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真っ白な月曜日

「真っ白…。」
仕事終わり、会社を出て広がる目の前の光景にほとほと立ち尽くす。
「月曜日だっていうのに。お呼びじゃないよ、もう。」
首に巻いたマフラーをいま一度抱き寄せ、小走りで通りの信号機へ急ぐ。何年社会人やっていても、カバンに忍ばせることを忘れる傘。ついでに天気予報もなかなか続かない。
街は、稀に見る大雪で、ある意味「息をのむほど」美しい白に包まれていた。深々と止むことを忘れた粉雪がふわふわ肩に落ちて、スノードームの中にいるようだった。
あの日もこんな感じだったような。
ふと、もう線ぐらいしか残っていない輪郭のブレたビターな記憶がじわじわと足先から広がる。さよならから1番遠い時間が流れていると思っていた。好いていた。すっからかんに。
帰り道にふらっと行ける距離だったのにな。
「いけない、本当にブルーマンデーになっちゃう。」
ゆるく重たい思い出のスイッチを切って、気合を入れていつもの場所へ向かおうとした時、聴き覚えのある声がどことなく落ちてきた。
「あかりさーーーーーーーーーーーーーん!」
後ろを見ても誰もいない。左右を見ても誰もいない。ついに仕事のし過ぎかとこめかみを押さえていると、先ほどよりもひとまわり大きな声が放り込まれた。
「こっちです!あかりさーーーーーーーん!」
中央分離帯の向こう側で手を振るのが見える。
「え、三島くん…?」
「送っていきます!待っててーーーーーー!」
三島くんは、右にウィンカーを出すと、通りを抜けて、わたしの元へいそいそと車を走らせた。
「なんで、月曜日なのかな、今日は…。」
マフラーで崩れた髪の毛を手ぐしで整える。いつもより呼吸が少しうるさい。昨日、美容室行って良かった。頬が上がるのが分かって咄嗟にうつむく。まだ、誰にもバレたくない。
真っ白な月曜日。嵐がやってきて、年下の君が走る。有り余るほどの真っ白な君が。

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