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忘れない 忘れたくない (雑記)

今年も、この時期が巡ってきた。
すると、どうしても思い出してしまう。
東日本大震災にまつわる、様々な出来事を。
特に心に染みついて離れないのは、行方不明の妻を探し続ける男性の存在だ。
銀行員の妻は勤務中に津波に流され、現在も行方不明だ。(この新聞記事を読んだのは2年くらい前だから、もしかしたら見つかった可能性もありますね)

男性はスキューバダイビングの資格を取り、毎日海に潜り妻を探した。
私はその行為に、男性の妻への愛情をひしひしと感じた。
毎日、今日こそはという思いを抱えて海に潜り、
また見つけられなかった、と絶望しながら海から上がる。毎日、希望と絶望の間を行ったり来たりするその胸中を想像すると、こちらまで苦しくなる。
ただ、じっとして妻が見つかるのを待つより、自ら探しに行くという行動が喪失感を紛らわせているのかもしれない。
もう、妻は見つかったのだろうか。


もう一人、気になる男性がいる。ある動画で聴いた話しだ。家族全員を津波で失った男性は、避難所でボランティア活動をしていた。
毎日、笑顔で忙しく動き回っていた。
ある日、男性はインタビューを受けた。
自らも被災者なのに、どうしてそんなに頑張れるんですか? と。
少し記憶が曖昧だか、男性は確かこのようなことを言っていたと思う。

何もしないでいると、家族全員を失った喪失感に押しつぶされそうになる。ボランティアをしていると気が紛れるし、被災者の方にも感謝されるから、頑張っている。避難所が閉鎖になったら、その後
自分は命を断つつもりでいる、と……。

生きる希望を失った男性の心情が、痛いくらいに伝わってきた。
自分の身に置き変えて想像してみた。恐らく、私も命を投げ出したくなるかもしれない。
それでも生きていて下さい、と伝えたとしても
男性の気持ちは変わらないだろう。寧ろ、反感を持たれるかもしれない。
この気持ちが分かるのか?、と。

その後男性はどうしたのか、非情に気になる。
でも、それを知る術はない。

もう一つ、ネットで見たニュースがある。
津波が迫りくる中、自宅の2階で老夫婦が抱き合っていた。まもなく家屋が津波に飲まれるのを覚悟した男性は、妻にこう言った。

「もう、ダメだな。今まで、ありがとうな」
「うん、うん、お父さん、ありがとう」
その後、濁流が家屋を突き上げた。
男性は一時気を失い、その後水中から顔を出すと、
妻の姿はなかった。
何とも言えぬ不条理に、私は目の奥が熱くなった。心にナイフを突き立てられたような衝撃を受けた。

朝、おはようと言い合った家族が、午後には変わり果てた姿となったり行方不明になることを、いったい誰が想像できただろう?

たくさんの不条理を、私は忘れたくない。

この世から旅立って行った、数多の魂に
私は祈りを捧げる。










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