宇宙人ビンズとお菓子の惑星

宇宙人ビンズとお菓子の惑星

お菓子を腹一杯食べたい。我が友、ビンズが新聞を読みながらそう呟いた。私の名はベーリッヒ。私とビンズは惑星テコヘンという星の「惑星調査団」の一員だ。様々な惑星に向かっては現地を調べ、そのデータを元にテコヘンの科学技術を上げるための手助けをするのが我々の使命だ。しかし、我が友ビンズはお気楽な奴だ。仕事はしてなくはないが、側からみれば遊んでいることが大半だ。たしかに我々は宇宙船により惑星の行き来が容易で、国から調査のためどこへでも行っていいというお墨付きがある。だが、それを良いことにビンズはその日の気分で舵を取る。この間は恐竜が見たいと溶岩の湧き出る星に飛び、昨日は虹を見たいからと虹の惑星に飛び、今回は新聞を見てお菓子の惑星の情報を得て飛ぼうとしている。さて、私が何を言いたいかというと、こいつはワガママが過ぎるという事だ。新聞を閉じコーヒーを水筒に入れはじめた時点でもう行こうとしているのは明白だ。いかん、調査ではなくスイーツ巡りになってしまう。私としても長い付き合いだから多少は許してやりたいが、遊んでばかりだと国から釘をさされかねない。私はやんわりとコーヒーを取り上げようとすると、彼は華麗なステップでそれを避ける。そして私をロープで縛り付け、自分一人で宇宙船の舵を取る。


結局着いてしまった。縄を自力でほどき、宇宙船を出ると物凄い光景が広がっていた。飴で出来た木、チョコレートの池、ガムの草、そして散らばっているその他菓子類。巨大なシュークリームが岩として健在している。凄まじい光景だな、そしてその光景の隅でレジャーシートを敷き、コーヒーとともにどこからか取って来たであろう菓子たちを皿に盛り優雅にピクニックを楽しんでいる我が友。こいつやることはめちゃくちゃだが、無駄に上品なんだよな。私が近づき声をかけると、お前も食べればいいじゃないかと言われた。調べもせずによく口にできるなこいつは。あと人を縛っておきながら未知の惑星でお菓子を楽しむこの神経さは何だ?まぁ、新聞に載っている程だから危険はないのだろうが、私はとりあえず周辺を調査する事にした。


さて、まずは気候からだ。気持ちひんやりといったぐらいだ、風はない。地表は場所によって様々。飴で出来ている場所もあれば、パイやバームクーヘンで構築されている地面もある。自然は察しの通りお菓子、少なくとも塩辛そうな物はない。驚いたのは生物が1匹もいない事だ。鳥も、魚も、犬も、当然だが人もいない。不思議なものだ、生き物がいないこの星でなぜここまで大量の食物が育つ必要があるのだろうか。進化の過程で無意味なのは明白だ、おまけにお菓子だけとは。これは調査のしがいがあるな。ビンズのやつが行きたがる星々は謎が多い。やつの第六感が凄まじいのだろうか。わからん事だらけだ。さて、考え事をすると腹が減る。ちょうどよかった、ここならどこにかぶりついても美味しいものが食える。私はその辺に落ちていたゼリービーンズを拾い食べる。うん、ごく普通のお菓子だ。先程も成分を調べたが、本当にただのお菓子だ。なんで誰もいないのだろうか。私は食べ終えたあとガムの草を噛む。味は強めのミント味、案外こういうのが一番美味しく感じてしまう。私がガムを噛みながらお菓子のサンプルを採取していると、後ろから足音が聞こえる。ビンズが迎えに来たのかと思ったが違う。腕と脚が長く、胴体の部分に顔があり、目は小さいかつ赤い、そして全身は黒く、口から見える歯は黒く変色している。体の大きさは我々の2倍はある。それを見上げて思った、明らかに友好的種族ではないと。


私は息を切らしながらビンズの元へ戻る。だが、さっきの黒い生物もこちらに走ってくる。よだれを垂らし、ハァハァと大きな呼吸をしながら捕食せんと襲ってくる。なぜ食べられる事がわかるかって?前行った恐竜の星でも同じ事があったからだ!私の存在にビンズも気が付いたのか、コーヒーを飲み干し光線銃を手にする。そしてビンズは何発か撃ち黒い生物を倒した。流石はビンズだ。怠惰であるが故に、遠距離攻撃を極めた男。我々調査員も丸腰ではない。危険な星を調査する為に武器も携行している。だが、私とした事が銃の携帯を忘れていたため抵抗出来なかった。私がビンズに礼をいうと、ビンズは光線銃を手渡して来た。どういう訳かこいつ、2丁持っていた。こいつ、私の光線銃を持ち出してやがったのだ。私は彼の鼻に飴玉を詰めてやった。


我々は一度宇宙船に戻り状況を把握する事にした。ビンズが鼻に詰まった飴玉を取り出すのに必死になっている間に私は今回の件をまとめた。お菓子で構成された星に謎の黒い生き物。しかし、お菓子には目を向けず私を捕食しようとした。大量の食料があるのにどうしてそんな事をする必要があるのか。しかも、我々と同じく2足歩行の生き物だったこともひっかかる。おまけに、ビンズの読んでいた新聞には「新たに発見されたお菓子の惑星、危険度Bに指定」との記載があった。我々調査団の間で危険度Bは死人が出る恐れがある惑星という事になる。当然、危険度が高ければ調査した分報酬も高いが、ビンズの欲求には当てはまらないため本人にとってもアクシデントだったのだろう。その証拠に、もう帰ろうと言いながら鼻に詰まった飴を取り出している。たしかに、調査すべきことは多いが2人じゃ厳しい。もっと多くの人材が必要だ。するとビンズがあたふたし始めた。どうやら先程の場所に水筒を置いて来てしまったらしい。やれやれと思いつつ、目と鼻の先であるため我々は一度宇宙船から出て先程の場所に戻る。


我々は降りて信じられない光景を目にする。飴で出来た木、チョコレートの池、ガムの草、そして先程の黒い生き物たちがとある場所に群がっている。どうやら水筒のある場所のようだ。やつら、コーヒーを啜っているようだ。それも大勢で。するとこちらに気づいたのか、一斉にこちらに向かってくる。我々は急いで宇宙船に戻り、その星の上空に飛び生き物たちを回避する。


ビンズは水筒を失い悲しんでいたが、1つ謎が解けた。奴らが我々を食べようとした理由。奴らは恐らく、甘いものが食べられないのだろう。理由はわからないが、我々とコーヒーにあそこまで執着しているとなると話がつながる。するとビンズが宇宙船の外に建物があると指を指す。私もそれを見たが、たしかに金属で出来た建物だ。何かの基地だろうか。我々は先程の生物がいない事を確認し、その基地に降り立った。


基地は相当古く錆び付いていた。しかし構造がおかしい。入り口はなく、鉄塔のようなものがただそこにあるだけだ。するとビンズが爆弾を投げ壁を破壊して入口を作る。こいつ、せめてなんか言え。イラつきながらも建物に我々は入っていく。

建物の内装はお菓子にさほど浸食されてないようにも見える。だがかなり荒らされている様子で、人の気配はない。我々はあかりを付けながら少しずつ降りて探索する。どうやらかなり地下の方へ進めるようだ。作った者は随分と地下が好きらしい。

そして進むと大きなモニターと機械類が置いてある部屋に到達する。恐らく管理室の一つだろう。私は恐る恐る電源を入れると、他言語のフォルダがいくつか出てきた。解読すると、スイッツ星の言語らしい。そしてそこには「研究成果」と書かれたフォルダがあったのでそれを開くと、いくつかの動画ファイルがあった。再生するとひとりの研究者が画面の前でただ淡々と話している様子が写し出される。気になるものを再生しようと思う。


○月○日

我々は人工的に食物を作る研究をしていたが困難を極めた。1から食物を作ることは難しいと判断したため、我々は食物を生み出す生物を作る事にした。


○月○日

実験は成功だ。従来捨てるはずだった生ゴミや人の排泄物などを取り込み、それに含まれる糖を用いてお菓子として排泄する生き物の生成に成功した。これで食物の完全なるループが完成したのだ。本来であればたんぱく質や脂質で出来た食べ物を生成、排泄出来るのは1番であったが、今のところ十分な成果だ。


○月○日

今日はまた新たなデータが取れた。この生き物は食べるものの栄養や質が良いと、排泄されるお菓子もまた上質なものに変わるようだ。意外な発見だ。もしかしたら肉や魚などを食べさせたら、もっと上質なお菓子を排泄するかもしれない。試してみよう。


○月○日

実験は失敗だ。今多くの人や生き物が奴らに食べられて惑星中がパニックだ。どういう訳か繁殖力の高く、我々の手ではもうどうする事も出来ない。肉の味を知ってしまった為だろうか、贅沢なんてさせるべきではなかった。我々がまさか捕食される側になるなんて。この動画が最後になるだろう。もう、私から伝えられるものは何もない。さらばだ。


動画はこれで最後だ。つまり、あの黒い生き物はスイッツ星が生み出した化学生物であり、食べたものの糖を吸収しお菓子として排泄出来る。しかし研究の途中で与えられた肉に味をしめ、繁殖したのちこの惑星の生き物を食い荒らした。その結果、スイッツ星はお菓子で埋め尽くされ星の原型を失った。お菓子の量が凄まじい為、星自体も独特進化を遂げた、ガムの草や飴の木がそうなのだろう。その過程でこの基地は埋まってしまったらしい。とにかく、都合の良い生き物を作ろうとした結果、自分たちが餌になってしまったという事か。そして我々が食べていたのは奴らの、、、。まぁ、とりあえず謎は解けた、ひとまず落ち込むビンズを連れて我々は宇宙船に戻る。鼻に飴玉を詰めたのは、後で謝る事にする。


調査報告

スイッツ星がお菓子の惑星へと進化を遂げていた事が発覚する。今回の件で食料自給研究を進める際には細心の注意を払うよう促す。


一度過程を間違えれば元には戻らないと、惑星が教えてくれたのだから。我々テコヘンが二の足を踏む必要はこれでなくなった。




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