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#詩歌

【詩】Short-Forest

【詩】Short-Forest



Short-Forest

短い森を消去法で選択してボタンのないコントローラー持たされて
パンクしたコーラの泡をぶちまけて生えてくる花を摘んで
電線にシャボン玉ぶつけていく

足跡がないから歩けない
でも、やっぱり湯気はあたたかそうだからコントローラーは手に馴染みきってふやけ始めたぐらいだけど
それぐらいわたしの手として手だから

蹴りたい石が蹴りやすいかどうかなんて知らない

手放しでスキッ

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【詩】ぽすと・とうきょう

【詩】ぽすと・とうきょう



ぽすと・とうきょう
              /とわさき芽ぐみ

ざらりとした声色の
夕立が街々の大きくうねるストローの中を
駆け巡って
脆いエンターキーを
腐ったエンターキーを
ことごとく叩き割ってゆく

ひらがなでできたはやくちことば
とうきょうとっきょきょかきょく
となりのきゃくはよくかきくうきゃくだ

とうきょうは孵化していたのだ
いつのまに

ざらりとした木漏れ日のなかで
小さくう

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ツインテール無双、非対称

君が老けてくなあ、と思って

ひたすらタイピングの音を聞いている

こむずかしい背中を殴りたくなるけど

カフェオレを飲んでるからやめておく

そういえばわたしは紐靴が履けなかった

ベリベリとテープでくっつけては

走ったつもりでいたなあ

ポニーテールは似合わなくて

ツインテールでこばかになった

こっぱずかしい記憶を殴った

こっぱみじんになった右脳

のうのうと生きては休み

休んでは息

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ことばなんて

ことばなんて

頼りないよな

無意識と 意識の狭間で

うめいたり わめいたりしながら

それでも伝わることを願ってる

コード信号、受信機の不具合

あるいは

経験値の
向かう方向が
違ったりして

それでも

ことばに置き換えざるを得ない

俺たちの

情けなさを

笑っていろよ お前たちは

/とわさき芽ぐみ 2018.5.27

正真正銘こころからばか

わたしのなかでせかいがとけるころ

あなたはひととてをぬくもらせて

どうぶつえんのかばのはなしなんかしてる

海馬、って、かばのことらしい

あなたはまんぞくげだ

わたしのべっどのわきでは

けたたましくとけいがなりひびき

正真正銘こころからばか
正真正銘こころからばか
正真正銘こころからばか

って おしえてくれるんだ

正真正銘こころからばか

知ってたよそんなこと

こころからばか

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いちばんはじめのふつう

いちばんはじめのふつうを

咥えたまんま

走れ 走れ 犬

犬種はなんだろう

遠くて見えない

走っているから尚更見えない

僕は途方に暮れる

彼女が愛情をくれる

開いた本のページが捲れる

これは恋でもなんでもない

日に焼けた本の ちょっとくすねたことばから

涙がこぼれてしまっただけだ

ありがとう また会いましょうどこまでも

/とわさき芽ぐみ 2018.5.7

東からのぼった現実(リアル)に急かされて僕の頬骨ばかりが縮む

よそゆきの声をだましだましちぎりながら歩く。

ふだんの歩幅より狭く、あるいは広く歩くことを

ぼくたちのゆうじんたちはわらった

凍った夜に等しく降る質量を、恐れを、喜びを、

等しく受け入れられるだけの容量を、

僕は持ち合わせていない。

遥か昔、この星がまだ生まれた頃、

このカーテンがまだ、糸よりも細かった頃、

僕の心臓がまだ、アメーバだった頃、

宇宙は既に、崩壊してたのだと

誰も

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誕生日パスワード



誕生日をパスワードにするぐらい、とても容易なことだ。

パスワードにされた誕生日を想う。

この数字は、俺のパスワードにされるなんて、夢にも思っていなかっただろう。

待てよ、そもそも数字は、夢なんて見るんだろうか。

という夢を見た記憶がある。

俺は、俺の生まれた生年月日を呪いもしないが、祝福もしない。

ただ存在しているだけだ。

しかし、俺が、この世とやらに生を受け、ひとつの存在として

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あなたの車窓から

誰も進行方向を向いていないような夜だった
奥へ行けば行くほど人間の密度は濃くなる
当たり前のように、風景と風景でサンドイッチされてるけど
これはもしかしたら、誰かがつくった映像を貼り付けてるのかも知れない

そう思ったら、自然とマスクの中の思い込みは激しくなり、わたしはまた深々とお辞儀するのだ、
鼻が垂れてるのがバレないようにしながら。