マガジンのカバー画像

読書感想文

10
運営しているクリエイター

記事一覧

ザ・ソングライターズ/佐野元春(スイッチ・パブリッシング)の読後メモ

ザ・ソングライターズ/佐野元春(スイッチ・パブリッシング)の読後メモ

立教大学文学部100周年記念事業の公開講座(2009~2012)をまとめた書籍。講座のダイジェストはNHKによって番組化され、ギャラクシー賞を受賞。日本を代表する24人のソングライターへのインタビュー。

① 小田和正 佐野元春との交流・信頼関係がある。佐野元春「SOMEDAY」への評価、代表曲は「生まれ来る子供たちのために」「言葉にできない」。
② 松本隆 はっぴいえんど(細野晴臣・

もっとみる

全裸監督 第12章 要約

第12章 16歳(村西とおるが撮った主演女優の実年齢)

村西とおるが逮捕された児童福祉法違反容疑は、未成年者が姉の健康保険証を自分のものだと偽って出演したことによるのだが、判決は懲役1年、執行猶予5年だった。村西とおるの日本での逮捕歴は華々しい。1984年のわいせつ図版販売は執行猶予。1986年の関税定率法違反は罰金刑、同年の職業安定法違反、児童福祉法違反は処分保留。1988年の最初の児童福祉法

もっとみる
全裸監督 第4章 要約

全裸監督 第4章 要約

第4章 600万円(毎月警視庁刑事たちに渡していた工作資金)
警察の捜査状況を刑事たちに密かに教えてもらうための賄賂(当時、裏本を取り締まるチームが4つあり、その4つのチームに満遍なくお金をばらまいていた。打合せと称する接待とその場で渡す現金50万とか)。裏本制作者と取締り側のズブズブの関係を暴露している。

裏本を毎月20本出版できた最大の理由は、村西とおるの応酬話法の威力(女を口説くテクニック

もっとみる
全裸監督―村西とおる伝―について 本橋信宏著

全裸監督―村西とおる伝―について 本橋信宏著

文庫で850頁を超える大作(元は2016年太田出版より刊行)。著者はライター・編集者として村西とおると1984年から付き合いがある。内容がAVの世界で頂点を極めた男の話でNetflixでも映像化されているが、原作を読んでいる人は少ないのではないだろうか。Netflixに入っていないのでドラマが見れず、原作で我慢しようと文庫を購入して読んでみたら、これがとても面白かった。映像も良いが、原作の方が幅広

もっとみる

児玉隆也「淋しき越山会の女王」について

初出は1974年の文藝春秋11月号「田中角栄の金脈と人脈」2本立て特集の1つ(今読めるのは岩波現代文庫)。この特集のもう1本は立花隆の「田中角栄研究ーその金脈と人脈」。こちらの方が有名だが、当時の時代状況を知りたかったので読んでみた。

内容は面白かったが、もっとも興味深かったのは併録されていた他のルポルタージュであった。それは「チッソだけが、なぜ」という水俣病を起こした企業チッソの生い立ちを取材

もっとみる
84人の次に読む本との出会い方を案内するブックガイド「次の本へ」

84人の次に読む本との出会い方を案内するブックガイド「次の本へ」

苦楽堂という出版社発行。巻末に「次の本」に出合うきっかけ別インデックスがあり、自分はどのパターンかなと確認ができる内容。もちろん、最初から読んでいって面白そうな本をチェックしていくこともできる。また、様々なジャンルで活躍している方が紹介しているので、自分の興味のある方の読書の傾向を知り追体験することもできる。1人2冊、最初の本とそこから次の本に至った経緯を紹介する形式で、合計168冊の本の紹介にも

もっとみる
赤瀬川原平「紙がみの横顔」について

赤瀬川原平「紙がみの横顔」について

1987年から1992年のエッセー。雑誌「諸君」に連載。今から30年以上前の本だが視点が古びていない。普及し始めたワープロ・FAXと格闘している様子が今でいえばスマホと比較されて面白い。自分が当時関心を持っていた本や映画、事件などが取り上げられていて共感を覚えた。

以前紹介した川崎徹「カエルの宿」、内田裕也「コミック雑誌なんかいらない!」、小林秀雄の公演カセットテープ、宮沢りえ写真集の新聞広告な

もっとみる

本田靖春「不当逮捕」

1983年刊。第6回講談社ノンフィクション賞受賞作(ちなみに、講談社のこの賞の受賞作を年代順に読んでみたい気もする)。

読売新聞記者/立松和博逮捕の顛末記。最も驚いたのは、和博の父/懐清が関東大震災時の朴烈と金子文子を取り調べた予審判事だったことである。懐清が朴烈と金子文子を2人だけにして写真を撮らせたり(大正末年の怪写真事件として有名で映画にもなっている)、立場の弱い2人に対して好意的に接した

もっとみる
暮沢剛巳「拡張するキュレーション」について

暮沢剛巳「拡張するキュレーション」について

集英社新書の新刊。展覧会を企画する学芸員(キュレーター)に興味があり読んでみた。著者の専門は美術・デザイン評論だが、様々なテーマ(価値・文脈・地域・境界・事故・食・国策)の背景にある広義のキュレーション(価値を生み出す技術)を考察することで、知的な創造力としてのキュレーションの再定義を試みている意欲作だと思う。

取り上げられている博物館は参考になる。日本民藝館、ケ・ブランリ美術館・コンフリュアン

もっとみる

脱力系エッセーの名著「カエルの宿」

今、川崎徹はどうしているのだろう。「天才たけしの元気がでるテレビ」にも出ていたフリーのCMディレクターなのだが、1986年発行のこの超脱力系というか下ネタ満載のコントのようなエッセーを読むと、マルチタレントの草分けのような感じでもある。こんなくだらないエッセーをぶれずに首尾一貫して書ける人は、今ならリリー・フランキーぐらいしかいないのではないか。

ちなみに、エッセーのネタにされている人物は実在の

もっとみる