栞帆

何気ない日常をテーマに執筆しています。 気まぐれに更新します。 3分から5分ぐらいでさ…

栞帆

何気ない日常をテーマに執筆しています。 気まぐれに更新します。 3分から5分ぐらいでさっと読める、そんなお話達。 リクエストもお待ちしてます。 ホシワカシイタケ作品

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真っ白な月曜日

※お立ち寄り時間…3分 「真っ白…。」 仕事終わり、会社を出て広がる目の前の光景にほとほと立ち尽くす。  「月曜日だっていうのに。お呼びじゃないよ、もう。」 首に巻いたマフラーをいま一度抱き寄せ、小走りで通りの信号機へ急ぐ。何年社会人やっていても、カバンに忍ばせることを忘れる傘。ついでに天気予報もなかなか続かない。 街は、稀に見る大雪で、ある意味「息をのむほど」美しい白に包まれていた。深々と止むことを忘れた粉雪がふわふわ肩に落ちて、スノードームの中

    • 雨の日には冷えたスプーンを

      一ソファに日曜日が残っている(峰不二子編)一 ※お立ち寄り時間…5分 「母乳かミルク、どっちにする?」 「出るなら、母乳にしたいです」   とワクワクしながら答えた。 そう、峰不二子になれると聞いたからである。 たわわに揺れる胸 足元が見えなくなる胸 温泉に行くときの小ぶり(かなり)な胸をもう恥ずかしがることはないのだと、ちょっと嬉しかった。 しかしながら、この選択は、悲劇を生むこととなる。 あなたは、真夜中に自分の胸から母乳を泣きながら絞ったことがあるだろ

      • 雨の日には冷えたスプーンを

        一北朝鮮にさらわれると思っていた日々一 ※お立ち寄り時間…5分 早起きをしすぎた日だった。 カーテンを開けると、まだ夜と朝の間で、朱色の光が東の空からじんわりと広がりつつあった。 その頃は、出産して間も無い時期だった。 まだまだ産褥期で、陣痛が3日間、20時間かけて産み落とした。 つわりは、8ヶ月あり、大好きだった食事もできない。7ヶ月頃から切迫早産になり、ベットの上で過ごす日々となった。  何もかも教科書に載っていないことばかりで、不安と恐怖で体が震えていた。 自

        • 雨の日には冷えたスプーンを

          一苦くて、甘い、みずたまり一 ※お立ち寄り時間…5分 小さい頃、留守番をしていた時、寂しくないようにと、母がテレビをつけていってくれた。 好きなアニメが終わって、テレビを消そうとすると、白黒の切り絵の物語が始まろうとしていた。  タイトルは、「パンを踏んだ娘」 お使いを頼まれた女の子。 その日は、お気に入りの靴を履いて出かける。 帰り道にたまたま大きな水たまりに遭遇する。  道幅いっぱいに広がる水たまり。 どうやって帰ろうか、思案した結果、買ったばかりのパンを水たま

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        真っ白な月曜日

          雨の日には冷えたスプーンを

          一おむすびころりん一 ※お立ち寄り時間…3分 「おばあちゃんとの思い出って何かある?」 先日、ふと母に聞いた。 すると、母は、首を1回、いや2、3回捻ったあと、ぽつりとこう答えた。 「おむすび…かなあ」 若葉の時代に、ソフトボールに勤しんでいた母に、祖母は、毎朝欠かさず、おむすびとお弁当を作ってくれたそうだ。 思春期の娘には、少し恥ずかしい大きめのおむすび。 そんな母も、私が若葉の時代には、毎朝欠かさずおむすびとお弁当を作ってくれた。 祖母の時代から変わらずの、大

          雨の日には冷えたスプーンを

          雨の日には冷えたスプーンを

          一コインランドリーで待ちわびて一 朝起きて、心がどうしても言うことをきかない日がある。 深呼吸してみたり 瞑想してみたり 散歩や美味しいご飯を食べてみたり 何をしても上手くいかない日がある。 ぐるぐる回り続ける、洗濯物みたいに。 特に、1番大切だと思っている人に、気持ちが伝わらなかった時だ。  伝えたい気持ちを上手く言葉にできない  欲しい言葉は、1番大切な人からはもらえない 人を変えることは難しい。 そんな時は、「あきらめる」ことにしている。 前向きな「あきらめ

          雨の日には冷えたスプーンを

          雨の日には冷えたスプーンを

          一白線上の人生一 ※お立ち寄り時間…3分 泣きながらご飯を食べれる人はつよい お気に入りのドラマの台詞だ。 白線を見るたびに、人生みたいだなと思う。 真っ直ぐ綺麗に伸びている時もあれば 所々でこぼこしていたり ぐにゃりと曲がっていたり 良いこともあれば、悪いこともある。 神様は、乗り越えられない試練は与えない、なんてことを言う人もいる。 正直、楽しいことが続いた方がいいのだけれど。 白線からぽとりと足を踏み外したことがある。 前触れはきっと沢山あったけれど、自分

          雨の日には冷えたスプーンを

          雨の日には冷えたスプーンを

          ※お立ち寄り時間…3分 一てくてくてく一 散歩が好きだ。 気分が上がらない時 心がどうしようもなく揺らぐ時 早起きしすぎてしまった時 まだ、夜更けと夜明けの間ぐらい 身体の線がくっきりと見えるような、1番空気が眩しい時間に歩く。 てくてくてく、と。 まずは、自然の多い道を、前に進む。 見たことのない鳥や花々、朝靄、朝日が凝り固まった心を癒してくれる。 とつとつと、1日の始まりが本を開くみたいにだんだんと見えてくる。 次に、住宅地を歩く。 なるべく沢山の家が立ち並

          雨の日には冷えたスプーンを

          雨の日には冷えたスプーンを

          お立ち寄り時間…5分 一世界でたったひとつのクッキー あなたが産まれた時 嬉しいよりも解放されたという気持ちがあった。 ああ、もう痛くないんだ もう動けるんだ  もう自由にしていいんだ。 あなたが1番欲しい言葉を伝えたくて けれど、怖くなって ただ、ただ、抱きしめた 産声が、あなたの匂いが、いまもずっと離れない あなたを産んでよかったのかな。 そんな言葉が頭をよぎったことが何回もある 妊娠中は、辛かった思い出が圧倒的だ けれど 泣き声が聞こえれば、体が勝手に

          雨の日には冷えたスプーンを

          お利口さん

          お立ち寄り時間…5分 鼻水をすする。 もはや舐めていた。 両手が塞がっているから仕方がない。 なみだが止まらず、我が子のあたたかさがより一層なみだを加速させる。 気を紛らわせようと歌を歌う。 家族の歌ばかりで、またなみだが出る。 どうしようもなく愛おしいのに、どうしようもなく不安な気持ちでいっぱいになる。 大切だからこそ、あなたを守りたいからこそ、 不安な気持ちになるのだと実感する。 あなたの泣き声が甘えた歌のようで わたしのなみだを小さな体で受け止める。 大丈夫

          お利口さん

          ※お立ち寄り時間…3分 名前を小さく呼んだ 昔なら、すぐに気がついてくれた声が もう、何回か呼ばないと気がつかない。 嗚呼、遠くなっているのだ。  あと何度、名前を呼べるだろう。 あと何度、はなしができるだろう。 あと何度、笑顔を見れるのだろう。 聞き飽きた話昔話をいつか懐かしむのか。 大きなひとりごと、聞けなくなるのか。 大きく感じたあの手は、こんなにも小さくて。 苦しすぎるくらい 痛いよって言っても離してくれない  あのあたたかくて、少し窮屈な場所は いつ

          青波

          母になる、 心が揺らぐ、 オールをなくしたボートみたいに オールを見つける、 あなたが笑う、 理由なんて見当たらない涙が出る ゆっくり前に漕ぎはじめる、 どこまで行くか決めてない、 わくわくする 雨が降ってくる、 あなたを抱きしめる、 背中が冷たくて、 苦しい、 手放したくなる 傘が手向けられる、 温かいミルクがある、 顔を上げると、 優しい笑顔が見える、 また涙が出る 1人じゃない、 たくさんの優しさが広がっている、 ずっと辛いことがあっても、 その中に少しの良い

          電影

          ※お立ち寄り時間…1分半 カプセルトイをずっと回していたくなる 財布にあるもの全部 すっからかんに 手に入ったカプセルトイが 何かの役に立つかも分からない だけど、誰かの夢を、命を、繋ぐかもしれない あなたの 好き は、誰かの希望で 脈々と命を創っている とつとつと溢れる 生き場ない 濁った色が それさえも 掬ってくれる 君がいる 必要以上に踏込まず 甘いとも苦いとも癒えぬ 乾杯、さえも独りよがり 不自由とも自由とも胸を晴れぬ 子どもになれば静かすぎて おとなに

          拝啓、あの人へ

          ※お立ち寄り時間…3分 メガネを買った 今時、きっと珍しいまあるい黒縁のメガネ ほんの少し、進みすぎる時代への反抗 メガネをかけて、ぼんやりした景色がパーッとクリアになった時 あの人の心の中も手に取るように見えたら良いのにって 「好きだけど、特別じゃない。」 なんで見えないんだろうって 少しだけ俯いて いつもの私のはずなのに 手のひらに爪が入り組んでいた 思えば、好きという気持ちが、一方的すぎて まとわりついて、意地悪になっていた そっぽを向いて暮らしてるみたい

          拝啓、あの人へ

          君、炎上

          ※お立ち寄り時間…3分 一瞬だった。 君から目が離せなくなった。思わず呼びかけると、細い線がゆっくりこちらを向いた。 君は、透き通っていた。向こう側が見える程に。 ほどなくして、君と恋人になった。君との毎日は、何をしても素晴らしいものだった。 幸せの色を集めて、君の服を作ろう。 全ての光を集めて、君の居場所を。 どんなに暗い場所でも、すぐに君のもとへ駆けつけられるように。 幸せだ。 しばらくして、君は遠慮がちにこう言った。 「火が好きなの。」 それから、週

          君、炎上

          ココアくんと君と

          ※お立ち寄り時間…3分 いつも閉店間際だった。 ギリギリになって買いに来る。10代と20代の間ぐらいの男の子が、とびきり甘いココアをひとつ。 素顔は、何一つ知らない。名前も、職業も、もちろん嫌いな食べ物も。きっと好きな飲み物は、「ココア」なんだろうけど。 定休日以外は、毎日、閉店までのおおよそ30分の間に必ず息を切らしてやってくる。まるで、小さなレトリバーみたいにやってくるから、「ココア」くんと名前を付けている。 なんだか、いつの間にか会える

          ココアくんと君と