ぼくが生まれる前の生涯に

砂州のなかを、ははのほうへ歩いてゆく。遠く乾いた振動だけを
足もとの性(セックス)に手をかける。うみのなかに浮かび出るため、に
うみ、の腕は吸いとられなにも始められない。まるで布衣のような
余白に ははのぶんのうみ、の死んでしまう死、柔らかく浮き沈む瓶
      *
うみにいる(うみはここにある)、の切りぬかれたぼく。湾曲する岬までの路が、ぼくのぶん、その途切れたところから、ぼくを繋げる。世界が死んでしまう死に、つり合うのだから。いまは燃え出しそうなぼくを、おぼえる。切り取られては、遅れて構築されるうみ、おなじではないうみの、いくつもが欠けているうみ。そこから、から再び始めるしかなく、生殖のための欠けたうみ、異なるうみ、をひそかにぼくへ染み渡らせる。均衡とは、うみのなかにもぼくのなかにもふくまれない。ことばの終わりに、ことばは均衡しようとする。 

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