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アン・リー監督『ウェデング・バンケット』ゲイとしての生き方、そして父親


<作品情報>

「推手」「恋人たちの食卓」とあわせて“父親3部作”といわれるアン・リー監督のヒューマン・ラブ・ストーリー。アメリカに帰化した台湾出身のウェイトンはビジネスでも成功を収め、ゲイの恋人サイモンと幸せに暮らしている。しかし彼がゲイだとは思いもよらぬ両親が台湾からやって来ることになった。ウェイトンは両親を安心させるために、グリーンカード目当ての中国人女性と偽装結婚することになるが……。主人公たちの奇妙な三角関係のなかに、中国の伝統的な考え方とゲイ、国籍問題、親子の絆などを見事に表現した斬新なタッチの人間ドラマ。

1993年製作/109分/台湾・アメリカ合作
原題:喜宴 The Wedding Banquet
配給:日本ヘラルド映画
劇場公開日:1993年12月11日

<作品評価>

75点(100点満点)
オススメ度 ★★★★☆

<短評>

上村
ゲイカップルと女性一人の話でテイストとしても『ハッシュ!』に近いものがありました。
母親はゲイを病気のように扱い、女にとって大切なのは夫と子供という価値観があります。それは間違っていると思いますが、彼女はそうやって生きてきたし、それを否定したら彼女の人生は何だったの?ってなるのは理解できます。
要するにそれぞれの幸せは違い、完全に分かり合うなんてことはできないのです。でも一歩ずつ歩み寄ることはできるのではないか。
絶妙なユーモアを織り交ぜながら紡ぐ優しくも厳しい作品でした。

吉原
自身のセクシャルティについて両親に伝えられず、偽装結婚をすることになった青年に降りかかる苦労をコミカルに描いた作品。
中華系映画にありがちな「家族のための結婚」と「クソ迷惑なお節介」を嫌というほど見せつけられる作品である上に、主人公がはっきりしないというイライラが序盤に付き纏うが、最後は案外綺麗に終わりました。
舞台はアメリカ、言語は英語と中国語の混合で、登場人物のほとんどは中華系というなんとも不思議な映画でもあります。
A24制作の「フェアウェル」は実話を題材にした映画ですが、多少なりとも本作の影響を受けているのではと思いました。

<おわりに>

 アカデミー賞でも二度の監督賞に輝くアン・リー監督作品です。偽装結婚の行方をコメディタッチで描いた名作です。誰でも楽しめる軽妙さとメッセージ性のバランスが丁度いい作品ではないでしょうか。

<私たちについて>

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