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この街がすき

「なんでこんな所に家を建てたんだよ!」

小学校の卒業式を終えた僕が、引っ越し先に向かう車中、
街の様子がうかがい知れるようになった峠の途中で両親にぶつけた言葉である。

千葉県の千葉市に住んでいた僕は
父親の転勤に伴い、中学から兵庫県にある赤穂郡上郡町という所に引っ越すことになった。

『赤穂』と聞くとピンとくる方も多いかもしれない。
そう!忠臣蔵で有名な、あの赤穂だ。
ただ、あの有名な赤穂は赤穂市であって、
僕が連れていかれたのは、お隣の

『赤穂郡上郡町』

という人口1万6千人前後の小さな町だった。

千葉に住んでいた頃は
・駅ビルが当たり前。
・バスが10分おきに来るのが当たり前。
・近くにゲームセンターがあるのか当たり前。
・コンビニが溢れかえっているのが当たり前。

というような環境だったわけだが、
引っ越し先の上郡町はというと

・駅ビルなんてあるわけもない。
(怒られるかもしれないが、最初駅を見た時
「なんだ、このボロ小屋は!?」と泣きそうになった。)
・バスは2時間に一本ぐらいしか来ない。
・ゲームセンター?あるわけない…
・コンビニ~~?あるわけない…

まさに、ないない尽くしの超~ド田舎だったわけだ。

シティボーイ小学生を満喫していた僕が。
花輪君ばりに前髪をかき上げて、
「よしてくれよ、ベイビー」と言っていたあの僕が。
路線バスを自家用車ばりに乗りこなしてしたこの僕が!

これからこの地で暮らしていくのかと思うと、
まさに気持ちは
「オ~~~マイガァ~~~~~!!」だった。

それこそ当時のカルチャーショックといったら、
数え上げればキリがないが、

例えば、通う中学校まで自転車通学ということ。
千葉にいる頃は中学校まで徒歩5分の距離だったから、『まじかよ!?』って感じ。
その距離5キロ。ヘルメットと安全タスキ着用。
いわゆる『ヘル中』ってやつ。ダサい…
一番遠い奴で片道12キロって同級生がいたもんだから
これには驚いた。

あとは、電車に乗って隣町まで行く時は、
先生に外出許可証なるものを発行してもらわなければならない。
→勘弁してよ

・大体の店が20時には閉まってしまう。
・車道を普通に鹿が走ってる。
・轢かれたタヌキを近所のおじさんが持って帰って
タヌキ汁にして食べちゃう。
・犬の散歩をしているオジさんの7割がズボンではなくパンツのトランクス姿。etc

決して決して決してdisってるわけではないのだが
あまりの環境の違いに本当に驚いただけなんだ。

高校卒業後に実家を出た僕は、
結局6年しかこの地で生活しなかったわけだが

なんだかんだいって

僕はこの街(町)が好きだ。

・町に流れる千種川は名水百選に選ばれており、
本当に水が美味しい。
浄水器なんてNONNONNON。

・感動で涙が出るほどに蛍が飛び交う名所がある。
まじでビューティフォーー!

・吸い込まれるぐらい星が綺麗。
天然プラネタリウムだから!

・とにかく人が温かく、尋常じゃないぐらい心穏やかに時間が過ぎていく。
時間の流れがゆるやかなんだ。

現在は東京寄りの千葉に住んでいる僕だが、
時々無性に上郡が恋しくなる時がある。

今となっては、
『素敵な所に家を構えてくれてありがとう』と
両親に感謝の気持ちでいっぱいだ。

のどかな田園風景が広がる、帰ることのできる故郷があるというのは幸せなことだ。

「なんでこんな所に家を建てたんだよ!」

と12歳の僕は吠えてしまったわけだが、

今僕は兵庫県赤穂郡にある上郡町という

『この街(町)が好きだ!!』

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