栞帆

何気ない日常をテーマに執筆しています。 毎週 月曜日or日曜日に気まぐれに更新します。…

栞帆

何気ない日常をテーマに執筆しています。 毎週 月曜日or日曜日に気まぐれに更新します。 3分から5分ぐらいでさっと読める、そんなお話達。 リクエストもお待ちしてます。 ホシワカシイタケ作品

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真っ白な月曜日

「真っ白…。」 仕事終わり、会社を出て広がる目の前の光景にほとほと立ち尽くす。 「月曜日だっていうのに。お呼びじゃないよ、もう。」 首に巻いたマフラーをいま一度抱き寄せ、小走りで通りの信号機へ急ぐ。何年社会人やっていても、カバンに忍ばせることを忘れる傘。ついでに天気予報もなかなか続かない。 街は、稀に見る大雪で、ある意味「息をのむほど」美しい白に包まれていた。深々と止むことを忘れた粉雪がふわふわ肩に落ちて、スノードームの中にいるようだった。 あの日も

    • 電影

      ※お立ち寄り時間…1分半 カプセルトイをずっと回していたくなる 財布にあるもの全部 すっからかんに 手に入ったカプセルトイが 何かの役に立つかも分からない だけど、誰かの夢を、命を、繋ぐかもしれない あなたの 好き は、誰かの希望で 脈々と命を創っている とつとつと溢れる 生き場ない 濁った色が それさえも 掬ってくれる 君がいる 必要以上に踏込まず 甘いとも苦いとも癒えぬ 乾杯、さえも独りよがり 不自由とも自由とも胸を晴れぬ 子どもになれば静かすぎて おとなに

      • 拝啓、あの人へ

        ※お立ち寄り時間…3分 メガネを買った 今時、きっと珍しいまあるい黒縁のメガネ ほんの少し、進みすぎる時代への反抗 メガネをかけて、ぼんやりした景色がパーッとクリアになった時 あの人の心の中も手に取るように見えたら良いのにって 「好きだけど、特別じゃない。」 なんで見えないんだろうって 少しだけ俯いて いつもの私のはずなのに 手のひらに爪が入り組んでいた 思えば、好きという気持ちが、一方的すぎて まとわりついて、意地悪になっていた そっぽを向いて暮らしてるみたい

        • 君、炎上

          ※お立ち寄り時間…3分 一瞬だった。 君から目が離せなくなった。思わず呼びかけると、細い線がゆっくりこちらを向いた。 君は、透き通っていた。向こう側が見える程に。 ほどなくして、君と恋人になった。君との毎日は、何をしても素晴らしいものだった。 幸せの色を集めて、君の服を作ろう。 全ての光を集めて、君の居場所を。 どんなに暗い場所でも、すぐに君のもとへ駆けつけられるように。 幸せだ。 しばらくして、君は遠慮がちにこう言った。 「火が好きなの。」 それから、週

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        真っ白な月曜日

          ココアくんと君と

          ※お立ち寄り時間…3分 いつも閉店間際だった。 ギリギリになって買いに来る。10代と20代の間ぐらいの男の子が、とびきり甘いココアをひとつ。 素顔は、何一つ知らない。名前も、職業も、もちろん嫌いな食べ物も。きっと好きな飲み物は、「ココア」なんだろうけど。 定休日以外は、毎日、閉店までのおおよそ30分の間に必ず息を切らしてやってくる。まるで、小さなレトリバーみたいにやってくるから、「ココア」くんと名前を付けている。 なんだか、いつの間にか会える

          ココアくんと君と

          雨の日には冷えたスプーンを

          ―かわいくもなく、あざとくもないなら、いっそしたたかに― ※お立ち寄り時間…5分  「私、サファリパークのトラになりたいんだよね。」  真っ白な肌に、真っ赤なルージュを躊躇いなく引いていたYは、おもむろに私に話し始めたことがあった。当時、「ナチュラルメイク」や「すっぴん風メイク」なんかが流行りだしていて、そんなものどこ吹く風と好きなものを身につけるYが非常に眩しく見えたものである。 「サファリパークのトラ?」 「そう、サファリパークのトラ。」 なんと言葉を繋いだら

          雨の日には冷えたスプーンを

          雨の日には冷えたスプーンを

          ―秘密のある夜更かしは、結構楽しい― ※お立ち寄り時間…5分  「昔、嫌いな食べ物ってなんだった?」 ほんの少し、関係を進めたい時、この質問をする。 ピーマン、トマト、椎茸、グリンピース、コーヒー等、多種多様な回答がある。歳を重ねるにつれて、「嫌い」だった食べ物が「苦手」となり、「好んでは選ばない」まで落ち着き、「食べれる」まで昇格し、遂に「好き」に進化を遂げることもある。それは、段々と味覚も大人になっていくからかもしれないが、それ以外の理由もあると思う。  昔、食べ

          雨の日には冷えたスプーンを

          雨の日には冷えたスプーンを

          ー「気になる」なんて、洋服選びと一緒ですね ー ※お立ち寄り時間…5分 「あなたは、ずっと私の憧れです」 小学校の卒業式の前日、人生で初めてラブレターを貰った。女の子からだった。Mちゃんという子で、委員会が一緒だった。 初めてラブレターを受け取った時は、どうしたらいいのか分からなかった。 だから、彼女の気持ちに「YES」も「NO」も言わずに、ただ沈黙を貫いた。 その後、中学、高校、大学と階段を登るにつれて、自分が女性から一種の「好意」ないし「憧れ」の類を

          雨の日には冷えたスプーンを

          雨の日には冷えたスプーンを

          ーヨーグルトの賞味期限が切れる前にー ※お立ち寄り時間…3分 言葉にならないモヤモヤとした感情 時々やってくる、あの感覚 カポーティは、Redと 村上春樹は、体のまわりを吹きすぎていく風と 私は どうしようもなく誰かに会いたくなる このままブレーキを加速して赤を越えたくなる 寂しさと狂気の間にある感情 この得体の知れぬ感情 この世界は、私の知らないもので溢れていて きっと、教科書に出てきた半分も知り得ていない 教師は、幾度となく同じことを繰り返し言うのに 肝心

          雨の日には冷えたスプーンを

          ブルーの先は一方通行で4

          ―青は、藍より青し― ※お立ち寄り時間…5分 幼馴染のつかさが大の字になって寝ている。明日から夏休みだと言うのに、辛気臭い奴だ。 「やっぱり、聞いてたのか」 ほんの数分前、ある種の恋敵でもある『橘先輩』から恋愛相談を受けていた。 橘先輩は、知らない人はいないくらいの美人で、言わばマドンナ的存在だ。理由は分からないけど、何故か『橘先輩』から好意を寄せられていて、何だかんだ授業が終わると、一緒に図書室に行き、他愛もない話をし、お昼休みには、中庭でお昼ご飯を食べたりした。

          ブルーの先は一方通行で4

          ブルーの先は一方通行で3

          ―ゆく夏と手持ち花火― ※お立ち寄り時間…5分 「これで最後ね。」  あゆむは、そう言って線香花火を差し出した。縁側に座る、俺と橘先輩に。 「佐久間さん、ありがとう。」 「いーえ。火、付けますね。」  相変わらず、あゆむは橘先輩と仲がいい。 そして橘先輩は、あゆむに多かれ少なかれ好意を寄せていると思う。 本当は、橘先輩と二人きりで花火大会に行く予定だった。けれども、例のごとく次々と中止、思ってた以上に寂しい、静かな、ひとりぼっちの夏になっていた。 橘先輩を連れ出

          ブルーの先は一方通行で3

          ブルーの先は一方通行で2

          ※お立ち寄り時間…5分 ―袖うち振りし 心知りきや― 学校の図書室は、少しばかり特別だった。 図書室は、離れにある小さな林の中にあった。初代校長がこよなく書物が好きで、退職時に寄贈したと言われている。 運動部が練習しているグラウンドを横目に、飽きることなく図書室へ向かう。部活動中は、ほとんど人が来ない。人が苦手な私にとっては、隠れ家のような存在だ。 最近、建てつけの悪くなった扉を開ける。窓の一部がステンドグラスになっており、細部にこだわりのある図書室だ。ほんの少し埃くさ

          ブルーの先は一方通行で2

          ブルーの先は一方通行で

          ※お立ち寄り時間…5分 ーそうめん、食べれるようになったよー 終わった。 まだ、8月の上旬、夏真っ盛りだと言うのに音も気配もなく、俺の夏は崩れ去った。 もはやホラーだ。 さっき、コンビニで買ったアイスキャンディーは、見事にハズレで、後ろにふらついたはずみで犬のフンを踏んだ。さっきしたばかりみたいだった。乾いてろよ。 本当にツキが尽きたみたいだ。 「おーい!つかさー!」 あまりの耐え難い苦しみにクラクラしていた頃、うんざりするほど聞き慣れた声が俺を捉えた。 「そ

          ブルーの先は一方通行で

          雨の日には冷えたスプーンを

          ※お立ち寄り時間…5分 –ビールのおつまみは枝豆でなければならないのか– この間、下半期の占いを見ていた時、ふと感じたことがある。 〇〇座の女性×◎◎座の男性→相性100%!!!!!!! はて、なぜ「女性」と「男性」だけの組み合わせなのだろうかと。 人間の性を構成する要素は、身体の性別、心の性別、性的指向、性別表現がある訳で、そもそも二分されるものではない。性は、グラデーションであり、どちらか一方に属するわけではないのだ。 聖書を見ても、アダムとイヴは同時に作ら

          雨の日には冷えたスプーンを

          花びらの案内人

          ※お立ち寄り時間…5分 昨夜は、ひどい雨だった。 梅雨も明けたというのに、時々、世界中の悲しみをまとめてひっくり返したかのような雨が降る。それでいて、次の日はすっかり元気だ。神様のストレス発散というところか。 「あれ…?まただ。」 いつからだろう。玄関の前にばらの花束が届けられるようになっていた。決まって、日曜日の早朝だった。 不思議と気味が悪いとは思わなかった。というのも、指を切らないようにトゲが丁寧に切られていたからだ。 昔、何かの映画で、好きな人に毎朝焼きたて

          花びらの案内人

          昨日の今、明日の今

          ※お立ち寄り時間…5分 「ねえ、あなたお腹すいてない?」 突然の夕立に右往左往していた私に、小柄だけどちょっと横幅のあるマダムが声をかけてきた。 「え?」 「ラザニア、作りすぎちゃったの。」 「ラザニア?」 「そう。雨宿りがてら食べて行かない?」 細い窓の隙間から、さあ、いらっしゃい、と誘うように、食欲のそそる香りが鼻先をくすぐる。どうやら、不覚にも雨宿りをしていたのは、他人の軒先だったらしい。 雨宿りまでさせてもらって、ご飯をご馳走になるなんてとんでもないと、覚え

          昨日の今、明日の今