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チャン・イーモウ監督『紅いコーリャン』情熱的な紅が印象的な中国映画


<作品情報>

カメラマン出身チャン・イーモウの初監督作品。デビュー作でベルリン国際映画祭グランプリを獲得するという快挙を成し遂げる。1920年代、18歳のチアウルは、病に伏す年の離れた酒屋の主人の元へ嫁に出される。しかし程なく主人が行方不明になってしまう。チアウルがまとう花嫁衣装や夕陽に照り返る大地、コーリャン酒など紅を効果的に配した画面構成は、イーモウ作品ならでは。紅はエロティシズムや自由へのエネルギーの象徴として描かれている。

1987年製作/91分/中国
原題:紅高梁
配給:ユーロスペース
劇場公開日:1989年1月27日

https://eiga.com/movie/2842/

<作品評価>

65点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆

<短評>

上村
とにかく映像美。それに尽きます。徹頭徹尾、紅が印象的に使われますが、終盤は画面のほとんどが紅く染まります。抗日映画になっていくので日本人としては居心地の悪いところではありますが…
イーモウは最近の『SHADOW 影武者』『ワン・セカンド』、それから『HERO』しか観ていなくて、ここまでゴア描写がある映画を作る人だとは思っていませんでした。後半の日本軍の所業とか観ていてキツいものがあります。
その三作でも映像にこだわりがあるのは伝わりました。これが長編デビュー作とは到底思えない前面に出た作家性がすごいです。90分でここまでのインパクトを残すかと驚愕です。
物語としてはあまり入り込めなかったです。語り手の祖母はよかったけど、祖父は横恋慕、酔って乱入、拉致と最後まで好感を抱くのが難しい人物でした。中盤、酒造りの場に乱入して皆の前で九児を抱きかかえて去って行くのは??でした。
あと男たちが皆同じ坊主頭で服装も似てて見分けがつかなかったです。
コーリャン酒ってあんなに紅いのかーと思って調べたら、今あるものは無色透明で、紅いコーリャン酒というのは見つからなかったんですよね。本当にあるものなのか、それとも創作なんですかね。
物語としては納得できない、と言うか呑み込めない部分が多いものの、とにかく映像の力に圧倒されます。VHSで観たんですが、リマスター版を劇場で観たらよりすごいだろうなぁと思います。

吉原
本作は、チャン・イーモウ監督のデビュー作で、「ローグ・ワン」に出演していたチアン・ウェンや「さらば、わが愛 覇王別姫」を始めとする中華映画にとどまらずハリウッドでも活躍するコン・リーが出演しています。
ハンセン病患者が忌避された1920年代の中国が舞台の、とにかく映像を堪能する作品で、正直、物語はどういうことなのか、何を言いたいのかさっぱりわかりませんでした。
タイトルの通り「赤」が印象的に使われていて、「赤かそれ以外か」と言いたいほど、画面が赤い。色がタイトルに入った作品(「トリコロール三部作」など)はその色を基調とした映像になる傾向がありますが、本作はそれが顕著に出ています。
チャン・イーモウもデビュー作ということもあり、ハングリー精神から生まれたアイデアなのか、それを成功させているところが凄いです。とても新人監督の使う技とは思えません。
チャン・イーモウって個人的にはマット・デイモン主演の「グレートウォール」のイメージが強いから本当に幅広いジャンルに手を出せる監督なんだなと思いました。
とにかく映像美に尽きる作品なので、デジタルリマスターされたものがいつか劇場で観れたらなと思います。

<おわりに>

 今や中国を代表する監督であるチャン・イーモウ監督のデビュー作です。とにかく紅を前面に出した映像に引き込まれます。一方で日本人としては厳しい物語であるのも事実。難しい作品です。

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