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はじまりの日

スマホの画像を整理していたら、一枚の写真に目がとまりました。
私が初めてメンタルクリニックへ行った日。
その日のランチに食べた、ラザニアの写真でした。

あの日、私は朝の通勤中に体調を崩し、乗換駅の椅子に座りながら過呼吸がおさまるのを待っていました。
この頃の私には過呼吸をはじめとした様々な身体反応、症状が出ており、こうして具合が悪くなるのも既に何度目かのことでした。
次の電車に乗らなければ、遅刻確定。
早く、はやく立ち上がれと、心の中で自分を叱咤しましたが、体が動きませんでした。

これはもう、ダメだ。

会社に休む連絡をした後、私は以前調べておいたメンタルクリニックへ電話をしました。
幸運なことに当日夕方であれば受付可能とのことだったので、その場で初診の予約をしました。

とうとうメンタルクリニックへ行くことになってしまった。
悲しいやら情けないやらで、駅の椅子に座ったまま、しばらく泣いていました。

過呼吸がおさまり、夕方までどう過ごそうか考えた結果、美術館へ行きそこで時間を潰すことにしました。
一度帰宅すればおそらく寝込んでしまうだろうし、そうなると再び起き上がって外出するのは難しくなる。
せっかく取れた初診の予約を、無駄にしたくない。
私は美術館が好きだし、そこなら静かに過ごせると思いました。

当時開催されていた有名なアートディレクターの企画展を観るため、私は都内の美術館を訪れました。
平日のためか空いており、静かに、ゆっくりと鑑賞することができました。
鑑賞後、何か食べなければと館内併設のレストランに入りました。
正午はとっくに過ぎていましたがまだランチタイムだったため、ランチメニューのラザニアを注文しました。
美術館のレストランともあれば、洗練された店内装飾同様、運ばれてきたラザニアはとても美しく、味もなんだか洒落ていました。
会社を休んだのに、こんな贅沢をしていいのかな…と思いつつ、なんとなく、これが最後の晩餐のような気分だったことを覚えています。

メンタルクリニックの初診で、私は適応障害と診断されました。


それから更に数か月後、私は会社を休職することになり、長い療養生活が始まるのですが、あの日のことは、今でも昨日のように思い出すことができます。
涙でぐっしょり濡れたハンカチタオルの重さや、企画展を見て回っている間もどこか空虚に感じていたことは、忘れられません。

終わりの始まりのような日でした。
でも、今振り返ると、自分を大事にできた日だったとも思います。
勇気を出して、メンタルクリニックへ行く決断ができた。
そのための行動ができた。
本当に頑張ったと思います。

そして、当時を思い出しながらこの記事を書いていたら、美術館へ行きたくなったので、今からちょっと適当に行って、近くでランチでもして来ようと思います。笑
もしかしたら、「やっぱ無理、行けない」と引き返すことになるかもしれないけれど…そしたら大人しく、スタバの新作でも飲んで帰って来ようと思います。
それでは、いってきます。


これがそのラザニア


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