ストーリーを急変させる時に、トーンまで急変させてはならない!!|『サイコ』(2)
テーマ発表!!
前回に引き続き、映画「サイコ」をベースに新しい物語を妄想します。
※「サイコ」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。
妄想開始!
嘉村 それではまいりましょう!
三葉 はい。
嘉村 「サイコ」は、途中までは「横領事件」や「狂った母と哀れな孝行息子」を描いた物語に見えるが、じつはそれはフェイクで、最後に「『二重人格者による猟奇殺人』の物語だった」ことが判明する作品ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?
案①
三葉 まずは、「サイコ」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。
三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。
嘉村 ふむふむ。
三葉 上述の通り、「サイコ」の魅力は「『若い女性による衝動的な横領事件を描いた物語』かと思いきや、『狂った母と哀れな孝行息子の物語』……に見せかけて、じつはそれもフェイク。本当は『二重人格者による猟奇殺人の物語』だった」という「驚き」にあるでしょう。
三葉 要するに、「○○の物語だろう」「主人公は□□だろう」といった私たちの予想がことごとく打ち砕かれる。それゆえの驚き。……これが「サイコ」の魅力だと思うのです。
嘉村 確かに。
三葉 しかし、それでは「鑑賞者・読者の予想を打ち砕く物語 = 面白い」かというと……一概にそうは言えません。特に注意すべきは「トーンの統一」です。
嘉村 「トーンの統一」?
三葉 ええ。上述の通り、「サイコ」は二転三転する物語です……が、しかし!物語の「トーン」は一定なんですよ。「犯罪サスペンス」というか、「不穏な雰囲気が漂っている感」というか、「何か嫌なことが起こりそうな気配が漂っている感」というか……終始そんなト-ン。
嘉村 ふむふむ。
三葉 そしてトーンが揃っているからこそ、途中でストーリーが急変しようが、主人公が入れ替わろうが、鑑賞者・読者から受け入れられ得るのだと思うのです。
嘉村 なるほど。
三葉 一方、もしもストーリーと共にトーンまで急変してしまっては、鑑賞者・読者がついてきてくれるか怪しいものです。例えば、物語の前半は「ラブラブハーレムもの」。ところが中盤、ハーレムを構成する女性陣が皆殺しにされる。……そんな物語があるとして、果たしてこれは面白いのでしょうか?
嘉村 うーむ。
三葉 たぶんね、面白くないと思うんですよ。なぜなら、「ラブラブハーレム」と「皆殺し」ではあまりにもトーンが異なるから。「ラブラブハーレム」を楽しんでいた鑑賞者・読者にとって、「皆殺し」は裏切り行為と言っても過言ではありません。つまり、ストーリーを急変させる時には、トーンまで変えてしまわぬように注意する必要がある。
嘉村 なるほど。
三葉 では以上を踏まえて……「案①」!「『サイコ』 ~『熱血バトル』編」です。
三葉 すなわち……前半は、高校のボクシング部を舞台にしたスポーツもの。厳しいトレーニングや、友情、そしてライバルとの激闘などが描かれる。鑑賞者・読者は「ああ、なるほど。彼らがインターハイで活躍する物語だな」なんて予想するでしょう。しかしそれは誤解。物語中盤に、ゾンビパニックが発生する。
嘉村 ほぉ。
三葉 かくして後半、主人公らボクサーは、ボクシングの技術を使ってピンチを切り抜けていきます。
嘉村 なるほど。
三葉 「前半:高校のボクシング部」、そして「後半:ゾンビパニック」……一見するとまったくマッチせず、1つの物語にまとまりそうにありません。しかし、大丈夫!トーンを統一すればいいのです。
嘉村 ふむふむ。
三葉 ここでは、例えば「熱血バトル」というトーンを採用してみましょう。つまり、【青春をボクシングに捧げる「熱い高校生たちの物語」 → 死力の限りを尽くしてゾンビと戦う「不屈の男たちの物語」】。
嘉村 ふむ。
三葉 あるいは「トーン:ギャグ」でも、「トーン:シリアス」でも結構です。重要なのは「どんなトーンか?」ではなく、「トーンは統一されているか?」なのですから。
嘉村 ええ。
三葉 一方、もしもこれが「ボクシング部を舞台にしたギャグストーリー → シリアスなゾンビパニックもの」なんて展開なら、きっと上手くはいきません。何しろ、「ギャグ → パニック」ではトーンが違いすぎる。鑑賞者・読者から見放される可能性が高いと思うのです。
嘉村 なるほど。
三葉 以上、「『サイコ』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!
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最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
(担当:三葉)
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