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読書記録「神さまを待っている」

〜今日の1冊〜

今日は畑野智美さんの作品を紹介します。

文房具メーカーで派遣社員として働く26歳の水越愛。
会社の業績悪化で派遣切りに遭い、失業保険を受けながら求職活動をするが
どこにも採用されない。アパートの更新料や家賃、住民税、そして食費…
あっという間にホームレスになった愛は、漫画喫茶に寝泊まりしながら
日雇いの仕事を始め、前の生活に戻ることを目指していたが、次第に
価値観、自己認識が揺らぎ始める。
同じ境遇の女性たち、「出会い喫茶」に来る客との交流。
生きるために「ワリキリ=売春」をやるべきなのか。
ここまで追いこまれたのは、自己責任なのだろうか。
大学に進学し、勉強や就活に励み、まじめに勤めていた女性が
またたくまに貧困に呑み込まれていき、抜け出せなくなる。
著者自らの体験をもとに描いた「貧困女子」長篇小説。

Amazonより

〜読後の感想〜

※ネタバレを含みます
貧困は昔よりも現実的なものとして私達の身近に潜んでいる。
そんな今だからこそ読んでおきたかった1冊。

派遣社員で文房具メーカーに勤めていた26歳の「愛」。
彼女は、業績の悪化で派遣切りにあい、あっという間にホームレスに転落した。漫画喫茶で寝泊まりをしながら、日雇いの仕事をする日々。
そんな時、漫画喫茶にいた同年代の女性から「出会い喫茶」を紹介される。
男性に指名されて一緒に食事に行ったり、ホテルに行ったりすることでお金をもらう。
昔でいう援交のような感じなのかもしれない。
日雇いの仕事よりも簡単にお金をもらえる、ということが分かった愛は、危険なことだと知りながらも出会い喫茶へ通うことをやめられない。
学生の時の友人たちとも連絡を絶ち、母親はなくなっており、唯一の身内であった父とは連絡すらとっていない。
父親は、再婚しており新しい妻と連れ子と一緒に暮らしている。

大学まで出ていながら、派遣会社に勤め、そこから派遣切りにあってホームレスに…。
今の時代にも十分考えられることだと感じた。

「愛」には、頼れる人たちがいた。
ところが、彼女は自分からその人たちを遠ざけ、一人で解決しようともがき続ける中で、さらに抜け出せない闇へと落ちていった。
最終的には、友人に助けられ、そこから少しずつ立ち直っていく姿が描かれ物語は終わる。

もっと早く、頼ればよかったのだ。
声をあげて、助けを求めていればよかったのだ。
だが、その声を上げることがどれだけ難しいか…その気持は分かる気がする。
人は不幸にあった時、自分だけが辛く苦しい、と思いがちだ。
誰にも頼ってはいけない、一人でどうにかしないといけない、と悩みを打ち明けられない人も多くいるのだ。
「愛」がホームレスになっている間に出会った人たちもSOSを出せる相手がいなかったのだろう。

普通に仕事に行き、家でご飯を食べ、眠る、この当たり前の生活がどれだけ恵まれていることなのか、改めて思い知らされた。

「普通に生きていく」これは、すごいことなんだ。


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