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雨の日には冷えたスプーンを

一おむすびころりん一

※お立ち寄り時間…3分

「おばあちゃんとの思い出って何かある?」

先日、ふと母に聞いた。
すると、母は、首を1回、いや2、3回捻ったあと、ぽつりとこう答えた。

「おむすび…かなあ」

若葉の時代に、ソフトボールに勤しんでいた母に、祖母は、毎朝欠かさず、おむすびとお弁当を作ってくれたそうだ。
思春期の娘には、少し恥ずかしい大きめのおむすび。

そんな母も、私が若葉の時代には、毎朝欠かさずおむすびとお弁当を作ってくれた。
祖母の時代から変わらずの、大きめのおむすび。

同じクラスの男の子に、おっきくない?
と言われて、何度かサイズの交渉をしたけど
3日で普通の元の大きさに戻った、大きめのおむすび。

祖母は、私が3歳の頃に天国に行ってしまった。 

写真も離れて住んでいたから、1枚ぐらいしかない。まあるい眼鏡をかけたおばあちゃん。

思い出は、母や父から聞く思い出「話」しかない。

穏やかな人で、菩薩と呼ばれていたこと
曲がったことは大嫌いで、根も葉もない噂が流れると、怒鳴り込みにいっていたこと
蝿も嫌いで騒ぐのに、何故か蛇だけは素手で掴んで退治していたこと
私の布おしめを手作りで作ってくれたこと

おむすび

この間、久しぶりに作ってみたら
夫から「相変わらず、大きいね」と言われた。
祖母のことは、話でしか知らなかったけれど、なんだか嬉しかった。

「大きめのおむすび」が自然と受け継がれていることが。

話だけでなく、ちゃんと形のある思い出が、体の中にあったことが。

そんなことを母に話したら、何言ってんのよと言わんばかりにこう言われた。

「あなたの瞳は、おばあちゃん譲りよ」

近すぎて気が付かなかった。
おばあちゃんとの思い出。
ずっと側にあった思い出。 

なんだ、鏡を見たらいつでも会えるじゃんか。

おばあちゃん。 

そう思うと、嬉しくて涙がでた。

近い将来、我が子におむすびとお弁当を作る日がくるだろう。
祖母や母みたいに、料理が得意ではないから、レパートリーもすぐにレギュラー化してしまいそうだ。

けれど

「おむすび」だけは、少し大きめ。

ずっと変わらない愛の思い出。
もしかしたら「もう少し大きくして」って言われるかもしれないけど。

ちなみに、瞳は、誰に似るのか、今から楽しみで仕方がない。

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