白井健康

未来短歌会彗星集 所属

白井健康

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「すべては引用から始まる」

いつわりの襞、煌びやかに、うみの思い出が、物語の、毒を盛る。 定義できる、と右手から左手へゆける、うみの接触、失敗だ。 鏡のせいだ。甘やかなきみの死が、その度ごとにきみよりおくれる。 鏡、それはエクリチュールのなかに組み込まれた手続きでもあって、 ページのうえに、「すべては引用から始まる」、あの切先のせいだ。 きみの右手からぼくの左手がうみへ行ける、といつもきみから遅れる。 「ぼくはこのうみ(この本)に溺れる」引用の設計図を横断しながら 「うみ、の断片が減ることはない」、と動

    • 回転運動

      (音読しては)侵略され増殖するテクスト、へ「々(同の字点」(:楔)を打ちこむ 風景と呼ぶそれの、無傷のまま残ったものなどなにひとつもない。テクストも同じではなかったか。万人が一様にイメージを抱くものへと集まるように集団や体系が生まれた。そうした慣習、アスファルト、句読点、マクドナルド、肺臓、傷のあるものを持ち帰り、津波のように押し流し浄化する必要があった。句読点や引き抜かれたテクストが毒を持ちはじめる。万人の持つイメージが、安全といわれた都市や読まれたテクストに毒が盛られる

      • つまり、底なしのことば

        収縮しては、爪をたてられた。きみを要約するもりが等しい テクストをさ迷い、いつも森のなかにとり残される。余白へ、短い演出に、過ぎゆくまでのぼくは耐えられなかった。境界線を理解できなかったのだ。あるいは、境界線のない国を行ったり来たりしたのかもしれない。遡るように、緩やかな丘を選んでは、乳房へ落ちてゆく。わずかな拒絶があった、森がことばを跳ね返すように、鏡が裏箔を剥がすように、その夜、ぼくはわずかな力を取り戻していた。果実を服属させては、折れ曲がった空の視線が戻流ように、うな

        • 第四の表面において

          きみを落とそう。第四の表面において、、、 かおを崩し、楽しみ、たくらみが流れる。それは葉を与えられた肉であって、 と書けば、楽しみは薄らぐ。(肉の反対側に、それを破壊する。 雨、が大地を逃げてゆく。鏡の裏箔へ、手の下へ、詩(死)がおかれる 字句へ、きみの裸体へ、滑りこみもする。テクストを遡りながら もりはし、を反射的に送り返す。きみを落とそうと、いつもそうだ。 横滑りしながら、もり。きみが語ろうとする度に肉と皮膚を与えて  並置するだけで、、、 父、へおとろえた白やとぎれた静

        「すべては引用から始まる」

        マガジン

        • 詩歌
          70本
        • 短歌
          54本

        記事

          流れから抜け出す点、を語る。

          ことば、が燃えていた。語られたあとの、燃焼の法則により歪められ、一羽のとり、が投影される、彼女へ手を伸ばそうとしてなにも確かめられない鏡の、歌い終えたあと縁(外、背景)へ戻り、まわりのすべてが重くなってしまう、灰になった、語りえなくなった外面の、貼り付けられていた部屋、いくつかの線や色が見出される、僕たちの「始まらずに済んだであろう増殖*」、そして「比較」により、「無数の精液の計りしれぬカミソリをもって」、「テクストを切断しなさい、読み直しなさい」と命ぜられている、その一方で

          流れから抜け出す点、を語る。

          ぼくが生まれる前の生涯に

          砂州のなかを、ははのほうへ歩いてゆく。遠く乾いた振動だけを 足もとの性(セックス)に手をかける。うみのなかに浮かび出るため、に うみ、の腕は吸いとられなにも始められない。まるで布衣のような 余白に ははのぶんのうみ、の死んでしまう死、柔らかく浮き沈む瓶       * うみにいる(うみはここにある)、の切りぬかれたぼく。湾曲する岬までの路が、ぼくのぶん、その途切れたところから、ぼくを繋げる。世界が死んでしまう死に、つり合うのだから。いまは燃え出しそうなぼくを、おぼえる。切り取

          ぼくが生まれる前の生涯に

          僕たちは踊っている。

          切断。された、くび 芽 (結び。つ、き、た、い、落、下、)があるのだ。まだ生きている。 まず、発音されるはずのない、綴られることのない、オ、ト。に口を開けたまま、この殺人から、生まれる、はじまり、が。幾つもの枝を揺らして、鳥たちとべつの、オ、ト。を選んでいた。はは、が迂回路とよんでいた、槙の生垣の迷路、に戻ってゆく。勃起スル、切断スル、首ノヤガテ、自己ヲ提示スルタメニ、殺人ハ繰リ返サレル。 分割し、折りたたみ、四角く立ち上がり、わたしの差異を呈示スル「現在」、は「現在」では

          僕たちは踊っている。

          采の一振り

          ✅鏡のある都市、「テクストへあつめられる(わたし)は演出されるのだが、 外へ。自己への現前を求めようと内面への回帰は仮象のうちで演じられる。テクストは最後まで「ドラマ」のように演出されており、匣を復元しながら決着の際の稜ー現在形で表現される「わたし」ーは、統御の錯覚をもつ法でしか許されないだろう。 ✅ふられた賽(采)、のへやへもどるしか並べられた人をつらぬく糸、へ 夜。迷路のような都会へ繰り出すはず、が采の一振りによってぼくの手形のなかに戻されるのだった。数えきれないほ

          二重の底

          ようやく、それぞれの隠しもつ穴、が露わにされ、自ら舞台に入る(電気柵を抜け出し、アスファルトの霧、土はほほえみながら死ぬ、みずは磨かれ、コインをおし黙り、羊蹄の蔓延るシンゾウの、歯間のニラが踊る、きっとははの井戸へと落ちるのだ。午後はいつも袋詰めされた衣服の山に遊んだ。粉砕されるまえの衣服は人間の腐った匂いがした。演劇は、複製されたわたしやもうひとりのわたし、わたしに与えられ、過ぎ去ったように一度は死んでみた。玉はつくつくと畳を転がり、浜のひかりをおもくする。政見放送に耳は湿

          見せかけ(シミュラークル)のエクリチュール

          毛糸を編む針で子を刺した。この手が未来形を、過去形を、演ずる。 鏡を破ることはなく、時間の合わさる場所に(合わさる代わりに)テクストを書く。 「夜 毛糸と森が入れかわるー現在と半過去のねじれーを縫いつける。 この黙劇ー循環するエクリチュールーは邪なイデア(観念)がいそがしい。 付け加えられた蝶番、はむなしく揺れうごき、抱えては乳房がもうない。動かない(動けない)母の順番を数えては、部屋、反復する別のエクリチュールを開く。朝なのか夜なのか、危険に晒されてはかなしさを緩めつつ「

          見せかけ(シミュラークル)のエクリチュール

          始動

          偽りーと、言えるのかどうかーの繰り返しの外見、いつもひと<離>、をさびしがり、テクストを呈示スルふりをする、左側からはじめて、右側へと丁寧にたたんでは、待ち受ける床へと、間違わぬよう、新たな森を再ー呈示する、自らをひっそりと差し引くのだ、窓際の、わたしがおかれる新たな日差しー「あの」午後、男たちの賭けのなか、やわらかく狙っては、テクストに森を真似ている この黙劇、循環するエクリチュールは邪なイデア(観念)がいそがしい、毛糸を編む針で子を刺した、欲望の成就に、この手が森を追憶す

          始動

          袋のなかの死んだわたしは、いつか袋の外に落ちる代わりに、落ちながら、つま爪楊枝くらいの分枝を予感している。わたしは死者のなかに混ざった、ひとりの死者であり、死は地上に刻み込まれ、地上から芽生え切り取られた肉体に、切り花を予感しているのかもしれない。 未来へは、一本の針、とりわけ耳から口を貫き、鈍いひかり、が峠をこえた頃に、問題なのは罪に直結しているのかのように振る舞いながら、ひかりを重ね過去を迂回したがることだ。 さらに、政治的実現のために、みな孤立してはならず、孤独と虚しさ

          円柱(アペイロン)、ことばによってつくられた、うみのように

          高さにおいて食べきれず、拡がりにおいて泳げない。唯一の数えきれない現在が目であるように、反復されず単位をもたない。  ありがとう。 おお、いくつかの道よ、いくつかの扉よ、わたしは、あなたがたを産んだ。そして、あなたがたはわたしを産んだ。けれども、何の役にもたたないテクストに、限りない時の流れは、限りない恥辱をあらわした。同一の数が、お互いを数えるのとは異なり、刃先同士をあわせてはこぼれてしまう。些細なことから留守番の犬が、無比の他のものでもありえぬ数のように、破れてはみ出した

          円柱(アペイロン)、ことばによってつくられた、うみのように

          あめ、をしつつ、終える

          分割されない瞬間、ひとつのトポスに、あめ、を見聞きし、た。ひとつの尖鋭な瞬間の、あめ、を生きたのであり、あめ、を、分割不可能な瞬間を物語る。あめ、と発語する<とき>、「あめ」は分割されない、と思われた。しかし、「あめ」の発語を可能する瞬間に、「あめ」の発語によって「あめ」が破壊されたのだ。「あめ」、「あめ」、「あめ」、、、、と反復する。反復によって「あめ」は「あめ」の外へと引き出され、「あめ」は「あめ」、によって分割される。「あめ」が破壊されつつ、「あめ」が降り続ける。 〈

          あめ、をしつつ、終える

          う、み、

          はは、は、ゆばりの、のちにいる、(のです。エピローグはすでにうみ、を失い。 はは、は「のち」にいるのです。 遠州灘へ、すなわち、ははの「ゆばり」が、はは、に先立ち「のち」の「うみ」、を希釈する。 はは、のエピローグを開始するため、その背後に展開する胡乱な出来事が錯綜する。「うみ」、へ回帰するために、細く曲がる槙の木の道、のさきへ、防潮堤に遮られ、「うみ」、を失いました。「はは」のうみ、は生き残るにも生き残れずに、死んだテクスト、ふたたび、「ゆばり」の向かう「うみ」、は「はは

          は、は、の、う、み「が、

          はは、は、ゆばりの、のちにいる、(のです。エピローグはすでにうみ、を失い。 はは、は「のち」にいるのです。 遠州灘へ、すなわち、ははの「ゆばり」が、はは、に先立ち「のち」の「うみ」、を希釈する。 はは、のエピローグを開始するため、その背後に展開する胡乱な出来事が錯綜する。「うみ」、へ回帰するために、細く曲がる槙の木の道、のさきへ、防潮堤に遮られ、「うみ」、を失いました。「はは」のうみ、は生き残るにも生き残れずに、死んだテクスト、ふたたび、「ゆばり」の向かう「うみ」、は「はは

          は、は、の、う、み「が、