【詩】完全犯罪

本なんて借りなきゃよかった。ページを捲るたびに、何だか君の香りがするみたいで内容が入ってこない。まるで香水を振りかけた君が私の前を何度も往復しているようで腹が立つ。動かずに隣に居てくれたらどれだけ良かったか。お代理様とお雛様みたいに2人ずっと隣にいようよ。箱の中でおやすみをしてもずっと隣にいようよ。そしたらいつの間にかさ、血まで繋がって知らない間に1人になってたりして。なんて馬鹿げたことを考えるくらいに私は君色に染まっていたんだね。
私から奪った心臓を君は今も持っているの?私はもう私の心臓の形を覚えていないよ。だから、ねえ、もしも今も持っているのなら早く返してよ。本は返すからさ、返してよ。

狡いじゃない。ずっと奪ったままだなんて。持ったままいなくなるだなんて、狡いじゃない。私が行けないところに行くなんて、何も言わずにいなくなるなんて、酷いじゃない。
右手の薬指に嵌った指環を、左手の薬指に嵌めると言ったのは君でしょう?


もう、いつまで黙っているのよ。何でもいいから、早く、喋りなさいよ。

お願いだから、もう一度、私の隣に来てよ。

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