短歌

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ナニワウラウチルヤマノツキチル

海を浮上させて船を沈下させて、絵心がなくふたつのままです(絵具を溶きながら二本の筆で)
うみが出ていくところのそらの隔膜を貫通するのが 内臓を食べる
二本の管が貫通して僕らはきっと生きながらえる川です
すずしからあつしへつたわりますようにしびれ野とよみよわいに浸かる
こども空びとやがてあかつきなる網目越しのは手などと奥をみす会(え)
下車をさそう急いてはLINEの駅近くナニワウラウチルヤマノツキチ

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自動記述の試みとしての短歌

自動記述の試みとしての短歌

会陰部はまだ塞がらない(手のひらの)言葉を覚える以前の海に
ことばを患い落下した翼だけ捨てられている なぜ愛するの
尿(ゆまり)のあとの砂が縮んで添えられる折口のよごと、ものがたり、うた
予感から余寒を導く よごと、ものがたり、うた またため息を吐く
側勒努趯策掠啄磔の順の字画を経巡る風景となれ
花火のように打ち上げられたその頂きで青いひとみを海は見開く
子音の砂

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ひとつの遊び

ひとつの遊び

いのちの順番を数える口唇が行列の先の先の先の先の
順番を並べ違える大母の悲しみの腑分け海への遡源
誤読するような月夜の皿の上の魂はときに名前をもたない
道の罪を頭蓋を押さえトリガーへ指を差し入れ塔が崩れる
譲歩され整えられる距離にだけ道はあなたの添付を許す
水だけで大丈夫ですの触れ込みを連れ帰っては名前をつける
咳をする投薬をする瞬きのその度いつも小石を投げる
長靴のひとは言葉

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かいわれの花

かいわれの花

曇り日に見覚えがあって眼で辿る向かいに置かれた赤いケースを
斜め前に出迎えているわたくしを遮る仕掛けの誰かの人かげ
二回目の海道を渡り橋桁のひかりのすがたに招かれていた
鳥 二回目という海道のその先の雫(しずく)のような大人に会いに
ちぎられたパンのふたつの過不足をひとりと過ごす穂のような 鳥
拭えない 湾曲をする橋と橋を繋いでみても闇をとぶ鳥
鳥 磔の木の正直な直線と途切れる

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短歌的実験(7)

短歌的実験(7)

駅員も椅子職人も永遠をつくりはしない、ましてや詩人も
妻は捏ねて捏ねて捏ねて子をつくりサラマンダー(火)に焚べてはきれい
心臓が迫害される冷え切った部屋で蜥蜴のままで寝返る
映写機の父はひかりに動きだすきりぎりすきりぎりす切り偽りス
他所の家の匂いの犬について行く転がる柚子に母性は宿り
重なったときのあなたのあこがれに譲ろうとする影のかたちよ
畳への愛撫を遠い未来雨をわだつ

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ゆひ ゆき たや

ゆひ ゆき たや

ゆひ ふき たや 底翳の星にもたらした次頁の次頁の次頁の
腹のなかにトリチウムだけを温める孵化しなくても裂け目は叙事詩(エピック)
ガラス越しの点滅信号、論文を綴ればふいに詩は隆起する
からだに気孔は九つポエジィは微風や鳥と関係をもつ
またきみの後始末にすぎないけれど目隠しのつぎの林檎を剥いてる
白濁の眸を与えられている病葉の穴から妖精の距離へ
麦の穂の あひ あみ あえ 

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短歌的実験(6)

短歌的実験(6)

肌の服のままで闇夜を彷徨えばボッティチェッリの波音を聴く
石に滲む薔薇色の指が走りだす死人の口にコインを入れれば
だれよりも深く関わりあうひとの脂色(やにいろ)の肌に帆を張っている

*可能性とは、すでに過ぎてしまったことを後ろ向きに見直すことによって形成されるだけのものなのである。だがそれは、流れる時間を、流れた後で、空洞化して捉えているにすぎない。
洲から洲へでき得るこ

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短歌的実験(5)

短歌的実験(5)

風景の骨として上下する、いつも、からだを揺らす水平線が
切り取った人差し指の腐敗する時間は青く魚群のように
落下する少年少女、海遊は「盲目駅」へとふたたび戻る
水の中で花はつぎつぎ燃えはじめ罪状だけが燃えずにのこる
海岸で拾った骨の潔さ詰めたらきれい、恋人がいた
夜間飛行する蝶の話を始めよう罪人として生まれて
消息は途絶えてしまった裏庭を掘り進めればガラスの破片
孵化をした満

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短歌的実験(4)

短歌的実験(4)

素性の知らぬ背骨をすっとなでるとき感情論は火事の話に
円筒形の器にふたつ穴を開け心臓が土になるのが最後で
首筋の影を擽る舌先の瓢塚ひとつ肌が冷たい
おんなと一緒に患部のなかに蕩けては秋の写真が黄ばんで写る
筐体の壁をすべすべに磨き上げ蜜蜂はとまることができない
閂はスポンジ状に、表までよろけるように、蕩けるパドック
ベランダからの海、靡き寝の切れ端が盗んだことばのように吹かれ

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短歌的実験(3)

耳のなかの海

まだ海を知らない山羊が午後二時のプールに肩甲骨を浮かべた
やわらかい海を包んだ赤玉を終わったからだの膝に並べる
づがいこつまだやわらかいころだったそらへ吹かれるあかいセロファン
海のない船着場からふるさとの夜を通って花弁に触れる
ひるま食べた果実の匂いをさせながら地肌の翅が海へと曲がる
転がって転がりつづける思い出が凹面鏡のなか(ゆるされない、される
一ツノ沈黙シタ火事ヲ愛シテハ

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