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記事一覧

この夏は

断片的なきらきらを
カプセルに閉じ込めて
当たりしかないガシャポン
文字に起こせない感情を
手のひらに乗せて飲み込む

ああまたひとひら分の息で
温もれるんだなって
あかるい水が
ほどかれて
またわたしになってゆく

溶けないお菓子を選ばなきゃね、この夏は
短そうな気配がしてる

着心地を見透かされて
ちょっと凍えてた言葉がほろほろと
苦いコーヒーにミルクを注ぐみたいに
そうか、こんな簡単なことで

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【詩】むぢのまち

【詩】むぢのまち

むぢのまち

/とわさき芽ぐみ





むぢゆんむぢゆんと唾を吐く



コンクリートに満ちる解放



鬼さんこちら、手の鳴るほうへ



フラッシュをたき影をもぎ取る



ピクセルで洗/荒う半導体



何も知らないハンドルを切る



ねおん、ねおんと鳴く仔猫



自由って、萎びたフライドポテトの歪みのこと



あるいは、一滴だけ腹にしょうゆを湛えた魚のこと

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【詩】恥じてなお

【詩】恥じてなお

眼があって

私をじっと、凝視している

瞳孔に映る私は

ピントのボケた虫の羽みたいに

フラりフラりと

どこにも目的が定まらないまま

フラりフラりと

死んでゆく蝶のように

中身のなさを露呈している。

果たして、この、眼は、

それを見つけようとして

あるいは

凝視される。という目的を与えようとして

私に視線を与えているのか。

もはや意味をなさない靴底で地面をひたりと感じながら

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【詩】Short-Forest

【詩】Short-Forest



Short-Forest

短い森を消去法で選択してボタンのないコントローラー持たされて
パンクしたコーラの泡をぶちまけて生えてくる花を摘んで
電線にシャボン玉ぶつけていく

足跡がないから歩けない
でも、やっぱり湯気はあたたかそうだからコントローラーは手に馴染みきってふやけ始めたぐらいだけど
それぐらいわたしの手として手だから

蹴りたい石が蹴りやすいかどうかなんて知らない

手放しでスキッ

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【詩】ぽすと・とうきょう

【詩】ぽすと・とうきょう



ぽすと・とうきょう
              /とわさき芽ぐみ

ざらりとした声色の
夕立が街々の大きくうねるストローの中を
駆け巡って
脆いエンターキーを
腐ったエンターキーを
ことごとく叩き割ってゆく

ひらがなでできたはやくちことば
とうきょうとっきょきょかきょく
となりのきゃくはよくかきくうきゃくだ

とうきょうは孵化していたのだ
いつのまに

ざらりとした木漏れ日のなかで
小さくう

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【詩】蓋



蓋を閉める音がする
カチリ、と
嵌まるべき溝に嵌まった
秩序の音色
ざわざわと
影が先に揺れて
肉体のほうが、世界に
遅れて動く
アタマの溝に
嵌まるべき蓋はあるのだろうか
いつまでも蓋をして
見ないように、見ないように
して
瘡蓋はじわじわと
その再生の物語

首を振る
縦に?
横に?
擬人化、なんて
おこがましい。
ヒトも 擬態して
いるのだから。
蓋を閉める音がする
何も悟らせないよう

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【詩】表現のこと

こむずかしいことを考えてもよいし

考えなくてもよい

表現はゆだねられている

すべての人間に

おのおのに

花束はいくらでもある

ペンはいくらでもある

表現はゆだねられている

わたしたちに

/とわさき芽ぐみ 2020.7.26

【詩】右脳の人

右脳の人と呼ばれた。

右脳の人はどんな人なのだろうか。

私の右手はさして器用には動いてくれない。

左手も同様だ。

いつこんな狭い頭蓋のなかに入ってきたか

分からないシロモノの

右やら左やらがむすうの電波を送ったり受け取ったりして

私というシロモノを動かしているらしい。

右脳の人として何をすればいいのだろう。

右手と左手でお互いジャンケンをさせて

(これすらもむすうの電波の仕業な

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【詩】【短歌】5歳のおしりとどうぶつの森

わたしに不穏な風が吹いたとき、あなたは距離でかくまってくれますか
まとわりついた死亡フラグが、はためくこともできずに、あ、クラゲみたいに死んでいる

http:// twitter.com / jpgjpgjpgjpg←架空の空模様をお届けするアカウントです。

そんなことないよって言うそんなことそんなことが何かを知らない凍てついた粗末な風がやかましい
そんなのわたしの風じゃないからぬばたまのさか

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ツインテール無双、非対称

君が老けてくなあ、と思って

ひたすらタイピングの音を聞いている

こむずかしい背中を殴りたくなるけど

カフェオレを飲んでるからやめておく

そういえばわたしは紐靴が履けなかった

ベリベリとテープでくっつけては

走ったつもりでいたなあ

ポニーテールは似合わなくて

ツインテールでこばかになった

こっぱずかしい記憶を殴った

こっぱみじんになった右脳

のうのうと生きては休み

休んでは息

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【詩】山手線の最終回

山手線の最終地点はラップに包まれたジャングルジム

ぴりっ、って上手く切れなかったから

【刃の部分にご注意ください】

包みきれていないところがあるな

性急に請求されます青春を

ちあんがわるいちゃんねるに

ゲームの雑魚キャラのなまえを、ただの通りすがりとして打ち込んでおく

楽しいよね毎日が。

/とわさき芽ぐみ 2020.1.7

【詩】プレミアム・ルーザー

倒れこんで頭頂部を見せ合いながら
絡まった糸電話を踏みつけてゆく数々の足音

リズムは決まっている

改まった顔でブラック・ジョークを言うんじゃないよ

白旗はいつでも掲げたらいい

そしたらマジックインキでスマイルマークを書いてやるよ

ラブ アンド ピース
なんてさ

安堵安堵、君に指紋を

/とわさき芽ぐみ 2020.1.5

すぱっ

すぱっとしたものを

受け継ぐには

すぱっとした精神を

せいしんってなんだ

ゆかいなものではなさそうだ

うつくしいものではあるのだろうか

すぱっとしたものは

歯切れのいいことば

みかづきの光

地層の断面図

すぱっとしたものは

せいしんのくらやみを

嫌うだろうか

そうやって

すぱっ すぱっ すぱっ すぱっ

ちょっと肌寒い朝にはおるような

すぱっ



手に入れたいと思

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きょとん

きょとんとしている

みんな

きょとんとしている

えがおのさきに

むくのくうきょに

みんな

きょとんとしている

うつろなふたえに

むいのじじつに

きょとんとしている

きょとんとしている

からっぽの胃で

きょとんとしている

/とわさき芽ぐみ 2019.8.6