Forked road 31/41

高木はしばらく植え込みを見つめていたが寒くなりコートの衿元のスカーフを直して駅へ戻るため体をひる返した。
う?
なんだ?
誰かが見ていた! 誰だ?
しかも見たことのある目だ!
まさか?
振り返っていいものか? 悪いものか?
1秒と言う短い時間の中でいろいろと考えてはみたが結局、蜘蛛の巣を振り払う様に振り返った。
結花だ!
見間違う訳がない!
7、8m先の雑踏の中に立って真っ直ぐこちらを見ていた。
あのグラビアと同じ眼差しだった。
元々モデル級の美人だし 24の女盛りだ。
その美しさは確実に一般人とは違うレベルだった。
どんな表情をすればいいのか? 
結花のためとは言え一方的に連絡を断ってしまったのはこちらだし
あれだけの美人だ、恋人くらいいるだろう、
その恋人と待ち合わせかも知れない、
だが結花の眼差しはまっすぐ高木を見据えたままだった。
グレーのマフラーに紺のコート、パンツスーツ姿、胸まである黒髪は後ろに束ねていた。
するとその結花が歩き出したのだ。
高木は動けなかった。
結花は高木の目の前に立った。

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