田中香介

千葉県市原市在住、サラリーマン、本は安上がりなレジャー(短編好き)、煙草は吸わない、お…

田中香介

千葉県市原市在住、サラリーマン、本は安上がりなレジャー(短編好き)、煙草は吸わない、お酒は少々、ハワイは13、4回行ってます(冬の時期) 最近しっとりブレッド好き。牛乳寒好き。

最近の記事

Forked road 40/41

すいません、 次、最終回 なんですが、 ちょっと掲載まで時間を下さい。 別な ラストシーンを考えています。 すいません・・・、

    • Forked road 40/41

      来週には桜の開花宣言が聞かれるとテレビで言い始めた頃の17:00、大松東京渋谷店で従業員一同立ち並び開店前ミィーティングが行われていた。 チーフの女性が中央に立ち今日の予定を確認し客の誘導の申し送りをしていた。 ひと通り段取りが進んだところで中央の女性が声を張った。 「それでは本日もよろしくお願いします。」 「ちょっと、待ってくれ。」 そばに立っていた専務松永大作が皆を遮った。 一同の視線が集まった。 「個人的なことで恐縮だが皆に発表したいことがある。」 ざわついた。 「店長

      • Forked road 39/41

        胃潰瘍なのか? 胃炎か? ムカつきもある。 立ち眩みや動悸もあるし指先に力が入らない時もある。 もしや? と思いクリニックを受診した。 一週間後、検査があった。 検査着からスーツに着替え長椅子に座っていた。 「高木さん、2番へお入り下さい。」 処置室に通された。 結果は十二指腸潰瘍。 仕事の量を減らした方がいいと言われた。 癌じゃないならそれでいい。 離婚、転居、一人暮らし、次々と起きた変化にストレスが溜まったのかも知れない。 大学時代の知り合いのツテで1年每の契約更新

        • Forked road 38/41

          金沢の格式ある料亭大松が東京渋谷に進出し1年が経過した。 当初、レストラン形式を採っていたが他店との区別化が無くたとえ大松と言えども客足が途絶え始めていた。 そこで大松東京店店長松本結花の提案でコの字型カウンターを二つ構えた店に改装した。 下町の定食屋だとの批判もあったが専務松永大作のバックアップを得て一流料亭の雰囲気はそのままに保つこと品質を下げないことを条件に取締役たちを説得した。 社内方針をまとめたところで松本結花の提案で銀行の融資担当者を招き新規事業展開の説明と資金調

        Forked road 40/41

          Forked road 37/41

          「ポン」と電子音が鳴りエレベーターが来た。 扉が開いた。 誰も乗っていなかった。 乗り込もうとする結花。 次の瞬間、ラグビーのタックルのように結花は通路に押し倒され尻もちをつき頭も打った。 「イタッ、」 専務板長松永大作が結花の上に馬乗りになっていた。 「何ですか!」 無言のまま松永大作は結花の腕を押さえ付け血走った目で睨み付けていた。 殺される? 大作の顔が結花の顔に近付いて来た。 「ちょっと、や、止めて下さい、止めてって、 いや~!」 松永大作がキスをして来た。 キスと言

          Forked road 37/41

          Forked road 36/41

          金沢の老舗高級料亭旅館「大松」の東京進出第一号店渋谷店が盛大にオープンした。 マスコミでも取り上げられた美人過ぎる板前「まつゆい」(松本結花)の名はすでに東京でも有名でむしろ「まつゆいと会える東京の店」として料亭業界はもちろん、マスコミ各社からも花輪が店先に並びきれないくらい届いていた。 社長の思惑も「まつゆい」人気を利用し利益に結び付けたいと考え裏方に徹する板前ではなく料理を監修し店全体を運営する店長として結花に加賀友禅をまとわせ最前線に立たせ客の接待役

          Forked road 36/41

          Forked road 35/41

          日々の生活に身を委ねて四季が過ぎて行った。 師走のある日、夕飯が終わってリビングでテレビを観ていると妻玲子がテレビの前に立った。 「ちょっと話しがあるんだけど、」 高木はリモコンでテレビを消した。 「なに?」 「ねぇ、私たち別れない?」 次の休み、デパートに買い物行くんだけど付き合って欲しいくらいの軽い話しぶりだった。 テレビが消されると静かな家になった。 突然の別れ話を切り出された高木だがさほど動揺しなかった。 「理由は?」 玲子は栗色の

          Forked road 35/41

          Forked road 34/41

          向かい側のホームに立つ結花は目を伏せていた。 高木が知っている結花ならチラチラこちらを見たり 笑顔で手を振ったりしただろうが8年半経てば結花も変わる、 また変わって当然だと高木は思った。 ホームに入線してくる電車のアナウンスが流れる。 別の階段も使えたはずだが目の前に立ってくれている。 それが結花の優しさなのか? 昔、世話になったせめてもの礼なのか? 高木は結花の立ち姿を眺めていた。 これで完全に未練も絶ち切れる、 だろうか? また苦しむか? やがてほとんど同時

          Forked road 34/41

          Forked road 33/41

          「私、プロポーズされました。」 高木の顔が歩く結花に向けられた。 「料亭の人?」 「ええ、跡取りの板前さんです、」 「そ~か、」 「返事はしてません、」 「なんで?」 「なんで?」 結花が立ち止まった。 「私が洋ちゃんのこと以外に悩むことなんてあると思う?」 22:00 街角のデジタルが変わった。 静かな池袋の街 「迷惑だよ。」 高木は小さな声で言った。 「迷惑?」 「ああ、年は親子ほど違うし、しかも妻子持ちだ、仕事も抱えてる、君に関わってる場合じゃない、今日は懐かしさから

          Forked road 33/41

          Forked road 32/41

          「お久しぶりです。」 間があった。 「久しぶり。」 「忘れたかと思った。」 結花の緊張の表情が笑顔に変わった。 「忘れるはずないさ、思い出さないようにしてただけだ。」 「思い出さないように?」 「思い出せば会いに行ってしまうからな。」 結花の大きな瞳が見る見るうちに赤くなり涙が溜まっていく。そしてついには大粒の涙がひとつ、ふたつ、三つ、四つ五つと落ち出した。 「なら、会いに来ればいいのに、どんだけ会いたかったと思ってるの。」声が震えていた。 「こっちもだ。」 高木はハンカチを

          Forked road 32/41

          Forked road 31/41

          高木はしばらく植え込みを見つめていたが寒くなりコートの衿元のスカーフを直して駅へ戻るため体をひる返した。 う? なんだ? 誰かが見ていた! 誰だ? しかも見たことのある目だ! まさか? 振り返っていいものか? 悪いものか? 1秒と言う短い時間の中でいろいろと考えてはみたが結局、蜘蛛の巣を振り払う様に振り返った。 結花だ! 見間違う訳がない! 7、8m先の雑踏の中に立って真っ直ぐこちらを見ていた。 あのグラビアと同じ眼差しだった。 元々モデル級の美人だし 24の女盛りだ。 その

          Forked road 31/41

          Forked road 30/41

          結花がいなくなって8年半、また冬が来た。 最初のうち LINEが来たが結花のスマホと自分のスマホ 合わせて2台とも解約した。 なるべく池袋には行かないようにしていた。 最初の半年は寝ても覚めても結花のことばかり考えていた。 仕事が手に付かなかった。 一度、どうしようもなくなり新幹線に飛び乗り金沢へ向かってしまった。 遠巻きに料亭旅館の様子を伺ったがとうとう結花の姿を見ることは出来なかった。 辞めてしまったのか?体調を崩したのか? いろいろ思いを巡らせたが突然、自分の愚かさに身

          Forked road 30/41

          Forked road 29/41

          「結花、ここがフォークドロードだ。」 「フォークドロード?」 「そう、フォークの形、思い浮かべてごらん。」 「フォーク? 食べる時のフォーク?」 「ああ、」 「ええ、わかんないよ、」 「1本の持つとこがあってその先がいくつもに分かれているだろ?」 「うん、」 「今、結花の人生が正にそれだ、どの道を選ぶか?その分かれ道に立たされているんだ。」 「あ、フォークの先の手前ね。」 「そう、どの道を選ぶか? それによっていい方へ進むか? 悪い方へ進むれるか? 決まって来る、せっかく生

          Forked road 29/41

          Forked road 28/41

          結花が高木に向き直り話し始めた。 「あれからね、一人で金沢行ったの、」 「え? 金沢へ・・・、そうか、」 高木は固まった。 結花にそんな実行力があったのか。 しばらく強く降る雨音だけになった。 いや、あるかも知れない、一人で路上生活して来たんだ、案外しっかりしている部分があるのかも知れない。 板前修行の件だと思った。 「なかなか出来る事じゃない、その行動力、大したもんだよ、自分で話、付けたの?」 「うん、親の承諾書がいるって言われてど~しようと思ったんだけどこれをクリアしな

          Forked road 28/41

          Forked road 27/41

          8月初旬、金曜日の午後6時。 街中がバスルームのような湿気。 空は黒に近いグレー。 時より遠い彼方で空が光る。 いつものJR新宿駅南口大階段下。掲示板の気温はまだ35℃ある。 ノーネクタイのシャツにチノパン姿の高木が扇子で扇ぎながら歩いて来た。 先に来て待っていた結花は麻のジャンパースカートに白いシャツ、白いイヤリングが若々しさを引き立てている。 よくスカウトされると言っていたがその立ち姿はまさに女優。 彼女ならスカウトがしつこいのも無理はないと高木は思った。 高木が軽く片手

          Forked road 27/41

          Forked road 26/41

          美味しかったか? と尋ねてみたが「凄く」とだけ返って来た。 素っ気ない。 高木の胸の中は前評判の高い本を読んでみたがまったく面白くなかった時の気持ちに似ていた。 まさに宛が外れた気分。気に入らなかったのか? ま、好みの問題か?と思うようにした。 金沢一泊から東京に戻った。 日常の職場である法律事務所で代表らと数人と打ち合わせをしていた。 司法試験勉強中の事務員の青年がある企業の海外進出に伴う企業内語学教育制度案件について説明していた。 「私が今の時代、英語教育は海外と取引があ

          Forked road 26/41