Forked road 27/41

8月初旬、金曜日の午後6時。
街中がバスルームのような湿気。
空は黒に近いグレー。
時より遠い彼方で空が光る。
いつものJR新宿駅南口大階段下。掲示板の気温はまだ35℃ある。
ノーネクタイのシャツにチノパン姿の高木が扇子で扇ぎながら歩いて来た。
先に来て待っていた結花は麻のジャンパースカートに白いシャツ、白いイヤリングが若々しさを引き立てている。
よくスカウトされると言っていたがその立ち姿はまさに女優。
彼女ならスカウトがしつこいのも無理はないと高木は思った。
高木が軽く片手を上げると結花も笑顔で片手を挙げた。
「会うたびにキレイになるな、鮨でも食べに行くか?」
高木はにこやかに言った。
「洋ちゃん、今日は話したいことがあるの。」
結花の目が笑っていない。
高木は え?と思ったが何も訊けなかった。
サーッと冷たい風が吹いた。
高木はまさか? 街中を冷やす巨大エアコンでも出来たのか?と風の流れて来た方向をキョロキョロした。
次の瞬間、フラッシュを100万個同時に炊いたかのような閃光が光り真っ白になった。100人の悲鳴が一斉に挙がった。
そしてアスファルトに黒い点がボツボツと広がり 5秒後にシャワーのような雨が水しぶきを上げ始めた。
二人はまわりの人たちと共に甲州街道の陸橋下に雨宿りした。
夕立の水しぶきが道路、広場、階段、街中に広がり人影は街から消えた。
また光った。雷鳴が続く。
陸橋の下、肩を並べアスファルトに叩きつける雨を見つめる高木と結花。

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