見出し画像

比喩を使って、メインメッセージの「説得力」や「本当っぽさ」を高める ~映画「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」の場合

リーバ「(斬新な新メニューを出したいというシェフのカールに対して)いいか?ストーンズがコンサートで『サティスファクション(Satisfaction)』をやらなかったらどう思う?客は満足するか?」

カール「(小さく)いいえ……」
リーバ「そうだろ?客は暴動を起こすぞ」「客が求めているのは定番メニューだ」

映画「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」




◆概要

【比喩を使って、メインメッセージの「説得力」や「本当っぽさ」を高める】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。


◆事例研究

◇事例:映画「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」

▶1

本作の主人公はカール(40代後半頃の男性)。

彼は、確かな腕を持つベテラン料理人である。


ある日のことだ。

・Step1:カールが料理長を務めるレストランに、著名な料理評論家が来ることになった

・Step2:カールは気合を入れる。よーし!素晴らしく斬新な新メニューを投入して、あの評論家を唸らせてやるぞ!


ところが、

・Step3リーバ(レストランのオーナー)は反対した「今夜来るのは大物評論家だ。彼のブログにはすごい影響力がある」「新メニューなんか止めて、いつもの人気メニューを出すべきだ!」

・Step4:カールは反論する「あのメニューは確かに人気だが、しかしもう5年も変更していない。すっかりマンネリだ。創造性が失われている。今夜は新メニューでいくべきだ!」

・Step5:2人は口論になる。次第にヒートアップしていく。


そしてやがて、

・Step6:リーバが言った「いいか?ストーンズがコンサートで『サティスファクション(Satisfaction)』をやらなかったらどう思う?客は満足するか?」

※補足:「サティスファクション(Satisfaction)」は、世界的な人気バンド「ローリング・ストーンズ」の代表曲の1つ。


・Step7:カールは小さく答える「いいえ……」。

・Step8:リーバは続ける「そうだろ?客は暴動を起こすぞ」「客が求めているのは定番メニューだ」「シェフはきみだからな、好きにするといい。だが私はヒット曲を勧める」。

・Step9:カールは不承不承うなずいた。そして部下たちに指示を出した「いつもの人気メニューでいくぞ!」


▶2

ご注目いただきたいのは、「いいか?ストーンズがコンサートで『サティスファクション(Satisfaction)』をやらなかったらどう思う?客は満足するか?」「客は暴動を起こすぞ」「客が求めているのは定番メニューだ」というリーバのセリフである。

要するに「『マンネリだ』『創造性がない』ときみは言うが、客が求めているのは定番メニューなんだ。今夜も定番メニューで勝負するべきだ!」とカールを説得しているわけだが――ストレートにそう言ってしまってはまずい。

何がまずいのか。

説得力がないのだ。

リーバのこのセリフをきっかけにカールは意見を変えるわけだが(上記Step9)、このままでは「あれ?直前まで『新メニューで行くべきだ!』と強く主張していたのに、なぜカールは急に翻意したんだ?」と鑑賞者は困惑、置いてけぼりになってしまうだろう。


そこで、【比喩を使って、メインメッセージの「説得力」や「本当っぽさ」を高める】という技法の出番だ。

改めてリーバのセリフをご覧いただきたい。

曰く「いいか?ストーンズがコンサートで『サティスファクション(Satisfaction)』をやらなかったらどう思う?客は満足するか?」「客は暴動を起こすぞ」「客が求めているのは定番メニューだ」。

彼は、レストランを【人気バンドのコンサート】に、メニューを【セットリスト】に喩えた

2024年現在の日本でいえば、「いいか?YOASOBIがコンサートで『アイドル』をやらなかったらどう思う?じゃあ『勇者』をやらなかったら?客は満足するか?」という具合だろう。


この結果、セリフに説得力が出た。

多くの鑑賞者は「うーむ、確かに客は不満だろうなぁ……」「なるほど。リーバの言うことはもっともだ」と感じ、カールの翻意をすっと受け入れられるようになったはずだ。

また、「比喩を使う = 比較的少ない文字数で説得力のあるセリフを作れる」ということで、物語のテンポアップにも貢献しているといえるだろう。


◆他のアイデアも見る👀

この記事が参加している募集

#とは

57,726件

最後までご覧いただきありがとうございます! 頂戴したサポートはすべてコンテンツ制作に使います!