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短歌

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#現代短歌

連作短歌「まくらもと」

連作短歌「まくらもと」

そうなったからこうしてるという説明を夢のあなたに聞かせてもらう

あまりにも素朴でクールな返信に普通そうだよねと思い出す

すでに不利そうなルートを走りつつあるような気がするディスプレイ

第二歌集『鬱と空』 奥村晃作鑑賞【前半】

第二歌集『鬱と空』 奥村晃作鑑賞【前半】

現代ただごと歌の提唱者として著名な歌人、奥村晃作の歌集を第一歌集から鑑賞。前回は第一歌集『三齢幼虫』、今回は第二歌集、『鬱と空』です。

奥村晃作 

1936年生まれ。長野県飯田市出身。宮柊二に師事。元「コスモス」編集委員・選者。江戸時代の近世和歌の研究を通じて「ただごと歌」を世に認知させた。「現代ただごと歌」を提唱し、実践。現在、第18歌集『象の眼』を準備中。毎日Twitterで新作の歌を発表

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『みじかい髪も長い髪も炎』

『みじかい髪も長い髪も炎』

生まれて初めて歌集を買ってみた!短歌は国語の授業でしか読んだことがない。しかし高校時代、Twitterで短歌をひたすら呟き続けるアカウント「短歌bot」のツイートに見た一つの作品に心惹かれた。作者は平岡直子さんというらしい。

2021年、そんな平岡さんの歌集が出ていると知り、いてもたってもいられず大学生協に頼んで購入。前述の通り短歌に詳しくもなく、さらには高校を卒業して以降、文学とあまり関わりも

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連作短歌「電波塔」

連作短歌「電波塔」

広く広くがモットーのあなたから最近ぜんぜん連絡がない

引っ越せばいろいろ変わると思ってるひとに美味しいビールを奢る

そうだよと答えた 君はいつだって一人になろうとしてると言われ

連作短歌「凪」

連作短歌「凪」

苦しさを避ける術ならまかせてよ、それ以上なら他所へ行きなね

実家から送ってもらったCDのケースが空でそのまま走る

もんじゃ焼きを食べながら再確認した趣味の話もただのハリボテ

連作短歌「生成について」

連作短歌「生成について」

現状を肯定しようとするような言葉ばかりが湧き上がってきます

もう何も同じではない花束を抱えたときの刺激ときたら

大丈夫 だれかにとってやさしさを意味してくれる十本の線

連作短歌「光っているもの」

連作短歌「光っているもの」

水筒のフタがコップになるようにいまも天真爛漫ですか

消費税とおんなじ年に生まれたという青年のKindle白い

挨拶がやけにやさしい水曜の雨に降られてタイヤも光る

同僚が立ったはずみにころがったマウスの青い光が夢に

クッキーが入ってたカンカンをペンたてにしていることがばれそう

むかし鳥飼っててんけど死んじゃってその日に受験受かった話

出たことのない国にいて海を見て想像のなかだけの生活

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歌集を買って読む

歌集を買って読む

 短歌って面白い。
 それに気が付いたのは、枡野浩一を読んでからだった。

 ハッピーロンリーウォーリーソングと題された文庫本を、ごくなんとなく買ったのだ。

 真っ白な表紙にそっけない手書きで、タイトルと作者名だけが書かれている。本を傾けて小口を眺めると、カラフルな色紙で本文が構成されているのが分かる。パラパラとめくると、見開きに一行だけの短歌と、なんてことない風景の写真が載っている。

 この

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【300首】有名な現代短歌をいっぱい紹介したい!!!

【300首】有名な現代短歌をいっぱい紹介したい!!!

こんにちは。歌人の工藤吉生です。

とつぜんですが、現代の短歌って、どんなのがあるんでしょうか???

短歌に興味をもちはじめたばかりの方のための、現代短歌まとめをつくりました。

この記事だけで約70人の歌人の約300首の短歌が読めますので、たっぷり楽しんでいってくださいね!

どの時代から「現代短歌」なのかというのはいろいろな考え方がありますが、ここでは2024年現在で65歳以下の方(1959

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現代短歌の前線をキャッチアップしたい

現代短歌の前線をキャッチアップしたい

病院の待合室で日焼けしたカバーの『サラダ記念日』を見た(31文字)。それで昔だいすきだった歌のことなど思い出されて、現代短歌の前線が今どうなっているのか気になりはじめ、調べてみました。

300首、プロの歌人が紹介している記事すぐに出てきたのがこちら。歌人の工藤吉生さんのnote記事です。

現代の歌人の、「有名な」歌を選んでくださっているというところが有り難い。しばらく短歌から離れていて、いわゆ

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連作短歌「秋の叶わない」

連作短歌「秋の叶わない」

空調の効いた小部屋で機械的に十首つくってからねむる俺

あめのおと 濡れる右肘 コンビニに二回行ったらもう終わる今日

すれ違う人の視界に映る俺 歩く瞑想みたいな初秋

連作短歌「無花果」

連作短歌「無花果」

秋めくやキャリーバッグがベージュ色 座っていれば行き着くところ

居ない部屋 夜がくるたびひらめいて古くなりゆく黒いカーテン

忘れ物したから先に行ってての本意を思う 無花果を拾う

秋の夜のカットコットン愛されているかわからん乾いた空気

九月尽写真に写真窓に窓 昔の映画に写るおばあちゃん

連作短歌「おかつぱにちようちんそでの爽やかに」

連作短歌「おかつぱにちようちんそでの爽やかに」

おかっぱにちょうちんそでの爽やかに風のともだち草にこいびと

僕たちの散歩は芝生の公園があれば休憩することになる

バドミントンしてないほうのカップルが僕らで秋の風に歓声

コンビニを出れば夜。このコンビニは卒業したら来ないコンビニ

髪の毛を乾かしながら言うことじゃないと思うし僕の部屋だし

ともだちにもどれるのかなこの夜はサワークリーム味のゆびさき

ふじばかま風に吹かれて過去になる あいづち

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連作短歌「牛腸茂雄/風の作法」

連作短歌「牛腸茂雄/風の作法」

見るは入る 知ってるような息切れと知らないような風のきもちよさ

産まれたら双子だったら鏡見るときにびっくりするんだろうな

風になった私とここで分岐して私は私で歩き続ける

手の大きい女性に抱きしめられていたような五感の澱だけがまだ

一本の毛糸を輪っかにした指が川を蝶々を風を生みだす

私以外あっち向いてる瞬間に誰かが鳴らしたシャッターの音

さっき見た落葉はずっとそこにある 塵になるまでずっ

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