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※お立ち寄り時間…3分

名前を小さく呼んだ
上手に声が出なかった

昔なら、すぐに気がついてくれた声が

もう、何回か呼ばないと気がつかない。
嗚呼、遠くなっているのだ。 

あと何度、名前を呼べるだろう。

あと何度、おはなしができるだろう。

あと何度、笑顔を見れるのだろう。

聞き飽きた昔話、いつか懐かしむのか。
大きなひとりごと、聞けなくなるのか。
大きく感じたあの手は、こんなにも小さくて。 

じんわりと、視界がぐらつく、ほろほろと。

苦しすぎるくらい
痛いよって言っても離してくれない 
あのあたたかくて、少し窮屈な場所は
いつかお別れになるのか。

辛いことがあった日、何も言わなくても
好物を用意して待っててくれた。

嬉しいことがあった日、
誰よりも近くで喜んでくれた。 
笑うと線になって、目じりに涙が滲んでた

喧嘩した日、
私を憎んでもいい、恨んでもいい
私は、あなたをずっと大好きでいると
泣きながら言ってくれた

落ち込んでいた日、
帽子のつばをグッとあげるように
口角上げて、上を向いてごらん、と
優しい声で言ってくれた

朝起きて母の顔を見る
こめかみがツンと鳴る

ぼろぼろになっても
傷つけられても
毎朝、必ずおはようと言ってくれる

人生ごと許してくれる優しさで
また、新しい1日が始まる

どちら様?と聞かれる日が来るまで
遅かった、と後悔したくないから


聞き間違いも、ずれた会話も、煩わしい時間も
全部、全部、抱きしめておこう。

「また、あなたの娘に生まれたいな」 
「そしたら、またあなたを探しにいくね」 

躊躇なく、とびきりの笑顔で答えてくれた。

ありがとう、大好きだよと素直に言える日まで

もう少し

いや、五月蝿いなあと言われるまで

側にいさせてね、ママ

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