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コンディションが整っていない状態で、人と関わる危うさ

職場の就労支援施設のスタッフとして、3週間位前から新メンバーが加わった。

✳︎スーパールーキー登場?✳︎


年齢は60歳を超えていて昨年旦那さんを亡くしたと聞いていたけれど、生活を聞いてみるとバイクに乗ったり、外国語を習ったり、驚くほどアクティブ。これは期待できるかも!誰もがそう思い期待して迎えた。

けれど話してみると、出てくる言葉はその生活スタイルからは想像が出来ない位悲観的で、自己肯定感もめちゃくちゃ低く、「構ってほしい」「気にかけて欲しい」が溢れていて、利用者を押しのけて甘えてくる。とても視界に利用者さんが入っているとは思えない言動の数々。

そんなあまりのネガティブ具合に、逆に精神疾患の利用者さんがそのスタッフに「人生そんな悪いことばかりではありませんよ」なんて言っていたり、利用者さんに話を聞いてもらいながら泣きだしたり(完全に立場が逆転😂)私が別の場所で別の利用者さんと関わるなど、別の場所で別の仕事をしていると、そのスタッフが精神疾患の利用者さんに「そんなんじゃダメよ!もっと頑張んなきゃ!」などと叱咤していたり、「あなたの出来事なんて大したことないわ!私の方がずっと不幸よ」なんてマウントをとろうとしているのが聞こえて慌てて間に割って入るなど、なにか危うくて目が離せないものがある。

✳︎私の見立て✳︎

私が勝手に見立てているだけだけど、そのスタッフは、恐らくまだ旦那さんを亡くした喪失感が癒えておらず、そしてそんな自分を「こんなんじゃダメだ」と自身に必死でハッパをかけて乗り越えようとしている段階の途中にいるのだと思う。そしてこの就労支援施設で働くことにしたのも、おそらくハッパをかけている一連の流れの一環なのだろう。あるいは、あえてやる事をギュウギュウに詰め込んで、自身や喪失という事実から逃避しようとしているのか。

だから、いずれにせよ本来なら「そういう落ち込む自分をありのまま受け入れたり、夫が居ないという事実を受け入れられるようになる為にも、焦らずどこかでじっくり休んだりその喪失感を誰かと分かちあったり、自分の外側ではなく内側に目を向けて、ゆっくり時間をかけて癒されるための時間を、年単位など、ある程度まとまったスパンで取れたらいいのになぁ」と思う一方、だからこそ今彼女がやるべき事は「焦って混乱状態のままスタッフとしてこの施設に来ることではなく、必要に応じて病院にかかるなり、カウンセラーにかかるなり、日常でゆったりする時間を持つなり、とにかく落ち着いて自分自身にゆっくりと時間をかけること」なんじゃないかなぁ?と私は感じている。

✳︎援助する側のコンディションが良くないと起こること✳︎

大切な家族を失う喪失感は計り知れない。実際、臨床経験をもとにストレスレベルを研究したアメリカのワシントン大学精神科のHolmes博士が作成した「社会的再適応評価尺度」を見ても、最もダメージの大きなライフイベントは「配偶者の死」とされていて、そのスタッフが平常心でいられないのは当然の事だと思う。

また、ストレスへの対応策や傷の癒し方は人それぞれだし、私から見て「自分に無理やりハッパをかけて乗り越えようとする」という対処法が、例え功を奏していないように見えたとしても、本人にとっては精一杯の中で出した対処方法なのでそれはそれでそれで尊重したいと思う。そして何より頼まれてもない私は口を挟む立場にないので、そのスタッフの危うい言動へも否定的な言動は避け、極力立ち入らず、「まぁまぁ、ここにいる時位のんびりやりましょうよ」位の声掛けに留めて「最優先すべきは利用者さん」という立ち位置を崩さずに、(実際あくまでも「数週間先に入社しただけの同僚」という関係でしかないので)あくまでも同僚ポジションのままで様子を見守ろうと思っている。

なので冷たいかもしれないけど、私自身そこまで余裕があるわけでもないので、上司に報告と相談をしつつ、利用者さんを巻き込んで気を遣わせたり、利用者さんが自己否定するきっかけを作ったり負担をかけている時には私が割って入って話題を変えたり、会話に参加してフォローするけれど、それ以上のそのスタッフへの直接的な介入については上司に任せることにした。

そんな日々を過ごしながら、内心そのスタッフの心の底力を信じ傷が癒えるのを待ちつつ、「どちらがスタッフ、どちらが利用者とかは関係なく、人と人とはお互いにネガティブにもポジティブにも影響しあっているんだなぁ」と改めて感じている。

✳︎援助する時に前提となるもの✳︎

大切な人の別れなど、避けられないネガティブなライブイベントは誰にでも起こる。もちろんいつかは私にも。また、それ以外にも人生には大きい波も小さい波も色々ある。今までも、そしてこれからも。

今、喪失感で自分を見失っているそのスタッフを見ていると、誰かを助けようとするとき、援助する側のコンディションを整えておくことの大事さを改めてヒシヒシと感じる。そして私も自分の心と体の声を意識的に聞いて、しっかり眠り、無理をせず、自分のコンディションに敏感になろう、と改めて痛感している。

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