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ヒーローものかと思いきや、突然「School Days」風の絶望ラブストーリーに変化する物語!!|『サイコ』(3)

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テーマ発表!!


 第1回第2回に引き続き、映画「サイコ」をベースに新しい物語を妄想します。

※「サイコ」のストーリーなどについては、第1回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 「サイコ」は、途中までは「横領事件」や「狂った母と哀れな孝行息子」を描いた物語に見えるが、じつはそれはフェイクで、最後に「『二重人格者による猟奇殺人』の物語だった」ことが判明する作品ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……前回に引き続き、一体どんな物語にするといいかディスカッションしてまいりましょう!

三葉 承知しました。

嘉村 前回ご紹介したのは、「『サイコ』 ~『熱血バトル』編」でした。


案②


三葉 まずは、「サイコ」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。


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三葉 ……ですね(より詳しくは第1回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 また、前回「物語が二転三転する『驚き』こそが『サイコ』の魅力である」と申し上げました。


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嘉村 ふむ。

三葉 そしてもう1つ。「『トーンの統一』の重要性」についてもご説明しました。


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嘉村 なるほど。

三葉 さてここからは、以上を踏まえて「『ストーリーは急変するが、トーンは一定』の物語」のアイデアを考えてまいりましょう。まずは「案②」。ズバリ……「『サイコ』 ~『阿鼻叫喚』編」です。


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三葉 阿鼻叫喚……すなわち、「泣き叫んで救いを求めたくなるほどひどいありさま」

嘉村 ふむ。

三葉 物語は、「ヒーローもの」として始まります。「ウルトラマン」でも「スーパー戦隊」でも「魔法少女」でも、あるいは「アンパンマン」でもいいのですが……いずれにせよ、主人公は正義のチームに属し、仲間と協力して悪と戦います。

嘉村 ふむふむ。

三葉 ところが中盤、ストーリーが急変する。すなわち、敵との戦いがほとんど描かれなくなるのです。代わりにクローズアップされるのは……「正義のチーム内の恋愛模様」。「主人公とオペレーターのA子がいい雰囲気」とか、「B子は淫乱娘でチーム内のあいつともこいつとも寝ている」とか、要するに職場恋愛の一種ですね。

嘉村 ほぉ。

三葉 つまり、「ヒーローもの → 恋愛もの」とストーリーが急変するわけです。

嘉村 鑑賞者・読者は困惑するでしょうねぇ。

三葉 そうですね。「あれ……悪との戦いを描く物語じゃなかったの!?」「ラブストーリーだったの!?」と仰天するでしょう。創作者・制作者は、「そんなにストーリーを急変させたら、鑑賞者・読者が離れてしまうのでは?ヒーローものを楽しんでいた鑑賞者・読者が怒るのでは?」と不安を感じるかもしれません。

嘉村 ええ。

三葉 しかし……大丈夫!トーンを一定に保てばいいのです。

嘉村 なるほど。

三葉 例えばここでは、「阿鼻叫喚」というトーンを採用してみましょう。すなわち……嗚呼、敵は強大である!主人公らは奮闘するが、彼我の戦力差は如何ともしがたい。本拠地への致命的なダメージを避けるので精いっぱい。仲間は次々と殺されていく。どうにか攻略の糸口を掴んだかと思いきや、それは敵の罠だった!かくして今日も悲劇が続く。……物語前半では、そんな絶望的な戦いが描かれる。

嘉村 「HUNTER×HUNTER」や「進撃の巨人」でお馴染みの「読んでいて辛くなるほどの絶望的なエピソード」というわけですね。


三葉 しかし中盤、ストーリーは急変する。上述の通り、主人公らの恋愛模様が描かれるのです。しかしこちらも……やはりトーンは「阿鼻叫喚」!ズバリ、「SchoolDays」のイメージですね。


嘉村 確かにそれは、阿鼻叫喚なラブストーリーですねぇ……。

三葉 とまぁこのように、前半も後半も「阿鼻叫喚」。トーンが一定に保たれている。それゆえにストーリーがガラリと変わっても、鑑賞者・読者から受け入れられ得るのです。


案③


嘉村 続いてまいりましょう!

三葉 はい。「案③」は、「『サイコ』 ~『不撓不屈』編」です。


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三葉 「不撓不屈」……どんな困難にも決してめげないこと

嘉村 ふむ。

三葉 主人公は、上述の「案②」同様、正義のチームの一員です。そして物語前半では、主人公らの活躍が描かれる。

嘉村 ふむふむ。

三葉 ところが中盤……物語が急変する!すなわち、主人公が敵に拉致されてしまうのです。鑑賞者・読者は「おやおや。しかし大丈夫さ。どうせすぐに仲間が助けに来てくれるはず」と考えるでしょう。

嘉村 ええ。

三葉 しかし……そうは問屋が卸さない!鑑賞者・読者の予想を裏切り、助けは来ない。主人公は洗脳される。さらに、改造手術を施される。かくして物語後半、主人公(だった青年)は悪のチームの手駒となり、かつての仲間と敵対することになったのでした。

嘉村 なるほど。

三葉 要するにこれ、「エヴァ」で例えるならば……主人公(シンジ)が敵(使徒 or ゼーレ)に拉致され、洗脳される。そして正義のチーム(NERV)に牙をむき、かつての仲間(レイ、アスカ etc.)と戦うことになる、というわけですね。


三葉 「ヒーローものかと思いきや、物語半ばで主人公(だった青年)が敵チームに入り、かつての仲間と本気で殺し合いを演じる」というのは、なかなかどうして驚きの展開だと思いますが……。

嘉村 ええ。

三葉 しかし大丈夫。トーンさえ統一しておけば、鑑賞者・読者はついてきてくれるはずです。では、どんなトーンにするか。「エヴァ」のような「不穏な雰囲気」でもいいのですが……今回は「不撓不屈」を採用してみましょう。

嘉村 ほぉ。

三葉 すなわち、主要キャラは総じてど根性の持ち主。逆境にこそ強いタイプがそろっている。彼らは絶対に諦めない。「ゴルフで言えば、いまはアゲインスト。逆風が吹いている。飛距離は出しづらい。しかしな、知っているか?アゲインストには、ボールをコントロールしやすいというメリットがあるんだぜ」なんて言ったりする。

嘉村 なるほど。

三葉 主人公が拉致・洗脳されるという悲惨なストーリーにも関わらず、物語には常に前向きな雰囲気が漂っている。ゆえに、作品としてのまとまりが感じられる。したがって、鑑賞者・読者は最後までついてきてくれる……というわけです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 以上、「『サイコ』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!


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 「サイコ」の研究はこれで終了です。ありがとうございました。

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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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