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松下幸之助と『経営の技法』#37

 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
 テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。

1.3/23の金言
 頭にどんなことが入ってきても、詰まらせないだけの、すきまを空けておく。

2.3/23の概要
 松下幸之助氏は、以下のように話しています。
 技術者や学者は、一つに集中するだけでなく、海綿のように広くものを吸収する柔軟な頭も必要。
 人から聞いたいい話で感銘し、頭がいっぱいに詰まり、他のことが入らなくなってはいけない。隙間を空けておき、次々と海綿のように吸収する頭でなければ、頑固オヤジになってしまう。
 むしろ、技術者ほどものを吸収し、すべてのものを取り入れることにやぶさかでない一面が、あってもいい。

3.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 ここでは、技術者や学者を引き合いに出していますが、それは、これら専門家はその専門性ゆえに硬直化しかねない特徴を懸念してのことであり、同じことは、他の従業員や経営者個人、さらに会社組織それ自体についても、その程度の違いはあるかもしれませんが、同様に心にとどめておくべき心配事です。
 次に、それを克服する方法として、集中して取り組んでいる課題がある場合にも、アンテナを張って情報収集に努めなければならない、という趣旨の話がされています。
 これには、従業員個人の意識の問題もありますが、組織の問題もあります。
 すなわち、組織の場合、一方で従業員一人一人の意識の問題、という面もあれば、新しい情報などの収集を専門的に行うべき部門や担当者を設置する、という面もあります。後者に力を入れ過ぎると、前者が疎かになりかねないので、いかに両者を機能させるのか、という制度設計と運用が重要になってきます。
 ちなみに、この「新しい情報」の収集力は、経営とリスク管理の両方にとって重要な問題となることは、特に説明するまでもないでしょう。

4.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 投資家と経営者の関係として見れば、投資家としては、組織全体が主体的に情報収集に努めるような体制を作り上げることができるような、リーダーシップのある経営者を選ぶことと、株主総会や、株主の代理人たるべき社外取締役などを通して経営者に働きかけることが重要となります。

5.おわりに
 頭の隙間をつくり出す方法は、頭の中の未整理のノウハウを文章にして吐き出すことです。例えば、仕事のノウハウは、無意識の知識だと思いがちですが、文章にして可視化すると、頭の中がすっきりと整理されます。頭の中に、いろいろな事態を想定した様々なパターンが入っているのですが、それを整理して吐き出すことは、細かい様々なスケジュールやtodoを手帳やアプリに書きとどめることと同じです。頭の中にある限り、あれはどうなってたっけ、これはいつだっけ、など、常に頭の中のデータを振り返り、アップデートしなければならなくなりますが、それが不要になるのです。
 どう思いますか?


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