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冬アニメ「佐々木とピーちゃん」の研究 ~佐々木の背中には就職氷河期世代の悲哀が漂っている

🥳本記事では、ポプカルMAXによるオンライン座談会「アニメ語り」(24年1月28日実施)の内容を一部抜粋してお伝えします。なお、完全版は動画でご覧いただけます→ 前編 後編


「ポプカルMAX」とは?:ポップカルチャー(マンガ、小説、ラノベ、アニメ、映画、ゲームなど)好きのための、ゆるいコミュニティです。好きな作品について語ったり何かを作ったりして楽しむことを目的としています。


<座談会の参加者紹介>

👉清水大地 マスター・オブ・アニメ。年120作以上のアニメを見続けて20余年。現時点での今期ベストキャラは、マジアアズール(「魔法少女にあこがれて」)。

👉村上空気 「けいおん!」の唯を見てアニメに開眼した。現時点での今期ベストキャラは、柊うてな(「魔法少女にあこがれて」)。 →X(旧Twitter)でフォローしてね!!




🐥今夜は「佐々木とピーちゃん」を語ろう!


村上:今夜は、24年冬アニメ「佐々木とピーちゃん」について熱く語りましょう!

村上:さて、現時点では第4話まで放送されたわけだけれど、どうですか?

清水:いや、いいんじゃないですかね。

村上:何だそれ(笑)。

清水:(笑)。

村上:俺はね、いろいろ思うところがあったのよ。

清水:ほぉ、聴きましょう。


🐥涙なしには語れない……就職氷河期世代のリアル


村上:まずさ、主人公の佐々木はパッと見では冴えない中年男じゃん。

清水:そうね。

村上:でも、よくよく考えてみるとそこまでダメなやつじゃないんだよね。

清水:うん。

村上:第1話前半、魔法の力を得るまでの描写を思い出してみると――確かに仕事がバリバリできるタイプではなさそうだし、プライベートがメチャクチャ充実しているタイプでもない。でもさ、後輩には慕われ、お金もそこまで困っているようには見えないよね。

清水:うんうん。

村上:本人は「お金に余裕がない」「カツカツだ」なんて言っているけれど、本当に困っていたらコンビニで買い物はしないよね(笑)。

清水:わかる(笑)。

村上:それに、かわいいペット動画を見て癒されるという趣味だってある。1人でペットショップに行っちゃうくらいアクティブだし、自宅には観葉植物なんて飾っちゃってるし(笑)。

清水:そうね、独身貴族という感じだね。

村上:そうそう。わりと人生をエンジョイしていたわけだ。

清水:うん。

村上:ところがピーちゃんと出会って魔法を得てからというもの、強引に公務員に転職させられて敵との戦いに巻き込まれるわ、異世界でビジネスを始めるわ、レストランのオーナーになるわ、戦争に協力することになるわ、貴族のお家騒動にも関わるわ……もうメチャクチャ忙しくなる

清水:そうねぇ。

村上それにも関わらず、佐々木は「ああ、疲れた。もういやだ!」なんてことは言わない。彼は愚痴をこぼさない。やるべきことを着実にこなしていく。これが興味深いと思うんだよ。

清水:ほぉ。と言うと?

村上:うん。ここで思い出してほしいのが、第1話序盤の佐々木のモノローグなんだ。メモしてあるから読み上げるね。

清水:メモしてあるのか(笑)。

村上:えーとね、佐々木曰く「これがいつもの職場の風景。これといって名前が売れているわけでもない、どこにでもある中小企業の商社である。売り上げも給与もごくごく普通。当然残業代は少ないから、生活は就職当時からカツカツだ」「それでも転職できないのは、自身の身の上の問題。就職氷河期を経験した自分にとって、社会はとても恐ろしいものだった。だからこうしてやるべき仕事があって、おのれが一応社会に役立っているのだという雰囲気を感じられるのは、ある意味ありがたくもあった」

清水:……。

村上:つまり佐々木は就職氷河期世代で、よくも悪くもクソ真面目。ある種の「社畜精神」を持っていると言える。魔法の力を得て忙しくなってからも文句を垂れずに淡々とやるべきことをこなしていくのは、このためだ。

清水:うん。

村上:でね、こう考えると本作はもう「就職氷河期世代のおっさんが、そのクソ真面目さと社畜精神ゆえに、過労でくたくたになっている/ブラック企業やブラック経営者にいいように使われている」という話にしか見えないんだよ(笑)。

清水:(笑)。

村上「これぞ就職氷河期世代のリアル」っていうのかなぁ、「魔法の力を得ようとも異世界に行こうとも就職氷河期世代は就職氷河期世代なのです」という感じで涙なしには見れないよ……(笑)。

清水:うーん……(笑)。

村上:例えばさ、同じ<主人公が異世界と現実世界を行ったり来たりする系作品>ということで、「老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます」のミツハ殿と比べてみなさいよ。

清水:ふむ。

村上:ミツハ殿はおそらくZ世代だよね。よくも悪くも賢い世代だ。それと比べて佐々木と言ったら……(笑)。

清水:いやぁ。ミツハ殿は相当狂ってるからね、比較対象として相応しくないと思うよ(笑)。


🐥ヒロインは子どもばかり


村上:本作の特徴の1つとして、「ヒロインが子どもばかり」というのがあげられると思う。

清水:確かにね。

村上:最初に登場したお隣さん(cv鬼頭明里さん)は中学生。次に出てきた星崎さんは高校生。「そろそろ大人のヒロインが出てくるかな」と思いきや、3人目のエルザはさらに一段と幼そうに見える。

清水:そうね。

村上:これ、一体何なんだろうね。

清水:ん-、30歳くらいの色気ムンムンなヒロインが出てきてもいいのにねぇ。

村上:ムンムンって……(笑)。

清水:(笑)。

村上:しかしまぁ真面目に推理するなら、作者・制作者は佐々木がまともに恋愛する様子を描きたくないんだろうなぁ。

清水相手が高校生や中学生では恋愛にはなりづらいもんね。

村上:そうそう。

清水:これだけ年齢が離れていると、「恋愛」よりも、「保護」とか「世話」になる。

村上:「佐々木は39歳。もう恋愛なんていいよ」ってことなのかな?しかしなぁ、いまどきの39歳は恋愛くらいしてもおかしくないと思うんだが……。老成するのが早すぎないかね。

清水:うーん。

村上:あと、個人的な好みを言わせてもらうと、俺はお隣さんが好きだからもっと出番を増やしてほしいんだよな。

清水:いまのところ挨拶を交わす程度だもんね。

村上:そうなのよ。清水さんが好きなのは星崎さんだっけ?あっでも、高校生と判明した時点で興味を失ったんだっけ?

清水:いや、興味を失ったわけではないけれど(笑)……でももっと大人の女性だったらより俺の好みだったかなとは思う。


🐥佐々木って「AIR」の国崎なんじゃないの説


村上:そういえばさ、第1話冒頭、本作は佐々木がゴミを出すシーンから始まるんだよね。そこにお隣さんがやって来て「おはようございます」「おはよう」なんてやり取りが行われるわけだけどさ。

清水:うん。

村上:このシーンには、ゴミ捨て場をあさるカラスが描かれている

清水:ふむ。

村上:でね、本作の副主人公たるピーちゃんは鳥でしょ。そしてカラスも鳥だ。――同じ鳥ということで、冒頭に出てきたこのカラスにも何か意味があると思うんだよ。いや、あるに違いない(笑)!

清水:……何だって(笑)?

村上:例えば「カラスは敵のスパイで、魔法適性を持つ佐々木をずっと前から監視していた」とかね(笑)。

清水:あー(笑)。

村上:で、いろいろ考えてみたんだけどさ、カラスといえば国崎だよね。Key、そして京都アニメーションが誇る傑作「AIR」の主人公・国崎。

清水:はいはい(笑)。

村上:つまりさ、本作冒頭に登場したカラスは、何らかの理由でタイムスリップしてきてしまった未来の佐々木なんじゃないかと思うんだよ(笑)。

清水:えー(笑)。

村上:俺は断固として「佐々木=国崎」説を主張するよ。本作最終回、カラスになった佐々木がピーちゃんとともに仲よく大空を飛んでいくシーンが目に浮かぶもんね(笑)。

清水:うーん……まぁそれが本当ならある意味歴史に残る作品になるだろうけれど……ファンにはメチャクチャ叩かれそうだな(笑)。

村上:いやいや、「これは懐かしの『AIR』展開!」ということで感涙するかもしれないよ(笑)。

清水:本作に「AIR」的な展開を望んでいる人はいないでしょ(笑)。

村上:そうか(笑)。


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