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ブックオフ回顧録

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ブックオフで働いていた頃の印象に残るエピソードなど。時系列はバラバラかもしれない。
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記事一覧

ブックオフ回顧録#4「初勤務」

初の勤務日。はっきり覚えているのは、初日のトレーニング店長が担当してくれたのだが、店内を案内してくれた時、文庫本のコーナーで「小説とエッセイの違いってわかる?」と聞かれ、わからないと答えたら「小説家が書いてたら小説、エッセイストが書いてたらエッセイだよ。ガハハッ!」と言われ、いや、誰が小説家で誰がエッセイストなのかがわからんがな、と心の中でツッコミを入れたこと。そして、今ではサンドウィッチマンのネ

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ブックオフ回顧録#3 「面接」

面接の日も自転車で出かけたのだが、行きがけに高校時代に少し好意を寄せていた女の子が親が運転する車で目の前を横切り、お互いに手を振った。その子とはそれが最後の邂逅だった。偶然の巡り合いに少しドキドキしながらブックオフへ急ぐ。

面接官は30代くらいの女性だった。今まで経験したことのあるアルバイトは年末年始の郵便局の配達と、夏休みに働いた伊勢丹の倉庫。どちらも繁忙期の短期採用で、郵便局は集団面接で条件

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ブックオフ回顧録#2「応募」

お店に到着して自転車を止め、入口周辺を見渡してみると…あった。アルバイトスタッフ募集のポスターだ。どうやらまだアルバイトを募集しているらしい。ー今にして思えば4月だったのでちょうど夜の学生スタッフが入れ替わる時期だったのだー

さて、ポスターが貼ってあったので早速応募…といきたいところだが、僕はわりと慎重なところがあって、本当にここで働いていけるのかということをなるべく事前に調べておきたい。今まで

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ブックオフ回顧録#1 「1997年春」

僕はアルバイトを探して自転車で走っていた。

親の敷いたレールから外れることもできず、精一杯の抵抗として僕がやったのは駅の手前で止まることくらいだった。

止まったは良いもののどこに向かうべきか分からなかった僕は、停車したところから少しずつ駅に向かいながら別の道を探すことにした。しかし、親の敷いたレールの上に未だギリギリ止まっているとはいえ、そのまま親にお金を出させるのは申し訳なさすぎて、僕はアル

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3月11日

3月11日

あれからもう一年か。

早朝。夜行の高速バスから降りた僕は、真っ白な息を吐きながら、山の上にある仮設プレハブの陸前高田市役所を見上げてそう思った。東北の冬。冷たい風が顔に突き刺さる。僕は迎えに来る車を待ちながら一年前のことを思い出していた。

「明日のあきる野ヘルプの件なんだけど。私が車を出すので一緒に乗って行きましょうよ。迎えに行きますよ。」

そんな誘いを受けていたが、僕はあまり気乗りしなかっ

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