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松下幸之助と『経営の技法』#166

7/30 人柄と魅力

~人を引き付ける魅力は、努力によって養い高めることもできる。~

 指導者に「この人のためなら……」と感じさせるような魅力があれば、期せずして人が集まり、またそのもとで懸命に働くということにもなろう。そういうものをもたずして、よき指導者となることはなかなか難しいと思う。
 もっともそうはいっても、人柄といったものはある程度先天的な面もあって、誰もが身につけることは難しいかもしれない。しかし、人情の機微に通じるとか、人を大事にするとかいったことも、努力次第で1つの魅力となろう。また、自分自身でなく、自分の会社、自分の団体というものに何らかの魅力をもたすことでもいいと思う。
 いすれにしても指導者は、そうした“引きつける魅力”の大切さを知り、そういうものを養い高めていくことが望ましいと思う。
(出展:『運命を生かす』~[改訂新版]松下幸之助 成功の金言365~/松下幸之助[著]/PHP研究所[編刊]/2018年9月)

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 まず、松下幸之助氏の話を整理しましょう。①経営者に、「引きつける魅力」があれば、よき指導者として、人を集め、束ねられる。②人柄には先天的なものがある。③人情の機微、人を大事に、などは努力次第で「引きつける魅力」になる。④経営者個人だけでなく、会社に「引きつける魅力」があってもよい。⑤経営者は、「引きつける魅力」の大切さを知り、養い高めなければならない。
 組織自体の魅力として見れば、このうち③④⑤が関係してきます。組織自体が魅力的で、人を集めることができれば、優秀な人材を集めることも期待できます。
 さらに、管理職者のリーダーシップの問題と見ることができます。それぞれが任されているチームについて、経営者と同じである、と考えられますので、管理職者に「引きつける魅力」があれば、現場の各チームをまとめ、リードしてくれることが期待できます。特に、従業員の自主性や多様性を重視するモデルの場合、各チームの自主性や活力を高めつつ、同時に一体性を確保し、チームの力を発揮させるのは、管理職者の力量によるところが大きくなります。各チームのリーダーには、①②「引きつける魅力」のある者を選び、③⑤リーダーとしての能力、特にメンバーの意欲を高めたり、リードしたりするうえで重要な、人情の機微や人を大事にすることについては、その能力を高めるように努力させることが重要となってきます。
 このように、経営者個人の問題としてではなく、会社組織の問題として見ると、違った問題意識が見えてくるのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 投資家である株主と経営者の関係で見た場合、「引きつける魅力」が経営者の資質ということになります。②先天的なものもありながら、特に、②会社を経営し、社員をリードするうえで重要な人事に関しては、努力次第で成長させることができる、と説いています。
 もちろん、社内の問題だけでなく、会社の代表者として外に対して魅力を発信しなければなりません。経営者に魅力がある→会社に魅力がある→商品やサービスに魅力がある、という印象付けも、商売のためには非常に重要だからです。 

3.おわりに
 ここでは、「引きつける魅力」自体の内容よりも、「引きつける魅力」が問題にされるべき場面を検討しました。
 では、何が「引きつける魅力」か、というとそれこそ、一律に定義できるものではなく、さらに会社自身の社風や業界の特徴などによっても異なってくるでしょう。けれども、ここでの「引きつける」魅力は、その中でも特に対内的には従業員をリードする能力であり、対外的には会社への魅力や信頼を獲得する能力です。
 悪魔的で破壊的な人間の持つ怪しい魅力もあるでしょうが、ここでの「引きつける魅力」は、会社経営のためのツールとしての魅力です。経営者のミッションである「適切に儲ける」ために役立つ魅力である、ということを忘れないようにしましょう。
 どう思いますか?

※ 『経営の技法』の観点から、一日一言、日めくりカレンダーのように松下幸之助氏の言葉を読み解きながら、『法と経営学』を学びます。
 冒頭の松下幸之助氏の言葉の引用は、①『運命を生かす』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に了解いただきました。


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