Forked road 29/41

 「結花、ここがフォークドロードだ。」
「フォークドロード?」
「そう、フォークの形、思い浮かべてごらん。」
「フォーク? 食べる時のフォーク?」
「ああ、」
「ええ、わかんないよ、」
「1本の持つとこがあってその先がいくつもに分かれているだろ?」
「うん、」
「今、結花の人生が正にそれだ、どの道を選ぶか?その分かれ道に立たされているんだ。」
「あ、フォークの先の手前ね。」
「そう、どの道を選ぶか? それによっていい方へ進むか? 悪い方へ進むれるか? 決まって来る、せっかく生きて行くための技を身に付けようとしている結花がこんなおっさんのためにそのチャンスを棒に降るなんて絶対にあってはならないよ、ここは迷わず修行の旅に出るんだ。」
「うん、そ~ゆ~と思った、でも、会えなくなるのは嫌、たまには会って、お願い。」
「いや、せっかく決心したんだからここは修行に集中した方がいい。」
「別れたいの?」
「そうじゃない、今は修行するべきだよ。」
「洋ちゃん、とうとう一度も抱いてくれなかった、嫌いだからでしょ?」
「キス以上のことしたら俺は罪人になる、キスだって悪かったと思ってる。」
「悪いなんて・・・、私がどれだけ洋ちゃんに感謝してるかわかる?」
「感謝と愛は違うよ、」         
「今は感謝じゃない・・・、」
「・・・、」
二人は黙った。
暗くなった空に稲妻が走ると一瞬、積乱雲が映し出され紫に見えた。
「月一とは言わない、半年に一度でいい、じゃなきゃ、張り合いが無くなってしまう、」    
「張り合いって・・・、こんなおっさんだぞ、」
「そんなおっさんが好きなの、洋ちゃんじゃなきゃダメなの!・・・、」
結花は高木のシャツを鷲掴みにして声を挙げて泣いた。
「わかった・・・、」
滝のような雨が弱まったからか? 抱き合っている二人にまったく興味がないとでも言うように陸橋下から飛び出す人たちが一人、二人と現れ始めた。
泣き止んだ結花が顔を上げて高木の目を真っ直ぐに見つめてきた。
別れるしかないの?そろそろ。
そんな状況が結花のまわりを取り囲み結花自身を納得させに掛かっていた。
陸橋下から飛び出す人たちはますます増えて行った。
「洋ちゃん、私、ようちゃんのことずっとずっと好きだからね、それはわかって。」
高木は無言のままうなずいた。
「ねぇ、ようちゃん、最後のワガママ聞いて?」
覚悟はしていたが結花の口から出た最後と言う言葉が高木の腕に鳥肌を作った。
「腕時計ちょうだい、」
「これ?」
結花は無言のままうなずいた。
「洋ちゃんが身に付けてたもの欲しい。」
「こんなんでいいの?」
結花はうなずいた。
高木は手首から G-shock を外し手渡した。

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