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相手からの好意は声でわかる

魅力的な異性の前では声に変化があるという趣旨の論文を読んだのでメモ(1)。

私たちは声の高さや装飾によって,連想される性格特性があり,相手の印象の形成が変化します。具体的な例を挙げると以下のようなものがあります。

・声が低い男性は声が高い男性よりもテストステロンが高く(2),より力強く支配的であると思われる(3
・声が高い女性はより女性的で若く,より魅力的であると周りから見られ(45),声が低い女性は性的に魅力的であると思われる(6
・丸い顔は尖った細長い顔よりも魅力的に見える(7

このように声の高さによって相手に与える印象には違いがあります。この印象形成の違いは成長すると声が低くなる傾向があることから,低い声は大人が持つ特性を帯び,高い声は子どもが持つ特性を帯びます。

今回紹介する論文は魅力的な異性を目の前にすると,声の高さが変わる傾向があることを教えてくれます。

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2018年にサセックス大学ブリンストン校のカタジーナ・ピサンスキーらが魅力的な異性を前にすると声に変化はあるのかについて調べるために実験を行いました。

対象となったのは大学生の男女30名(女性15名)でした。

実験参加者の男女には地元のカフェに集まって,約6分間の会話をしてもらいました。この会話は録音されています。

そして全員が会話を終えた後に,会話をした異性の参加者に対して以下の項目に従って評価をしてもらいました。

・恋人として望ましいかどうか
・魅力的かどうか
・性格が合うかどうか

実験参加者が気に入った相手との会話の時に声がどう変わっていたのかを解析しました。

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実験の結果,男性と女性共に魅力的な異性を目の前にしたときは声が低くなった。男性に関しては,相手からも好意を感じたときにさらに声が低くなる傾向にあった。

女性については低い声もあれば高い声でも会話しており,特に相手に対して魅力を感じた場合には声が低くなった。

つまり,男性は恋人として望ましいと感じた相手には声が低くなり,女性は魅力の感じた相手に対しては声の高さに変化はなかったが特に興味を持った相手と話した時には声が高くなった。

私たちは相手の考えていることを推測するときに外見的な特徴をてがかりにすることが多いですが,推測した性格や行動が見当違いになる場合があります(8)。しかし表情の変化などの視覚的な情報を頼りにするよりも,声や話している内容に注目した方が相手の感情を正確に推測することが出来ます(9)。

これらの結果から考えると,声などの聴覚的な情報の方が相手の心理状態を正しく見積もることが出来る指標として参考にできると言えるでしょう。

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(1)Pisanski, K., Oleszkiewicz, A., Plachetka, J., Gmiterek, M., & Reby, D. (2018). Voice pitch modulation in human mate choice. Proceedings. Biological sciences, 285(1893), 20181634.

(2)Apicella, C. L., Feinberg, D. R., & Marlowe, F. W. (2007). Voice pitch predicts reproductive success in male hunter-gatherers. Biology letters, 3(6), 682–684.

(3)Pisanski, K., & Bryant, G. A. (2019). The evolution of voice perception. The oxford handbook of voice studies, 269-300.

(4)Pisanski, K., & Rendall, D. (2011). The prioritization of voice fundamental frequency or formants in listeners’ assessments of speaker size, masculinity, and attractiveness. The Journal of the Acoustical Society of America, 129(4), 2201-2212.

(5)Feinberg, D. R., DeBruine, L. M., Jones, B. C., & Perrett, D. I. (2008). The role of femininity and averageness of voice pitch in aesthetic judgments of women's voices. Perception, 37(4), 615-623.

(6)Hughes, S. M., Farley, S. D., & Rhodes, B. C. (2010). Vocal and physiological changes in response to the physical attractiveness of conversational partners. Journal of Nonverbal Behavior, 34(3), 155-167.

(7)Zebrowitz, L.A. (1997). Reading faces: Window to the soul? Boulder, CO: Westview Press.

(8)Naumann, L. P., Vazire, S., Rentfrow, P. J., & Gosling, S. D. (2009). Personality judgments based on physical appearance. Personality & social psychology bulletin, 35(12), 1661–1671.

(9)Kraus M. W. (2017). Voiceonly communication enhances empathic accuracy. The American psychologist, 72(7), 644–654.

■第一印象の科学――なぜヒトは顔に惑わされてしまうのか?/アレクサンダー・トドロフ (著), 作田 由衣子 (監修), 中里 京子 (翻訳)

■美しさと魅力の心理/三浦佳世 (著), 河原純一郎 (著)

■美人の正体 外見的魅力をめぐる心理学/越智 啓太  (著)

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