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書籍解説No.17 「異性の心を上手に透視する方法」

こちらのnoteでは、毎週土曜日に「書籍解説」を更新しています。
※感想文ではありません。

本の要点だと思われる部分を軸に、私がこれまで読んだ文献や論文から得られた知識や、大学時代に触れた社会学、趣味でかじっている心理学の知識なども織り交ぜながら要約しています。
よりよいコンテンツになるよう試行錯誤している段階ですが、有益な情報源となるようまとめていきますので、ご覧いただければ幸いです。

それでは、前回の投稿はこちらからお願いします。

そして、17弾の今回は【異性の心を上手に透視する方法】です。


こちらは、愛着障害と3つの愛着スタイルについて綴った前回の記事の続編にあたる内容となっています。

あくまでも主観ですが、タイトルと内容が若干ミスマッチに感じられたので補足をすると、本書では人間が誰しも抱えている「愛着スタイル」の特性を深掘りし、それを基に自分と相性のよいパートナーを見分けるための方法が解説されています。

愛着スタイルとは、人間が対人関係を形成する場面でみられる心理的な傾向をいい、これは幼少期の関わり合いをベースに形成されていきます。
そして、愛着スタイルは大きく「安定型(Secure)」「回避型(Avoidant)」「不安型(Anxious)」の3つのタイプに分かれ、誰しもがもれなくいずれかに該当する愛着スタイルをもっています。
(詳しくは、前回の投稿をご覧ください)

こうして幼少期に形成された愛着スタイルは、大人になってからの対人関係のスタイルや親密さの求め方、仕事や人生に対する姿勢など、あらゆる場面で大きく影響を及ぼします。

自身と相手の愛着スタイルを知ることは、つまるところ備えているOSを知るようなものです。そして恋愛の場面においては、パートナーとの交際を続けるべきか終えて次に進むべきかを見極めるための合理的な判断材料になります。

【3つの愛着スタイル】

以下、3つの愛着スタイルを簡単にまとめます。

●安定型 ― 率直さと前向きな姿勢をもつ
自分が愛着し信頼している人が、自分をいつまでも愛し続けてくれることを確信している。
人の反応にあまり左右されず、愛情を失ってしまうことや嫌われてしまうことなどを不安に思い悩むことがない。仕事と対人関係のバランスが良く、ストレスを溜め込みにくい。

●回避型 ― 葛藤を避けようとし、距離を置いた人間関係を好む
親しい関係や情緒的な共有を心地よいとは感じず、むしろ重荷に感じやすいことから、交際相手がいても常に距離を置こうとする。
情動的な強い感情を抑えるのが得意で、それに囚われることがない。また、自己開示を避ける傾向があることから、(とりわけ喜びや関心の)表情や感情表現が乏しい。

●不安型 ― 否定的な感情に囚われやすく、嫌われることを恐れる
「愛されていたい」「認めてもらいたい」という気持ちが非常に強く、拒絶されることや見捨てられることに極めて敏感であり、「嫌われていないか」と不安に苛まれている。
恋愛モードに発展しがちで、相手と親しくなることが恋愛関係や肉体関係に結びつきやすい。加えて、相手と親密になるほど「見捨てられる」という不安が強まり、猜疑心や嫉妬心が燃え上がる。

上で述べた3つの愛着スタイルは、多くの場面において考え方が異なります。
以下、本文から引用したものです。

・親密さの度合いや、どのくらい一緒の時間を過ごしたいかということ
・意見の違いへの対応の仕方
・セックスについて
・自分のニーズや希望についてのコミュニケーション
・パートナーシップに対する期待

3つの愛着スタイルを分ける最大の要素の一つは「相手との親密さへのニーズ」が異なるという点です。
安定型は相手に合わせて距離感を調節することで比較的誰とでも打ち解ける一方、回避型は親密さを重みに感じることから深い関わりを避け、不安型は嫌われたり距離を置かれたりすることを恐れることから、ときには過度に密接な関係を求めます。
まずは、このようなニーズの違いが衝突を生むというポイントを理解することで、パートナーシップを新たな視点からみることができます。

ちなみに、相手の愛着スタイルは日常の何気ない振る舞いやコミュニケーションから判別することができます。相手のそれを読み解くには、本著のなかにある診断項目を頭に入れながら、相手の行動をよく観察し、耳を傾けることです。

【最良の相性、最悪の相性】

続いて、愛着スタイルに基づく相性診断です。
ここまで読んで察した方もいるかもしれませんが、上述した愛着スタイルにはそれぞれ相性の良い・悪い組み合わせがあります。以下、組み合わせによる相性をまとめたもので、ここでは①から④までを解説します。

①安定型 ― 安定型 〇
②安定型 ― 回避型 △+
③安定型 ― 不安型 △+
④回避型 ― 不安型 ×
➄回避型 ― 回避型 ×
⑥不安型 ― 不安型 △

①安定型 ― 安定型
いうまでもなく、最も安定した関係性を築くことができます。
お互いに正直な愛情表現をし、2つの不安定型のタイプの特徴でもある相手を惑わせるような言動もしないことから、健康や幸せを享受できる可能性が高い組み合わせです。

②安定型 ― 回避型 ③安定型 ― 不安型
安定型の人は親密さを恐れず、意図的に距離を置こうともしないため、2つの不安定型のタイプの人にも良好な影響を与えます。よって、回避型及び不安型のパートナーとでも関係を築いていける可能性があります。
ただし、回避型及び不安型の人は相手に甘えるのではなく、愛着スタイルを安定型に近づけることで、関係もより安定していきます。

④回避型 ― 不安型
組み合わせのうちで、最も不安定な関係です。その理由は「親密さのニーズの違い」が原因にあります。
「心理的・物理的に距離を置きたい回避型」と「密接な関係性を求める不安型」では、両者のニーズが一致しないことは言うまでもありません。不安型の人が親密になろうとアプローチをすれば、回避型の人はそれに距離を置こうとし、それに刺激されて更に強いアプローチをする。
このように、回避型と不安型では関係が落ち着くどころか悪化の一途を辿ることになります。

「安全基地」の役割を果たさないパートナーとの生活は、心理的な満足度が低くなるだけではなく、常に不安と緊張を抱えながら生活することになるため、ときには病気を誘発し、健康を害する能性があります。
つまり、適切なパートナー選びは自己肯定感や、ポジティブな気持ち、夢や目標に向かって頑張ろうとする意志にまで影響を与えます。お互いにとって「安全基地」となりうるパートナーシップであれば、ポジティブな影響を与え合い、健康と幸せを謳歌できるでしょう。その逆もしかりで、そうでないパートナーと一緒にいると、人間的な成長に悪影響を及ぼし、健康も脅かされるかもしれません。

【「安定型」になるには】

アタッチメント理論を提唱したJ.ボウルヴィ博士によると、アタッチメント・タイプは幼少期の親との交流から形作られるといいます。
詳細は前回の記事に書きましたが、幼少期の養育環境が成人後の対人関係及び夫婦関係の維持、そして子育てに影響し、その結果として再び子ども自身の愛着の問題へと繋がっていく可能性があります。

「自身の愛着スタイルは変えられないものなのか」
「成人してから安定型になることはできるのか」
「不安型(回避型)の私は安定型以外の人としか交際できないのか」

このような問いに対して、幼少期の養育環境や対人関係が大きく影響を与えることは間違いありませんが、「自身の愛着スタイルは、成人後にも努力次第では変えられる」と著者はいいます。

第一として、本著に書かれている診断をし、パートナーとの関係で自身が取りがちな行動の裏にあるワーキング・モデルに気が付くことが必要です。自身の過去の言動を振り返りながら、ワーキング・モデルを作り替えていくというわけです。
そして次に、安定型タイプのお手本となるパートナーを探し、交際を続けるなかで安定型の言動を真似することです。
いずれも意識的に行わなければならないことから、少なからず努力を要しますが、愛着スタイルを安定型に近づけることはできます。

【まとめ】

「我々が幸せになれるかどうかは、愛情を注ぐ対象の質によって左右される」

オランダの哲学者スピノザの言葉です。
幸せや健康を手に入れられるか否かは、愛情を注ぐ対象たるパートナー選びにかかっているのです。

そのパートナー選びのために必要なことは、自分の愛着スタイルと相手の愛着スタイルを知り、それをもとに相性を判断することです。これにより、高最初期の段階で、末永く関係を保てるかどうかを見極められるはずです。
もし、付き合って日が浅いにも関わらず親密さについて頻繁に衝突している場合は、パートナーシップを手放すことが有力な選択肢として挙げられます。
そして、パートナーシップに対する自身のニーズや期待を正直に伝え合うことが、自分と相性のよいパートナーを見つける最短の方法です。そのニーズについて相手が真剣に考えてくれているのか、それともわがままだとして取り合ってくれないのか、その反応が交際を続けるか否かを判断する材料となります。

前回の記事でも綴りましたが、幼少期の養育環境は成人後の対人関係及び夫婦関係の維持、そして子育てに影響し、その結果として再び子ども自身の愛着の問題へと繋がっていく可能性があります。
そのような負の連鎖を断つためにも、愛着障害を抱える人は、自分のところで克服することが重要になると著者はいいます。

また、個人の性格特性は、半分が遺伝、半分が環境(人間関係)をもとに構成されています。
先天的なものである遺伝は、言うまでもなく変えることはできません。しかし、「愛着」は守ることができる要素です。そして、繰り返しになりますが「愛着スタイル」は生涯にわたって影響が持続するものです。
親が、子どもの愛着形成のためにできることは、家庭で愛情をもって育て、よりよい養育環境を創出し、人間関係を構築する機会を保障することです。そうした良好な養育環境を子どもに提供するために、まずは愛情を注ぐ対象たるパートナー選びが重要になってくることは間違いありません。

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