Forked road 34/41

向かい側のホームに立つ結花は目を伏せていた。
高木が知っている結花ならチラチラこちらを見たり
笑顔で手を振ったりしただろうが8年半経てば結花も変わる、
また変わって当然だと高木は思った。
ホームに入線してくる電車のアナウンスが流れる。
別の階段も使えたはずだが目の前に立ってくれている。
それが結花の優しさなのか?
昔、世話になったせめてもの礼なのか? 
高木は結花の立ち姿を眺めていた。
これで完全に未練も絶ち切れる、
だろうか? また苦しむか? 
やがてほとんど同時に山手線が入って来た。
「洋ちゃん・・・!」
結花が何か叫んだ。
だが入って来た電車に声も姿もかき消された。
停車した電車のドアが開き高木は乗り込んだ。
すると向かいの電車にも乗り込んで来た結花がいた。
何か言っているがわからない。
高木はガラス窓に書けとジェスチャーで伝えた。
すぐに結花はガラス窓に書き始めたが内容は伝わらなかった。
高木は作り笑顔を浮かべ「もういい」とジェスチャーした。
やがて結花の電車が動き出した。
結花は体を横にズラした。
だがすぐに見えなくなった。
泣いていた。
まるで幼児のように泣いていた。
そんなに泣くのか? 
高木は拳を握り締めて深いため息をついた。
そんなに泣くのか? 結花。
高木は体を震わせた。
そんなに俺のことを好きでいてくれたのか?
マジだったのか・・・、結花。
思わず喘ぎ声を挙げた。
するとそばにいた若い男に声をかけられた。
「大丈夫ですか?」

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