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小説

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こちら時空管理局。何らかの影響によりこのアカウント内に小説が発生してしまった。パルス誘導システムを使用して、マガジンに閉じ込めておいた。もし興味があったら見ておいてくれ。以上
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#掌編小説

恥ずかしいとき

恥ずかしいとき

おれのコンビニの向かいに、新しくコンビニが建った。おれの店と瓜二つだ。なのに挨拶の一つもない。腹が立ったおれは、向かいのコンビニに怒鳴り込んだ。
「おい、いい度胸しているじゃないか。店長を出せ」
しかし、店内には誰もいない。腹いせに店先に小便でも撒いてやろうと、下半身を露出させていると、向かいの店先ではすでに下半身を露出しているおれがいた。
おれがびっくりしてちびりそうになると、向かいのおれは大量

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変化あり

変化あり

 有名なSNSのアイコンが青い鳥からXに変わったらしい。一度もSNSをつかったことがないおれには全く関係がないのでその日はもう寝ることにした。
 翌朝は気持ちのいい朝だった。
 家の前にある電線にとまった鳥が、チュンチュンと鳴いている。もしやこの鳥がXになっているのでは、と思ったかもしれないがそんなことはない。鳥は気が済むまでチュンチュン鳴くとどこかに飛んでった。
 しかしあまりにも気持ちのいい朝

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掌編小説|シャンプー

掌編小説|シャンプー

 ガラスケースの中には液体が並々と注がれている。その中心に、数十本のコードとセンサーらしき針が刺さっている脳が浮かんでいた。束ねたコードを辿っていくと大きなモニターがあり、そこには、脳が今考えているイメージと言葉がずらずらと映し出されている。こちらから話しかけることはできない。いったいどんなシャンプーなのか私は気になった。

大超短編小説|ファッションセンス

大超短編小説|ファッションセンス

 ふと、窓が気になった。
 手のひらでカーテンをどけると、暗闇に顔が浮かんでいる。随分と使い込まれたそれは、まぎれもない私の顔だった。その後ろにはガラスに反射した部屋が見える。時計は午前二時過ぎを指して、秒針が逆に動き続けていた。
 丑三つ時か、なんてことを考えていると死んだはずの母親が壁から現れた。さもそこに入り口があるかのように当たり前に入ってきた母親は、生前お気に入りだったヒョウ柄のセーター

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短編小説|しっそうした女

短編小説|しっそうした女

探偵というなんでも屋の仕事をしている俺の元に依頼が入った。女を捕まえてくれ、というものだった。おかしな頼み方だなと思ったが、金になるなら俺はやる。詳しく事情を聞いてみることにした。

しかし、男は妙に落ち着かない様子で今にも事務所を飛び出しそうな勢いである。いったい何があったんですか、と聞いても
「早く彼女を捕まえてくれ。早くしないと行ってしまう」
というばかりである。

ははあ、なるほどな。どう

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短編小説|スマホが鳴った

短編小説|スマホが鳴った

スマホが鳴った。

「今何してる?」
俺は、またか、と独り言を言った。
「今からメシ」
と簡単に返信してスマホを置こうとした、その瞬間すぐに返信が来た。
「何食べるの?」
俺はふたたびスマホを持ち上げて
「おにぎり」
とだけ打ちこんで送った。

今度こそスマホを置き、おにぎりのパッケージを開封する。ガサガサという音だけがする。この場所は実に静かである。集中するにはもってこいの場所だ。

スマホが鳴

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