愛をかき氷のシロップみたいに哀愁色で染めてくれる。
祭囃子が聴こえる。綿飴の甘ったるい匂いがする。空から火薬の花弁が降ってくる。
夏がすぐそこで胡座をかいている。
でもね、梅雨は少しだけ、大嫌い。
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